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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
追及編
101/114

対面する疑惑 4

 「まぁ。お前が同じでよかったとおもっているよ」


 桐谷はコーヒーを傾けてそういう。少しなげやりなその言葉にくしゃりと髪を掻いた。どう聞いても嘘のようにしか聞こえない。


 「うそつき」

 「いや、本当に。そう思っている」


 怪しげに桐谷を見ながらパフェを食べ終わる。手を合わせてごちそう様とつぶやいたのを見た桐谷がふっと笑う。


 「なに?」

 「いや、そういうところは変わんないなと思って」

 「むしろこういうところ変わっていたらどうなっていることか」

 「それはもう志乃じゃねぇな」

 カラカラと笑った桐谷にでしょう?というとそうだなと頷いた。

 

 「志乃は高校の時のことはどこまで覚えている?」

 「どこまでって?」

 「やっぱりちゃんと覚えていないのか」

 「失礼ね。覚えているよ」

 「いや、そうじゃなくて。前の高校の時の志乃は、あんまり親しい友人以外に目を向けていなかったから知らないかもなと思って」

 「否定できないけど。それが?」


 桐谷の言葉は実際にその通り過ぎて否定をできなかった。でもおそらく桐谷が言いたいのはそういうことではないのだと思って先を促した。促されるままに少し考えるようにうーんとうなった桐谷がまぁ、終わったことだからいいかと口にする。

 

 「終わったこと?なんの話?」

 「志乃が、おそらく未来を変えた話」


 その言葉にはどういった感情が乗っていたのか。桐谷の顔は複雑そうにゆがめられていて少なくとも素直に喜べるだけの話じゃないのだと分かった。


 「どういうこと?」

 「覚えているかな。前の時。俺らの学校から、一人生徒が死んだの」


 桐谷の言葉にゆっくりと頷いた。


 「なんとなく。生徒が誰とかはわからないけれど夏休み最初の自殺だったってやつでしょ?」

 「そう。それ」


 桐谷はそれは藤吉だったんだよ。と小さくつぶやいた。思わず息をのむ。ひゅと変な呼吸音になってしまった。


 「それは、愛が自殺してたってこと?」

 「そういうことだな」

 

 たんたんと口にした桐谷は流れる水のように言葉を発した。


 「場所は海だったんだ。たぶん、俺と志乃がおいかけたときがそれだったんだろう。当時、わざとそうしたのか。事故だったのかはわからない。でも当時、彼女は死んだ。言いたいことはわかるか?」

 「そう、だから未来が変えた、なのね」

 「それだけじゃない。死んだはずの人間が生きているのだ。命の対価は別の命ってことにならないとも限らない。この変えた現象についてどうなるのかがわからないんだ」

 「じゃあ、何もしないほうがよかったの?」

 「いや、俺も」

 

 桐谷はそういうと震える声で小さくつぶやいた。


 「俺も、藤吉を助けたかったよ」


 それから先の桐谷の言葉を私はしっかり覚えていない。たぶん愛のことを話していたのだと思うのだけども、あまりに集中できない私に早めに切り上げてくれたのだ。





 なぜ、私が愛を覚えていなかったのか。それはそのはずだ。別のクラスの人まで把握できない。3年間の学校生活で関わりがなかったはずである。

 愛は1年の1学期しかきていない。

 自殺とか、命を失うとかをどこか遠いものと考えていたのだと思う。亡くなった人の名前すら覚えていなかった自分に反吐がでそうだった。どこか自分とは違う遠い場所の話と思っていたのだろうと分かった。

 家に帰って布団に顔をうずめて、行き場のないもやもやとした気持ちを吐き出すようにこもったように布団に向けて声を出した。



■桐谷

何かを隠している。志乃よりもはっきり覚えていることが多いらしい

■愛

前の時に自殺をしていたらしい。

■志乃

もやもやを布団にぶつける。


これサブタイトルみすったなぁと今更思う。



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