避難所の歓談 3
真くんの『お前も』がわからなくて頭を悩ませる。お前もはなんなのだろうか。お前も父に興味がない? お前も鈴ちゃんの婚約者に会いたい? それとも、お前も、時間が戻っている?
いくつか思い浮かぶ中で、もし、時間が戻っていることなのであれば、真くんはどうやって気がついたのだろう、と自分の不甲斐なさを感じる。そんなことで頭を悩ませているからか、週があけて始まった学校生活はどこか気まずさを伴っていた。
綱渡りをしているような空気がわたしたちの間に流れているような気がする。
たとえば、冗談をいって笑っても会話が続かない。昼休みの時間も微妙な空気が漂っていた。様子や顔色をを探り探り会話をする。簡単に壊れそうな空気には息がつまりそうだった。
「あのさ……」
「夏目!」
何かを言おうとした佐奈は桐谷の声に遮られる。あ、いいよ、行ってという言葉に甘える形になりながら桐谷のもとに行く。
「なんだい? 桐谷くんやい」
「お前、暇だろ? 放課後」
「忙しい」
「あぁん? 帰宅部のくせに忙しいとか」
「は?人様の時間についてとやかくいわないでくれる?この二重人格」
「俺は二重人格じゃなくて外面がいーいーの」
「うっわ」
話しながら移動する桐谷に連なって私も移動する。
「付き合ってんの? あの2人」
「えー? 釣り合わなくない?」
「っていうかそれなら、なんか志乃ちゃんむかつくわ」
「媚びうってんじゃない? ほら、テンションいつもと違うし」
「あー、だから最近志乃ちゃんたち気まずそうなの?」
「佐奈ちゃんたちもかわいそうだよねー」
「っていうか麻里ちゃんって桐谷君のこと好きじゃなかった?」
「え、それマジ?」
「だとしたらひどくない?」
ひそひそという教室からの声が聞こえてしまう。はぁ、と溜息をつくと前を歩いていた桐谷が振り返る。
「どうかしたか?」
「べつにー?」
くだらないことだと分かっていても、気持ちのいいものじゃないな、と思いながら桐谷と階段付近まで歩いていた。
「どこにいくの?」
「涼しいところ」
「窓あければ涼しくなるでしょ」
ふっふっふと悪巧みをしているように笑った後桐谷は自信ありげに笑った。
「もっといいところ」
「はぁ?」
そのまま桐谷と階段をおりて左に曲がり下駄箱の横を通り過ぎる。突き当りに書いてある文字を見てどこにつれてきたかったのかを悟る。
「なんで保健室なの」
「いや、なぁ?」
はははと明らかにごまかしている桐谷の腕をひく。
「何かあったの?」
「お前は、藤吉の友達、だろ?」
答えないでそういう桐谷にはぁと溜息をつく。
「桐谷の中の友達の定義はわからないけどね。顔見知りだっていってるじゃない」
「じゃあなんだ?これ以上かかわらないって?」
「誰もそんなこと言ってないけど」
そこまで言ってから桐谷を見る。
「え? 何? 今、愛保健室にいるの?」
「まぁ、そうだな」
そこまで言うと桐谷は詳細の話はせずにガラリとそこを開けてしつれいしまーすと声を上げた。




