影を追う 6
「すみませーん、今日開いてますか?」
「いらっしゃい、開いてるっすよ」
「開いてるって!」
部活帰りなのか何人かのおそろいのジャージをきた生徒たちが入ってくる。
秋山はお話は終わりっす、と小さな声で言った。
「あ、待って、待ってください」
「はい?」
「すみませんあの」
「なんすか?」
「最後にひとつだけ」
がやがやと話しながらもこちらの様子が気になるのかチラリチラリと視線を感じながら聞こえないくらいの声量で言う。
「追われているって言ってた、オーナさんを追っているその人達は、私が来たときにいた人も入っているんですか?」
ここに来たときにいたのは橋田先生だった。関係がないわけがないだろうと思い、せめて少しでも確信が欲しくて聞く。
「ネズミをオーナーだとしたら確かに今日いたあの人はネコの分類だと思うっすよ。ただ、オーナーはネズミなんて可愛いもんじゃねぇっす。まぁどうしてもオーナーをネズミだって言うならば、オーナーがネズミだとしたら、ネズミはネズミでもネコだって倒せる部類の、ネズミだと思うっすけどね」
だから心配はいらねぇっす。そう言った秋山にはお礼しか口からは出なかった。
がやがやと声のする店内の光景をどこかぼんやりと視界に入れて帰るために扉を開けた。
「夏目?」
店から出た瞬間に呼ばれた名前に振り向くと汗を袖で拭っている桐谷がいた。
「桐谷、何してるの?」
「ちょうど良かった」
「ちょうどいい? 夏休みなのに制服ってたいへんだね」
「あっちぃなぁ」
「補講?」
「いや」
「どうしたの?」
「よく、わかんなくてさ。正装とか」
「正装?」
「そ。正装。それで会いに行ってた」
「だれに?」
「藤吉」
愛の家に行っていたらしい桐谷は照れているのか少し目を逸らす。
「愛、元気だった?」
「元気だったよ」
「話せた?」
「まぁ、それなりに。それで実は帰りに夏目の家に寄ろうと思ってたんだよ」
「うちに?」
「話したいことがあってさ」
そういう桐谷のの言葉にそっか、とだけ返して家までの道のりを歩き出す。桐谷はその話したい内容を口にはしなかった。




