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『リセッター 〜目覚めたら百年後だった男〜』  作者: 蔭翁


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第47話 観察者との接触

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第47話 観察者との接触


 夜の街は静かだった。

 未来都市の中心部から外れた裏路地。整然とした大通りとは違い、ここには監視の目も薄い。

 直樹は紙片に残った筆跡を握りしめ、胸の奥でざわめく思考を整理しようとしていた。


 その時だった。


 「……君だな。時間の外に立っている男は」


 背後から声がした。

 振り返ると、そこには見知らぬ人物が立っていた。

 年齢も、性別さえも判別できない。

 顔は淡い光に覆われ、どこか“人ならざる存在”を思わせた。


 直樹の背筋に冷たいものが走る。

 「……誰だ、お前は」


 「私たちは《観察者》と呼ばれている」


 その言葉に、カノンが息を呑んだ。

 彼女もまた、観察者の一端であることを知っている。

 だが今、目の前に現れた存在は、彼女の知る“同僚”とは明らかに違っていた。


 「君は異物だ、直樹。

 本来なら、この世界に痕跡を残すことはあり得ない。

 それなのに、君は兆しを見せ始めた」


 「……俺のリセットが壊れ始めているのか?」


 観察者は答えなかった。

 ただ静かに一歩近づき、淡い光に包まれた指を伸ばす。


 「君は、時間の外にいる。

 人間としての尺度でも、記録の尺度でも測れない。

 君自身が“観測不能の存在”なのだ」


 直樹は息を詰めた。

 ――時間の外。

 その言葉は、彼が抱き続けてきた孤独と矛盾に奇妙な説得力をもたらした。


 カノンが一歩前に出る。

 「……直樹さんはただの人間です。彼を“異物”と呼ばないで」


 観察者は視線を向けた。

 「彼が人間であるかどうか……それを決めるのは、君ではない」


 次の瞬間、観察者の姿は闇に溶けるように消えた。

 残されたのは冷たい夜風と、直樹の鼓動だけだった。


 直樹は拳を握りしめる。

 「……俺は、時間の外にいる……?」


 その言葉の意味を理解するには、まだあまりにも遠かった。

 だが確かに、彼の物語は新たな段階に踏み出そうとしていた。



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 この第47話では、ついに「観察者」との直接的な接触を描きました。

直樹が“時間の外の存在”であることが示唆され、次なる謎が広がっていきます。


次回は 第48話「未来の禁書」。

カノンが直樹に未来社会の禁じられた記録を見せ、そこに「リセッター」の名が記されていることが明らかになります。



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