避難所の歓談 1
「おーい」
休日に真くんの家の近くの公園に呼び出して手を振る真くんの姿をみつける。
「こっちこっち」
急ぐわけでもなく歩いていたら、わかっていないと思ったのか再度口を開いた。数名の子供と母親が遊んでいる声が聞こえる。ギィギィとなる少し古くなったブランコから子どもが飛び跳ねるように降りていた。それを見た母親が叱る光景が目に入る。思わず見入りながら歩いているうちに真くんの近くまで来ていたようで、おい、と袖をひかれた。
「久しぶりだな、志乃」
「1週間は久しぶりのうちに入るの?」
そういうと真くんが苦笑する。
「常套句ってやつだよ」
「はいはい」
真くんの座っているベンチの横に座る。
「あの子、怪我しなくてよかったね」
「まぁしたくなる気持ちはわかるけどな」
「そうなの?」
「覚えてないか? 志乃がよく飛んで降りてたの」
「全然覚えてないや」
「ブランコだけじゃなくてジャングルジムからも飛んで降りそうなもんだから目が離せなくてなぁ」
「それは、なんというか……すみませんでした」
「いいって」
叱られてシュンとしながら砂場に行っている子どもをみながらそんな他愛のない話をする。いつまでも本題に入りそうにないから私から口を開く。
「それで? 今日はどうしたの?」
「あぁ……」
「わざわざ呼び出してなにかと思ったよ」
「ん?いや」
真くんは口ごもる。
「ほら、志乃に、言ったじゃん。姉貴の話」
「うん」
「やっぱり気になって」
そう言って頭をかく。緊張をしているのか視線がさまよいつつかすれた声でつぶやくように真くんは言った。
「手伝って欲しい」
「……具体的にはなにを?」
恐らくかなり勇気をだして言ったと思う発言に残念なことに私は即座に頷くことは出来なかった。
「姉貴には幸せになって欲しい。だから、納得したい。相手が幸せにしてくれるんだって」
「つまり、相手のことが知りたいってこと?」
「うーん。まぁそうだな。本当は2人で話したいんだけど。俺殴りそうな自信があるから」
困ったようにいう言葉は物騒だ。
「シスコンめ」
「うっせ」
照れていう真くんにはぁーとため息をつく。
「だめ、か?」
「いいよ」
「え!?」
「言っとくけどね。鈴ちゃんに幸せになって欲しいのは私もなんだから。一緒に話すくらいなら、いいよ」
「ありがとう!」
にぃとうれしそうに笑う真くんに私も笑みが浮かんだ。
「でも2人で話せるの?」
大事なことを確認するように言うと真くんはためらいなく頷いた。
「あ、それは大丈夫」
そういって言葉を続ける。
「来週の土曜日に話すことになってるから」
「そっか。なら来週の土曜日も私は真くんに予定を埋められるのか」
「わるいって!」
そういうと真くんはにやりと笑った。
「あぁでも」
「なぁに?」
「志乃に彼氏とかいてデートとかなら無理しなくていいからな」
さわやかに笑う真くんの背中を無言で軽く叩く。ははは、いてぇよ。と言いながら笑う真くんが落ち着いてからその後に思い出した世間話をするように口を開いた。
更新できたー。




