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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
22/114

無知なる景色 4

   

口からこぼれたのはポツリとした言葉だった。


「泣かなかったから」

「え?」


聞き返す愛の目は大きく開かれていて、本当に私の言葉を聴き逃したのだというのがわかる。


「最初はさ、お寺であった子だなぁくらいだったんだけど。泣かなかったじゃない?」



 きょとんとした愛の腕を引きながら歩き出す。日が沈んでいくのを感じながら少しでも動きながら話そうと思ったのだ。それを嫌がることなく愛は受け入れていつの間にか隣を自然と歩いていた。



「いろんなこといわれても、靴がああいう状態でも、気まずそうにはしていたけど。泣きそうにもなかったし、泣いてなかったから」


 私は少し歩くスピードをはやめて愛の前に歩み出ると振り返った。



「なんか、いいな、と思ったんだよね。意地なのかプライドなのか負けん気なのかわからないけど。それがいいなって思った。それで話してみたくなったんだよ。で、手を貸したくなったんだ」




 口に出すとそれがあたかも正解のように思えてそうだそうだと何度か頷いた。








「なにそれ」



 不機嫌そうな声が聞こえて横の愛をみる。



「理由になっていない?」

「むしろ不快になった」


 敬語を外した愛はその目を細めた。



「興味なんじゃない、結局」

「そうだよ」


 そう言って首をかしげる。何かを私はまた間違えたのだろうか。



「結局興味本位で近づいてきて」

「その興味で近づかれるってそんなにいやなこと?」



 愛の言葉を聞き終わってから話そうとおもっていたけれどもそれだと埒があかない、と思い直し口を開いた。




「人間なんて仲良くなるときの理由の大半が興味だと思うけど」

「いやなことよ!」



 愛は声を荒げた。


「興味本位で見た目しかみないくせに近づいて。ちょっとでも自分が思っていたのと違ったら離れていくじゃない!」

「じゃあ聞くけど。なんていわれると思ったの?」



 愛は途端に口をつぐむ。






「いじめられててかわいそうだったからとでも言ったほうがよかった?」

「そんな偽善いらない!」

「ほら。結局納得のいく理由なんてないじゃない」

「あるわよ!」

「たとえば? 何?」

「それは、その」


 尻すぼみになる言葉を聞きながら溜息をこぼして、あぁ、と口を開いた。



「もしかして。陰でなにかをしているのを人が見てくれてそれで仲良くしてくれるとか思ってた?」



 愛の顔色が変わる。性格を見てくれていた、と言われたかったのか、と納得する。

 おそらく、その見た目で言われることが多かったのだろう。見た目だけの”藤吉愛”が多すぎて、ほかの部分を見てほしかったのだと思う。





「あのね。悪いけど」


 愛はビクッと肩を震わせる。強い目つきも荒い口調ももしかしたらこの子の虚勢なのかもしれないと思うとなんだかとてもかわいく思えてきてしまった。




「性格なんてわかるわけがないでしょう。そんなに話してもないんだから。人なんて見た目とか持ち物とか何かしら興味があるものがあって話しかけてそこから仲良くなるもんだと私は思ってるけど?それとも、愛さんは性格がわかるまで話しかけないの?」

「そんなわけじゃ……」

「じゃあいいじゃない」



 どこか不服そうな愛に言葉をかぶせる。







なんとか今日も投稿できてよかった。

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