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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード73:ぶっつけ本番の翼

ついに魔族軍の包囲網が完成し、絶体絶命の窮地に立たされる一行。

ナバールが手にした新たな「牙と爪」、そしてアルテオとエイルが託す未完成の「翼」。


「姉さん! 魔族の軍勢がこっちへ向かってるっす!」


工房に響き渡った、悲鳴に近い一報。

エイルが顔を険しくさせる。


俺たちはすぐさま、魔導船が格納されている町外れのドックへと向かった。

走りながら事情を聴くが、状況は最悪だ。

ガーラ帝国の先行部隊が、すでにこの区画を包囲し始めている。


ドックに到着すると、アルテオたちが慌ただしく機体の最終チェックを行っていた。


「ナバール、剣の仕上がりはどうだい?」

俺の腰に差された新たな相棒を見て、アルテオが短く問う。


「ああ。エイルが最高の仕事をしてくれたよ」


俺がそう答えた瞬間、背後の扉が吹き飛んだ。魔族の先遣隊だ。


「ナバール、危ないっ!」


エイルの叫びと同時に、俺は無意識に右手を伸ばした。

光の粒子が収束し、白銀の長剣が掌に現れる。


一閃。


踏み込んできた魔族の鎧ごと、その肉体を一気に両断した。


「……すごいな。羽毛を斬るよりも手応えがない」

「感傷に浸ってる暇はないよ!」


アルテオがモニターから目を離さずに告げる。


「魔族の狙いは僕たちはもちろん、手を貸したエイルや職人たち、そしてこの船そのものだ。包囲が完成する前に、ここを脱出する。……作戦を伝えるね」


アルテオの指示は明快だった。

アルテオとエイル、そして職人たちは魔導船で空へ。

俺、オーウェン、クロードは『グラン・タウロス』で陸路を行き、エルフの国エイシェンツリーを目指す。


「ナバール、おそらく魔族は先回りしている。機動力のある部隊に気をつけてね」

エイルが心配そうに俺の手を握る。


「わかった。任せろ」


俺がタウロスへ向かうべく駆けだした時、アルテオが不敵に笑ってウィンクした。

「ナバール、僕が図面を引き直した『母艦』の性能、楽しみにしててよ」


俺たちは二手に分かれた。

俺はオーウェンとクロードと共に、重装甲車『グラン・タウロス』へと飛び込む。



ドックに残った魔導船側――。


「発進させるって、こいつ、本当に動くのかい!?」

エイルが驚愕の声を上げる。

タウロスのハッチを閉める直前、クロードが冷静に補足した。


「魔導石の積み込みと始動までは確認済みです。ですが……飛行実験は、今この瞬間がぶっつけ本番です」


「けどやるしかないな……。全員乗ったか!」

エイルの怒声に近い確認が飛ぶ。


「姉さん、乗船完了っす!」

「行くよ。浮上!」


アルテオの叫びと共に、魔導船の巨大なプロペラが回転を始めた。


重厚なエンジン音が、巨大なドックに鳴り響く。

天窓が開放され、ついにその全貌が露わになった。

海原を駆ける高速船のような、鋭くも美しい流線型の巨体。


猛烈な風が巻き起こる中、ドックの壁を破壊して魔族の増援が雪崩れ込んできた。


「アルテオ! 出力が足りない! このままじゃ浮かないぞ!」

「分かってる、最大出力まで上げていくよ……上がれ、僕たちの翼ッ!」


船体が激しく震え、ゆっくりと浮上を開始する。

だが、右舷のプロペラ軸から嫌な異音が響き始めた。

さらに、壁を壊して侵入した魔族たちが、離陸寸前の船底に強引にへばりついてくる。


「くそっ、軸が持たないっす……! ここまで頑張ってきたのに!」


焦る職人の声を、アルテオの鋭い声が遮った。


「ここまで浮けば十分だ! あとは力技で振り切る! 魔力噴射準備! 総員、衝撃に備えろ!」


カウントダウンが刻まれる。


「三、二、一……GO――!!」


左右二基の噴射口から、青白い炎が爆発的に吹き出した。

魔導船はドックの出口を体当たりで粉砕しながら、空へと突き抜ける。

張り付いていた魔族たちが、凄まじい風圧と加速に耐えきれず、ゴミのように振り落とされていった。


「飛んだ……! 飛んだぞ、俺たちの船が!」

船内に歓喜の声が上がる。


しかし、船体は斜めに傾いたままで、高度も思うように上がらない。

火花を散らす機体の中で、エイルの鋭い一喝が飛んだ。


「総員、浮かれるな! ほんの些細な異変でも報告しな! どんどん修理しながら行くよ!」


その声には、かつて飛行実験で両親を亡くした彼女ならではの、切実な緊張感が籠もっていた。


(……二度と、落とさせやしない。この翼だけは!)


エイルの決意が、職人たちの背筋を正す。


危うい角度で空を切り裂きながら、魔導船は地上を爆走する『グラン・タウロス』を追いかけて、地平線の彼方へと突き進んでいった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ようやく空へと舞い上がった魔導船ですが、その飛行は前途多難。

エイルの「二度と落とさせない」という強い覚悟が、物語をさらに熱くしてくれました。


一方で、陸路を行くナバールたちにも魔族の追手が迫ります。

アルテオが仕掛けた「母艦」の真価が発揮される日は来るのか……。


次話、激化する脱出戦もぜひお楽しみに!


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