8話 面倒事が起こる選択肢
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もう面倒事に巻き込まれるのは運命か何かだな。
あの後松本と一緒に教室に何事もなかった。遅れると思っていた時間はギリギリだったが間に合った、疲れてた訳では無いがホームルームでの先生の話なんて聞かず、机に何時もの様に俺は突っ伏す。
昼までに今回の事にどうするべきか考える事にして寝る事にした。
面倒事は嫌いだ
昔からずっと口癖でどんな場面でもそっちを優先に生きてきた。
自分が何故こんな事になるまで問題に頭を突っ込んだのか、分かっている。別にしなくてもいい事を約束し、自分が実行しようと考えたからだ。
その場の勢いかもしれない。
だけど何時も首を突っ込むのは自分からで、それを面倒くさいと分かっていながらもやってる。
こんな事をしたのは2度目だ。
ただ不思議とこう思ってしまう。
自分に出来る事ならしてやりたい
矛盾した行動なのに、自分が得をする訳でもない。誰も信用出来なくて、誰も信じたくなかった事もある。
どうしてなんだろうな。
俺は結局『どうするべきか』という選択は、すでに『やる』という答えをもう押してしまってるんだ。
女子だから、友達だから、家族だから……なんて言い訳は山の様にしても行き着く先は決まって『気まぐれ』だ。
さっきまでの行動も含め、答えは決まってた癖に悩んだふりをしていた。俺は彼女を助ける1歩先に踏み込む事に決めた。
分かってる。
自分は知っていてもあっちは俺の事を知らない。助けたって感謝されるなんて思ってもいない。彼女の本当の悩みかも分からない。
助けると決めたらどんな悩みだろうと、解決する努力する。それだけの事をしようとしている。
迷惑かどうかはこれから調べる。苦労してやって無駄足にもしたくないし、目の前だけの助けでは誰も欲しいとは思わないだろう。
幸い、身内と周りの調査をどちらも『弊害も無く調べる』事が出来る身である。
使える手は幾らでもある、諸刃はあっても裏切りは無い。
「……これでホームルーム終わる。各自授業に遅れるなよ」
そんな誰にも伝えない決意を抱いている内に先生はホームルームを終わらせて教室を出て行った。
授業が始まるまでの時間、手に顎を乗せてのんびりしていると松本がこちらに歩いてくる。
彼は歩み寄る時に隣の静かに座ってる彼女を盗み見る。覗くその様子は、さっきの事で彼女を少し気にしてる様だった。
「なんか挙動不審だが、どうした?」
「ねぇあの話って……」
「気にする程ではないだろ」
隣の……と、小さな声だが口に出そうとする松本を遮る。
「でも……」
それでも放っておけないのか、気まづそうに俺の顔を覗く。
「今はまだ俺達は目撃して聞いただけだ。それが彼女の事であるか、はまだ知らない。それに言ってどうにかなる問題でもなさそうだ」
ゲームみたいに選択肢という決まったレールがある訳ではない。たった1つの行動でもリアルという現実は残酷にも幸せにも変わる。
だからこそ1つの選択に時には早く、遅く対応しなきゃならない。
飛び出して今何を言えばいいのだ。言っても信じないし煙たげられるかも、その事を知っていて隠したかったら?嫌な目で見られる可能性もある。
それに……
推測でしかないが彼女が1年間も我慢していた事が、一瞬で片がつくとは思えないし、簡単に引き下がるとも思えない。
自分達だけでは少なくとも根本的な何か見落としてしまいそうな気がする。ゲームのやり過ぎかもしれないが。
必ずと言ってもいいくらい、人ってのは憎しみ深いし諦めもしない。面倒事はこりごりだ。
「俺は午後いないから頼みたい事がある」
「彼女の事?」
どうせ彼女は変わらぬ笑顔で、性別が変わった俺に今日も楽しそうに絡んでくるだろうから。
なら行動出来ないその埋め合わせを申し訳ないが松本にやってもらう。首を突っ込んで来たのだから最後まで付き合ってもらうぞ。
「やってもらうのは……」
良くも悪くも自分で自覚は無い、松本が言うには俺は周りで不良だと思われてるらしい。
1年目の時の喧嘩騒動のせいで皆の印象が噂とともにそれで固定されてるらしい。
馬鹿正直に喧嘩をしたわけじゃない。喧嘩を売る根性も無いしな、やるなら後も前も有利に戦おうとするだろう。
松本と一緒にいるのはその頃からだったな、懐かしいがあの時は思い出したくも無い。顔が俺も含めてボコボコにしたし、されたしな。
と、授業なんてそっちのけで1年近く前の事を思っていた。
ふと横の席をチラ見すると何やら顔色が優れない様子のかなめ、その子がいた。隣の席ではあるのだから当たり前だが。
あまり関わらない方がいいが、心配くらいしても構わないだろう。俺は少し控えめに彼女に話しかける事に。
「顔色悪そうだが、大丈夫か?」
「え、あ……高橋、くん。どどうしたの?」
怯えているというより、何か怖い事でもあったのだろうか。話しかけると両肩を跳ねあげておぼつかない口調でこちらに質問を返してくる。
「あぁいや、なんか体調悪そうだったから大丈夫か?」
そんなことないよ。と否定してくるが見るからに尋常ではない怯え方なのだが、いや俺に対してじゃないとは思う。人に怯えられる程、凄い事した覚えもない。
俺は視線を机の中に移す。すると彼女は手に持っていた物を中に隠してしまった。
あれは携帯か?
「バレる前に隠しておけよ」
「あ、うん。ありがとう……」
大分印象が違うな。
明るい彼女は何処へやら、今の彼女は何かに怯えてるいたいけな少女という感じである。あの性格を知らなかったら俺は松本の話を聞いても信じなかったかもしれない。
少しホッとする彼女を見ていると、それは知られたくない事ではあるみたいだ。ただ知っている上で印象を口にするなら助けを求めてる様に見える。
まぁただの自意識過剰なだけかもしれないがな。
彼女が怯える原因がなんなのか知りたかったが、それとなく女子同士の時にそれとなく聞くか。
女性になる事が気にしなくなってきた俺は、その事に少し落ち込みつつ何も起こらなきゃいいな、と1人で溜息を吐いた。




