影を追う 5
「そもそもよくわかってないんすよねぇ」
「教えてもらったんですよね?」
早口に、そして詰問気味になるのを抑えながら言う。
「教えてもらってもよくわからなくて」
「わかっている範囲でもいいので」
「あの人は聞いてもあんまり教えてくれないんすよ。危ないからって。だから直接いろんなことを聞いたわけじゃなくって。ただ、会話の中であの人が言った言葉とかになるっすよ? いいんすか?」
「いいです。お願いします」
被せるように返すと秋山はあきらめの色を浮かべたため息を吐く。そして渋々というように口を開いた。
「聞いただけなんで真偽はわかんないっす。でもあの人は、おかしな売り物があるとか、神になろうとしているとか、とめなきゃいけないとか言ってたす。会話の中でポロっとこぼした程度の理由なんで詳細もどうしてそう思ったのかもわかんないっす」
ドッドッドッと心臓が動くのが聞こえた気がした。何か言わないといけない。どんな些細なことでも聞かないといけない。そう思えば思うほど口の中の水分が一気に蒸発したようにカサカサの声がでる。
「それって」
「ん?」
「オーナーさんは何かをとめようとしているってことですよね」
「そうっすねぇ」
「その何かがどんなものなのかとか」
「駄目っすよ」
掘り下げて少しでも聞こうとすると秋山は間髪いれずに否定をした。
「ナツメさん。オーナーの伝言聞いてたっすか?」
窘めるようにゆっくりという言葉を発する秋山はこちらを見て目をそらさない。
「……はい」
「何もするなって伝言はこれのことじゃないっすかね?」
確認のように言った言葉はまるで断言しているようだと思った。
「これ以上は話せないっす」
その秋山の言葉になんと口にしたらいいのかわからずに言葉を探す。そんな私をみながら秋山は明るい声を出した。
「オーナーもプライドがあるっすからねぇ」
プライド、と小さな声で呟くとそうっす、と秋山は盛大に頷いてみせた。
「プライドがあるんすよ。責任もある。だから多分どういう経緯か知らねぇっすけど、関わってしまったからには解決したいんすよ」
きっとね。
その言葉にぎりりと歯を噛み締めた。
「そのプライドは」
「ん?」
「そのプライドがオーナーさんを守ってくれるといいですね」
思わず強めの口調で嫌味をいうと秋山はカラカラと軽快に笑った。
「そうっすねぇ。じゃあちょっとだけヒントっす」
「ヒント?」
「オーナーがナツメさんにだけは絶対的に言うなって言ってたんすよ。この意味わかります?」
「わたしにだけ」
「言ったら多分自分と同じ選択をするからって」
そう言ってたんすよと言う秋山の声色はこちらの様子の変化を楽しんでいるものだ。
「ヒントって」
それだけですか? と言葉を続けるよりもはやく店の扉の開く音がした。思わず言葉を止めてそちらを見る。




