避難所の歓談 2
「そういえば」
「うん?」
「こないだ大学の飲み会の帰りに親父さん、見かけたと思うんだけど」
予測のしなかったことで思わずぽかんとしてしまう。は、とその音が口から息をするように漏れた。真くんに聞こえていたのかどうなのかさえ分からないその音に反応してか、それともたまたまなのか、真くんは言葉を続ける。
「結構飲んでから気のせいかもしんねえけど。なんかすげぇやつれてるように見えて。まだ帰ってねぇの?」
真くんのその言葉に生きていたのかという安堵とそしてなんとも言いえない悶々とした気持ちがくすぶる。
「あの人は、もう何年も帰ってきてないよ」
ささやかな声で言うと真くんは目を開いた。
ぽかんと口をあけて目を見開き、絶句する真くんに、ためらいながらもそれどこ? と聞く。
教えてもらった場所は飲み屋街だった。すでにいないだろうな、と思いつつお礼だけ述べる。場所なんて聞いたところで、何をするわけでもないのにと自身にため息をつきたくなる。
「元気そうだった?」
「まぁやつれてるようには見えたけどな」
「そう」
「やっぱり志乃も気になるんだなぁ」
「まぁ、ね」
「親父さんに声かけてとけばよかったな。悪い」
「いいよ。それにたぶん声かけられてたら逃げてたんじゃないかな?」
「いや、流石に逃げないだろ」
「逃げない人はそもそも何年も家に帰らないとかしないからね」
「あれだろ? スランプってやつ」
「なにそれ」
「志乃の家のおばさんが言ってた。親父さんが出ていってるのはスランプだって」
そんなの、聞いた覚えがない。もやもやとした気持ちを抱えたまま反応ができないでいると真くんが確かめるように聞いてくる。
「探すのか?」
遠慮するように言葉を探しながらいうその姿に笑うと睨まれる。
「そんなこと、しない」
そういうと真くんが不思議なものを見るような目を向けた。真くんの家とは違うのだ。
「生きているのがわかったらそれでいいの。たぶんそのうち帰ってくるって」
「は?」
「お母さんが言ってる言葉だよ。あの人に関しては、母の意見を絶対優先するって決めてるの。お母さんが探したくなったら全力で探すけどね」
ぽかんとした真くんを置いて立ち上がって去ろうとすると、真くんの笑い声が聞こえて振り返る。
「志乃の全力ってこえぇ」
笑いながらいう真くんに眉をひそめる。
「お前、いつもどっか手抜いてるじゃん。そんな志乃が全力って言ったらこわいなと思って」
「そう? そんなことないよ」
それ以上何かを話すことなく背を向けて歩き出す。
「やっぱりお前もじゃん」
真くんの声が聞こえて振り返るけれど、真くんはとっくに背を向けていた。
ばれちゃった♡
って感じの話ですねー。
夏目一家がはびこる物語ですね^^




