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悪役令嬢と悪役令息、地獄行きのディストピア  作者: 猫塚ルイ


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15/50

第15話

鈍い音とともにアルベルトの身体が痙攣し、糸の切れた操り人形のように力なく崩れ落ちる。


私は素早く彼を支え、床に転がっていた古いブランケットを広げると、そこにゆっくりと横たえた。


彼の荒い息遣いが、静寂の中で徐々に落ち着いていく。


それにつれ、私の掌にも冷たい汗が滲んでくるのを感じた。


「……エカ、テリーナ……? 私は……一体」


「ふう……正気に戻ったようね」


(今のショック療法で少しはマシになったみたいだけど……)


私はテープデッキの方へ向き直った。


映像の中で交わされていた言葉の断片が、呪詛のように頭蓋骨の内側でこだまする。


『名もなきゴミが……』『ただの機能として……』『完璧に改造された……』


どれも吐き気を催すような醜悪な言葉ばかりだ。


自分たちが神にでもなったかのような、あの高慢な物言い。


(アルベルトのこんな姿、初めて見た……)


私は立ち上がり、近くに転がっていた椅子に腰掛けた。


深呼吸をして冷静を取り戻しながら、意識の戻ったアルベルトに静かに語りかける。


「アルベルト……今日はここまでにしましょう。それと少し、話がしたいわ」



◆◇◆◇


数時間後──


いつものバーで、私たちはカウンターではなく隅のボックス席に身を沈めていた。


私が注文したのは、蜂蜜酒をベースにした、甘く、それでいて喉を焼くような強いカクテル。


アルベルトはいつものアイラモルト・シングルモルトをロックで飲んでいる。


大きな氷が溶け出し、琥珀色の液体はすでに薄くなっていた。


「……話とは、先程のテープのことですね」


彼はグラスを回すでもなく、ただ静かに一口含んだ。


氷の粒がカランと沈み、琥珀が微かに揺れる。


その指先は、今はもう震えていなかったが、どこか現実味を欠いているように見えた。


「ええ。それもあるけど……それを話す前に、ひとつ聞きたいことがあるの」


「なんでしょう?」


「この間掃除した、あなたの両親2名。始末するに至った理由を、改めて知りたいの」


私は敢えて、彼が隠していた核心に触れた。


彼は一瞬だけ動きを止め、それから再びグラスに口をつけた。


「……特に深い意味はありません。あの人たちは、既に私にとって不要でした」


「嘘よ。必要かどうかで人を殺すのなら、もっと早い段階でやっていたでしょ。あんなに事務的に、冷徹に『掃除』をしたのは、そこに強烈な理由があったからじゃないの?」


アルベルトは小さくため息をつく。


硝煙の匂いのする風のように、冷たく、どこまでも乾いた息だった。


「……正確に言えば、彼らが親ではなく“実施者”だったということが本能的に分かってしまったのです」


「どういうこと?」


「……さきほどテープで言われていたことを覚えていますか」


「ええ……『ただの「機能」として生きる。お前が創り上げたその怪物は、我が娘エカテリーナの毒とどちらが鋭いかな』って言ってた父の発言も気になるところだけど……」

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