まさかの…?!
仲直りの解決法を試しに、ミトラたち一行は
どデカい学校の前に来ていた
まさに異世界の学校と言えばこう!を体現したような学校だ
洋風な城を想起させる白い煉瓦と翡翠色の屋根が優雅さや荘厳さを醸し出している
「んで、ここはどこなんですか?もしかして…解決策に関係あるとか?」
カルアが真っ先に説明を求めるような声色で尋ねた
「そう、ここはさっき言ってた従者の通っている学校」
「ここって…ユニアデスだよ!?超名門じゃんか!そんな“かしこ“だったの!?アンタの従者!」
何を隠そうユニアデス大学院は『魔術』の類の名門である
2980年の歴史を持ち黒魔術、白魔術、精霊魔術、召喚魔術等の
167にもわたるキャンパスで生徒は自由に学び、研究することができ、
現にここの卒業生は勇者パーティや、王家騎士団に引っ張り凧となるほどだ
『ラベラルの一握、ユニアデスの一唱』と並べられる
因みに、カルア・ビリムはここで挙げたラベラル専攻院の卒業生だ
「ユニアデス…か」
「そうだ、ここで我の従者であるプルノア・デスタールは…なんというか、その」
バルバスは妙に口籠もり始めた
神妙な面持ちで3人は耳を傾ける
「プルノアのやつめ…どうやら、学校で良き殿方となるだろうお方を見つけたらしくて」
3人は は? と声が聞こえそうな口をあんぐりと開ける
「しかし…その男はなかなか興味を示さないらしい」
「……つまりなんと?そいつらをくっつけろと?」
「ああ、お願い」
呆れて声も出ないミトラやサリアと違い
カルアは声高らかに青筋を立てながら告げた
「冗談じゃねーーーーーよ!他人の色恋沙汰に足突っ込むほど暇じゃ無いんすよ俺らは!
それ位アンタが自分でやれ!一人でやれ!上司なんだろがよ!」
「そうよ!他の解決策はないわけ?!」
激昂する2人を宥めるようにミトラが困り顔で喋りかけた
「屹度…バルバスさんじゃ駄目な理由があるんだよ、そうでしょ?バルバスさん!」
「確かに、我がやれば…成程…その手もあるか」
ミトラはここまで心底人をぶん殴りたいと思った事はない
固く締めた握り拳が小刻みに震えていた
「バールバースさーん!お呼びか〜?」
突如学校の荘厳な門扉を跨いだ向こう側から無気力な声が響いた
「紹介する、この子が話にあったプルノア・デスタール」
「よろ〜」
第一印象としてはふわふわした少女だ
身長は盛りに盛った淡い薄桃色の髪の束を抜けばミトラよりも小さいか、と言う具合である
メルヘンチックな服装には似合わない様々な装飾を成された金属製の髪飾りを額から垂らしている
可愛らしいマカロンのような空色のドレスから伸びた腕は彼女自身の欠伸を隠す為の部品のようだ
「バルバスさんや、呼んだかえ?」
(なんだか…穏やかそうな人だな)
3人は顔を見合わせヒソヒソ声で語り合う
それを横目にバルバスはプルノアと言う少女にも3人を紹介する
「呼んだ。プルノア、こいつらがキャサリンを殺した3人」
「濃度魔法 最終章」
バルバスが軽い紹介をし終わったコンマ1秒、即座に空気感が変わった
膨大な風が彼女の持っている似合わない杖に巻き付いている様に感じる
極限まで圧縮された風は最早『風』とは呼べない『雰囲気』を有していた
「死ね」
「有向魔法 第1節」
放たれた弾丸のような『雰囲気』はバルバスの言葉で不自然に屈折して地面に溶けていった
「待て待て待て待て!」
「その件は謝るからさ!ね?」
「お詫びに何かできる事はないかな〜って考えたんだ」
3人は頑張ってプルノアを説得して落ち着かせる
「許せる訳ない!だって…だってキャサリンがあ!」
あのゴブリンの本名が妙につっかかる気がするがここは突っ込まない方が得策だろう
額に青筋を立て、猫のように威嚇するプルノアにバルバスは囁く
「お詫び、何が欲しいって、ほら。別に頼み事でもいい」
更にバルバスがプルノアに促した
「えーと、ヨルダス…だっけ?そいつの事も協力すると」
その名を聞いた途端今までの勢いがなくなったかのようにプルノアは赤面し恥ずかしがる素振りを見せた
何故か彼女に反比例するかのようにサリアの顔が青ざめていったのをミトラは見逃さなかった
「ちょ…その話は…やめてくんろ〜」
(くんろ〜…)
ミトラは脳内で復唱したのち
ヨルダスと呼ぶ男とはどう言う関係なのかと問うた
「え!?いや…関係!?そんな…関係なんて…たまたま白魔術の講義で一緒になったんだけんど…だんだんと話してる間に友達として面白いな〜って思って揶揄い始めたのよ〜、そしたらさ!ある日実技で白魔術の練習してたらさー…暴発しちゃってぇ…それをヨルダスが助けてくれてさ…お姫様抱っこでキャーー!♡//よくよく顔も近くで見たらめっちゃイケメンだし、髪の毛からいい匂いするし!それでねそれでね!優しくおろしてくれた後大丈夫だった?って優しく微笑んでくれたんよ!べべべべ、別にぃ?惚れてる訳じゃないけど〜?その後も授業中とか色々細部まで見てときめいたりとかしてなけどぉ?ヨルダスの大好物が綿飴でギャップ萌えとか別にしてないけど〜?いつもちょけてる癖にいざとなったらかっこいいからとか全然ないんだけど〜?ずっと一緒にいたいとかと思ってないんだけど?でもさ…一緒にいるとなんか楽しいし表情の変化も」
ミトラの瞳は虚無を見ていた
途中から話も聞いていなかったので
目を開けたまま何も感じない夢を見ているような気分であった
例えるならば睡魔が襲ってきた午後の授業とでも言おうか
意味の成さない日本語を羅列されて耳に流し込まれていく感覚
ミトラ、その一行はまさしくそれであった
「取り敢えず…彼女とヨルダスを引っ付ければオッケーな訳ですね?」
プルノアの語りの背後にカルアはバルバスに尋ねた
「ああ、お願い
今は丁度昼休み、ヨルダスも今は学食で食事を摂っているだろう」
「あ…そうか、もうお昼か」
サリアは目で天を仰ぎ呟く
「それで〜…学食はどこにあるんですか?」
ミトラも続けて問いかける
「ああ、えっと確か…この道を東に真っ直ぐだった」
「東に真っ直ぐ…」
3人がバルバスの指差す方角を見つめる
その先にあったのは森であった
立体の深い影が成した森だけであった
「学食…?森しかないんですけど?」
「うん、だからその先だって」
カルアはどうやら嫌な気配を感じとったらしい
「もしかして…ここ通らないといけない感じすか?」
こくりとバルバスは頷いた
「ふざっけんなよぉぉぉぉおお!一体何時間かかるんだ!!?抜けるのに!」
「飛んだら1,2時間で着いた」
「飛ぶなよ」
カルアはジト目で睨め付ける
「しゃあない…おーい!お二人さん!野営の準備はオッケーか?」
カルアがミトラ達に声をかける為に後ろを振り向いた
その声には何処か気怠さを感じる
しかし、そんな気怠さも一瞬で吹き飛んだ
「い…いない?!」
そう、さっきまで勝手に喋っていたプルノアはおろか
ミトラやサリアまでいなくなっていたのだ
「は!?あいつらどこ行っ…」
カルアが辺りを見渡すと
空に浮かんだ3人が彼の方を見つめていた
柄の先端が尖った箒に跨ったサリアがドヤ顔で微笑む
「はあああ?!な…お前ら、飛ん…っ?!ええ!?」
動揺を隠せないカルアを横目にミトラ達は告げる
「だって…私は足に鱗粉纏ったら空気を弾けるから、それで飛べるし」
「ウチの刺突魔法は“飛んで”刺さるから、それで」
「アタシも大気中の気体の濃度を色々変えて飛べるから」
あまりの魔法の応用技術の高さにカルアが驚愕していると
「…だそうだ、3人には先に行っててもらう」
バルバスが残酷にそう言った
「ん〜…まあそーゆー事だから一人で頑張って〜!」
カルアが声を上げる暇もない程
3人が飛び上がるのには時間が掛からなかった
彼は絶句したのち、ふと先刻プルノアの魔法が直撃した地面を眺める
「なあバルバスさんよ、プルノア…だっけか?あいつ俺らに向かって魔法放ってたよな?あれってどんな魔法なんだ?」
「プルノアの魔法、濃度魔法は指定した事象内の濃度を自由に変えることができる」
“濃度魔法“という名称である程度察しはついたが、改めて聞くととんでも無いチート魔法である
「そして、濃度魔法の最終章は対象の濃度を限りなく高めるか、限りなく低下させるの2種類」
カルアが成程と聞いている
勿論、本気には捉えていない
魔法は誰でも使えるとはいえ、仲間の魔法をこと細かく説明し、挙句聞いていない情報すらも説明する
カルアの本気度は五分五分と言ったところだ
「因みに、さっきの貴様らへの攻撃は“鉄分を限りなく高める“だろうな
プルノアの放った魔法の着地点の地質がおかしい」
カルアはゾッとした
それもその筈
事実、日常であまり蓄積することのない『鉄』を過度に摂取する(鉄過剰症:ヘモクロマトーシス)と、体内の様々な組織や臓器に鉄分が沈着し、
癌の発症、心不全や肝炎、不整脈、糖尿病、性機能不全(ED)等を引き起こす可能性があるのだ
そんな“鉄分”の濃度を極限まで高められたら……背筋が凍りつく
「た…助けてくれて、有難う御座いましたぁ…」
「お礼なら行動で示して」
バルバスの一声でカルアは一人寂しく森へと歩を進めた
何故か彼の表情には恐怖心というものを感じれなかったという
何分経っただろう
ミトラ達一行が食堂にたどり着いた
「じゃあ…中から探す?」
「うん、プルノアぁちゃんとこの人!って教えてね」
「おっす!まかしぇんしゃい!」
軽く受け答えをしたのち食堂へと向かって3人は歩み出した
食堂の扉の取手を掴もうと手を差し伸べる
ギィ…
なんと扉が一人でに開いたのだ
……いや違う、
中で誰かが先に扉を開いたのだ
「あ、すんませぇ〜…おやや?サリア?何故ここに?」
その声を聞いた途端プルノアは赤面した顔を両手で隠した
何という偶然だ
奇跡としか言いようがない
1発目でビンゴ!目当ての人と邂逅するとは…
おそらくプルノアが恋焦がれる青年、ヨルダスはこいつだろう
中から顔を出したのは
彼女と同じ装飾がなされた金属製の髪飾りをつけた男性であった
見かけ20歳だろうか
彼は橙色のストレートに澄み切ったような美しい灰色の瞳をしていた
どこかで見たような様相である
丁度、サリアのように……
「え?サリア?」
顔を赤らめているプルノアと違い
サリアは顔を顰めて溜息を吐いた
「君たちは…あ!サリアの友人さんか!」
「あの…サリアを知ってるんですか?貴方は一体どちら様で?」
青年は「これは失敬!」というような笑みで語り始めた
「俺っちは白魔術専攻、ヨルダス・パトール!以後お見知り置きを」
パトール…?確かサリアと同じ性だ
つまり…
「うん、そうだよ…ウチの兄ちゃん」
サリアは溜息混じりに呟いた
世の中は狭いものだなと感心したミトラフックであった
お⭐︎ま⭐︎け:使用魔法一覧
ミトラフック・ボルタス…鱗粉魔法
第1節…どんな事象でも一つだけ弾き飛ばせる鱗粉を出す
第2節…何を弾くか具体的に決めることができる
サリア・パトール…刺突魔法
第1節…尖っている物ならなんでも自動で追尾して対象に突き刺さる
第2節…「どうやって刺さるか」など命令できる
第3節…自身を的に周囲にある尖っているものを刺さらせる
バルバス=ラ・バルーヌス…有向魔法
第1節…対象のベクトルを『変える』ことができる
第2節…概念のベクトルを『変える』ことができる
第3節…既存のベクトルより小さなベクトルを『発生』させる
プルノア・デスタール…濃度魔法
第1節…対象の濃度を一つランダムで変更する
第2節…対象の濃度を2つランダムで変更する
最終章…対象の濃度を最大or最小にする




