心くばる人達 3
わざとらしく声をあげた桐谷はごほんと咳を1つして話を元に戻す。
「まぁ、ほら、藤吉は目立って嫌がらせとかを受けてたから。心配してたんだ」
「ふぅん? 嫌がらせ受けてるの知ってて何もしなかったんだ?」
「ばぁか。こういうのに男は関与したらよけいめんどくさくこじれるだろうが」
「まぁ確かにね」
「でも、何かしたかったんだ」
「そう」
もどかしそうにいう桐谷にとって愛がどういう存在なのかはわからない。でも、大切に思っているのだろうということは安易に想像がついた。
「気に入ってるんだ?」
「ばっか! そんなんじゃねぇよ!」
「そう?」
「そうそう! ほら、クラス委員だからな!」
「クラス委員ねぇ」
「なんだよ、その目は……」
「別になんも?」
桐谷のこういう様子を見たのは初めてで、思わずにやにやとしてしまう。
コロコロと表情を変える桐谷との会話の内容は漏れないように声を潜めている。
これはずいぶんと前からの癖だ。ファンが多い彼との会話1つでいろんなことを言われるのだ。
「夏目なら、信用おけるから。ありがとうっていいにきた」
「別にいらない。聞いてない? 顔見知りになっただけなのよ」
「それでも、だよ」
優しげに桐谷の目が細まる。
「仲良しなんてなってないし、友達でもない。ただの同学年の顔見知りってことをわすれないで」
「お前なぁ」
飽きれたようにいう桐谷に向かい合う。
「あのねぇ。桐谷。あんたからお礼を言われないといけないことは何一つしてないの。なんで愛のことであんたがお礼を言いに来るのかもわかんないし。クラス委員ってそこまでしないといけない? 親しくするかどうかはこれからのこと。ただ、昨日はふつうに話しただけ」
じっとみる桐谷の顔に変化はない。
「それに、信用おけるとか、うれしいけどね。桐谷がそれを判断するのは違うでしょ」
「まぁ、うん」
保護者かよ、とつぶやくとちげぇよと即答される。
「まぁさ。愛のことはなんとなくもう少し話してみたいなぁとか思ってるから」
そういうと桐谷はみるみるうちに笑みを浮かべる。
「恩に着る」
うれしそうに言う言葉に思わず私も笑みを浮かべる。
「素直にありがとうっていえよ」
「俺が? 夏目に? ねぇな」
「桐谷なんて雨の日に車にあわれに泥水ぶっかけられてから学校にくればいいのに」
「待て、それ地味につらいやつ」
「そんな呪いないかな」
「あったら困るわ!」
くるりと今度は窓に背を向けた桐谷を見て話は終わりかと納得する。
「じゃ、戻る」
「なぁ、夏目」
「うん?」
「お前になんかあったら俺が助けてやるよ」
神妙にいうもんだから思わず吹き出す。ありがとうは言わないくせに変に律儀だ。
「桐谷、そんなのは別にいいよ。私なんもしてないし。あぁ、どうしても何かしたくてしたくて仕方ないのなら、今度購買のミルクティ、甘さ控えめ」
そういうとにやりと桐谷は笑った。
「抹茶系のおやつもつけてやるよ」
「だったら紅茶はストレートがいい」
そういうと返事はせずにもう背を向けた桐谷は手を振った。
「あれ、かっこいいとおもってるのかねぇ?」
顔も向けずに後ろにいる人に手を振るその動作に首をかしげたが誰もそれにこたえてはくれなかった。
昨日も更新できなかった……。
書き始めた当初は毎日更新を目標にしていたのに。。。なかなか続かない。




