無知なる景色 3
「帰り道どっち?」
「あ。こっち」
「わたしもこっちなんだよね」
おろおろと両手をこすりながらいう愛は視線をせわしく動かしていた。
「えっと……あの……」
何かを話さなきゃいけないと思っているのだろう、と安易にわかった。固くなっていく表情がそれを物語っている。声はどんどん小さくなり口元だけが小さく動いていた。
「いつも歩き?」
「え!はい!」
「ふぅん。部活は?」
「してない……です」
「委員会とかも?」
「してないです」
思っていたよりも会話は続かず、一問一答のようになってしまっていることに苦笑してしまう。なんだか尋問みたいだなぁとおもいつつ、一生懸命に思案しながら答える様子をみる。わたしの質問が悪いのかと品を変えては聞くがジョジョに声量も小さなものになっていった。
「同い年だし、敬語じゃなくていいよ」
コツリとローファーが地面に接する音をたてて愛が足を止めた。うつむいた愛の影がアスファルトにうつる。
「どうしたの?」
「なんで、ですか」
「なにが?」
「なんで、よくしてくれるんですか?」
震える声に、あぁ、それが分からなくて不安だったのかと悟る。
「なんで、ねぇ」
理由を考えたところで、とくに浮かばない。口に出てきそうな理由は後付のようなものばかりでそれだときっと納得しないだろう様子になんと言おうと思案した。
「それ、理由、いる?」
「……できれば」
困ったように出てきた声に帰ってきた返答は強い言葉で、いるような視線に目をそらす。
こういう目もできるのか、と知りながら、なぜこういう目をあの女子たちに向けないのだろう、と安易に考える。
それはきっとわたしが彼女と同じ立場で物事がみえていないからだと思う。そんなわたしがいくら後付の理由をきれいごとのように並べたところで納得はしないだろう。
「うーん。なんでだろうなぁ。そうだなぁ」
困ったように口にすれば愛の目は怪しむように細くなる。かわいい子に睨まれると結構ダメージをくらうということを感じながら思ったことをそのまま口に出した。
ぎりぎり10日以内に投稿できた。




