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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
追及編
110/114

影を追う 4

 メールの内容的になにかがあるのかとは思っていたがこんなふうに直接的なものだとは思っていなかった。

 少なくとも秋山は直接接しているのだと思えば、この周辺に拠点を持っていることがうかがえる。それなのにも関わらず、何をしているのかわからない。家にも帰ってこない。そんな変わるわけのない事実になぜか胸が軋んだ気がした。



「その、オーナーさんは、他になにか言ってませんでしたか」

「何も言ってなかったすよ」

「そう、ですか」


 返事をすると秋山は面白そうに笑った。


「やっぱり知ってる人だったすか?」

「多分」


 そうでしょう、そうでしょうと笑みを深めたまま秋山はご機嫌な声をあげていた。

 きっと秋山は最初から関係があるのをわかっていたのだろうと思うとそんな秋山が白々しく感じる。



「あの。その人が追われている理由を知りたいんですけど」

「えーなんで知りたいんすか」

「知っている人なら心配しますよね?」

「あの人は大丈夫っすよ」


 なんの根拠もないはずなのにそういいきる秋山に目を開く。私よりも随分と、多分、父であろう人を信用している。秋山は、私よりもよっぽど父と家族のようだ。


「知ってることなんでもいいんです。教えてください」

「そんなに知りたいんすか? むしろ、ナツメさんの方が詳しいんじゃないっすか」


 悪意はないのだろうその言葉は家族というくくりならばそうなのだと思う。でも生憎、父と会話をした記憶ははるか昔で私はたぶん父のことを秋山以上に知らない。


「多分、私のしっているその人とオーナーさんは同一人物かもしれないんですけど。私は外でのその人、オーナーさんを知らないので」

「あぁ! そうっすね」

「だから、教えてください。知りたいし会いたいんですよ」

「会うのはだめっす」


 危ないからと秋山は続けた。その続きの言葉を聞くよりもはやく、なら、と言い募る。


「なら、どうして、追われているのか理由を知りませんか? それがわからないのならなんでもいいので教えてくれませんか?」

「んー、そのくらいなら」

「ありがとうございます!」

「なにから言えばいいんすかねぇ。追われている理由は詳しく教えてくれないんすよ。でも、逃げ続けないといけないとか、そんなことを言ってたっす」


 逃げ続けないといけない、という言葉に思わずそれって、と言葉をこぼす。


「ん?」

「あ、いえ。逃げ続けないといけないって、それって誰から、なのかなって」

「それを教えてくれないんすよ。追われている理由も要領得ないというか」

「理由を知っているんですか」

「一応、聞いたは聞いたんすけどねぇ」


 そう言って秋山は口籠る。


「どうして、ですか」

「んー、なんて言えばいいんすかねぇ……」




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