避難所の歓談 4
昨日更新できなかった。その分です。
「おいこら。桐谷」
声を潜めてショートヘアの釣り目の美人が怒気のはらんだ声を向ける。白さを貴重とした清潔感を全面に押し出した部屋には穏やかな風がふいていた。首振りの扇風機はそよ風のところが光っている。
「篠田せんせ、いたんすか」
「いちゃ悪いか」
「まったく悪くないっす!」
そんな桐谷の言葉を聞きながら篠田先生は息を吐いた。
「で? なにしに来た」
「藤吉、具合どうかなと思って。あ、こいつ藤吉の友人っす」
保険医の篠田先生はそれを聞くとまじまじと私を見た。
「なんというか。ふつうだな」
ぼそりとこぼされた言葉にイラつきがうまれなかったわけではないがそれ以上に気になることがあったのだ。
「愛はどこか具合が悪いの?」
桐谷に向けていうと複雑そうな顔をした。
「藤吉は教室に行って吐いて、保健室にきている」
「吐いて? え? 風邪?」
保健室よりも家に帰ったほうがいいんじゃないだろうか?と考えながらいうとその言葉に桐谷も篠田先生も顔をゆがめた。
「まぁ、心の風邪ってやつだな」
ひそめた声で話しているとシャッと奥のカーテンの開く音がした。
「だれ?」
細い声は愛の声でその声とともに固まった桐谷を横目に近寄る。
「同学年の顔見知りのナツメサンですよー」
そういうとくすくすといった笑い声が聞こえる。
「夏目さんか」
ベッドから降りた愛のすらりとした生足。その少し着崩れた制服に男ならくらりと来るのだと思う。桐谷のほうにちらりと視線を泳がせれば、顔に両手をあててうずくまっていた。
「や。こないだぶり、愛」
「呼び捨てなの?」
「親しくなるには形から入るタイプだからね」
愛がベッドからおりて椅子に座るのをみて、篠田先生も椅子にすわる。視線で促されて私も座る。
「あ」
愛は桐谷を見つけては顔を硬直させる。
そわそわと手を動かすさまを見る。桐谷はそれに気が付いて気まずそうに視線をそらした。
「あー……俺、帰りますわ」
「お大事にな」
形だけ、篠田先生がいうと桐谷はとぼとぼと保健室から出る。
どうやら、桐谷は私をここに連れてきたかっただけのようだ、と分かる。かたりと音がしてみれば篠田先生が立ち上がっていた。
「桐谷くん、と、仲いいの?」
不安げな声におや?と思う。
「まぁ、仲は良いほうだと思うよ」
腐れ縁だし、と続けると細い声が返ってくる。
「そっか」
会話が続かなくて、どうしようかなと首をかしげると、なにか飲むか? と篠田先生が言う。
「あ、ありがとうございます」
コップをもって入れながらいう篠田先生にお礼をいいそっと視線を動かした。
この篠田という先生に対する記憶があまりない。短い、本当に短い期間だけ、前、保険医としていたのは覚えている。すらりとした手足はほどよく筋肉がついているのがわかった。
「愛、体調大丈夫?」
「お見舞いに来てくれたの?」
「そもそもさっき桐谷につれてこられて知ったんだけどね」
桐谷の名前をだすと顔を曇らせる。なにかあったのだろうかと予測はできるが、それが何なのかはわからない。
今日の夜に2度目の更新します。たぶん




