表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『リセッター 〜目覚めたら百年後だった男〜』  作者: 蔭翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/104

第40話「第2部・終幕『記録と存在』」


第40話「第2部・終幕『記録と存在』」


荒野を切り裂くように、監視機の無機質な羽音が迫っていた。

未来都市から放たれた鉄の目は、記録の外に生きる者たちを許さない。


直樹は息を切らしながら走り続けた。

背後でカノンの手を強く握りしめ、ただ前へと進む。

だが、どこまで行っても逃げ場はなく、空からの追跡は容赦なかった。


「直樹さん……!」

カノンの声が震える。

観察者としての彼女は知っていた。

“公式記録”から外れた者が捕捉されれば、その存在自体が消されることを――。


「……いいんだ、カノン」

直樹は足を止め、振り返った。

迫りくる監視機を真正面から見据える。


「記録されなければ存在しない?

そんなものに縛られて生きるくらいなら……俺は、俺として生きる」


胸ポケットから“記憶ノート”を取り出し、空に掲げる。

幾度となくリセットの中で書き綴ってきた、唯一自分自身を証明する手段。


「ここに書いたことは消えない。

俺が俺であった証拠は、もう十分にある。

だから――記録なんていらない!」


その瞬間、監視機の光が直樹を照らした。

都市の記録網と接続するための捕捉光。

だが、次の瞬間。


ノートのページが風にめくられ、そこに浮かび上がった直樹の筆跡が、異様な光を帯び始めた。

彼の手書きの記録は、都市のデータでは読み取れない“異物”だった。

それは、機械の網を逆に混乱させ、監視機の動きを狂わせる。


「……直樹さん、それは……」

「ただのノートだ。けど……俺が生きてきた証拠だ」


監視機は制御を失い、墜落していった。

荒野に静寂が戻る。


直樹は深く息をつき、空を見上げた。

そこにはもう、都市の幻影も、監視の網もなかった。

ただ果てしない空が広がり、自分が“今”ここにいることだけが確かだった。


「存在は、記録されるためにあるんじゃない。

ただ……生きているだけで、十分なんだ」


カノンはその言葉に涙をにじませ、静かにうなずいた。

観察者としての役割を超えて、彼女自身もまた“存在する”ことを選んだのだ。


こうして直樹は、リセッターとしての宿命を越え、

“記録と存在”という問いに自らの答えを見出した。


――未来は、記録されるためではなく、生きるためにある。


荒野の風が、二人を包み込むように吹き抜けた。



---


第2部「記録なき旅路」 ― 完 ―


次から 第3部 へと進みます。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ