第九話 こういうの舞台裏って言うんだっけ? まあいいやとりあえず種明かし編③
今度一気に一万字投稿してみたいな、という希望♪
俺はチートな神様が勝手に出現させたローウルフを消してもらい、ごくごく普通のやり方でローウルフを探しはじめた。
そう、足跡追跡だ。
「足跡がこっちに向かってるな……」
今、俺と神様は足跡を辿って森の中を歩き回っている。
ちなみに神様にはチート能力禁止令を出している。
だってチート使ったらつまらないじゃん。
こういうのは過程を楽しむものだからな。
「なーなーカイト、暇だしつまらないし面白くない。能力使っていい?」
「駄目です! 『魔物見つかるかな〜見つかるかな〜?』っていう遠足とか修学旅行の前日みたいなこの雰囲気が楽しいんでしょ!」
「いや僕って神だから遠足とか行ったこと無いし……」
「何ッ?!」
遠足に行ったことがないだと……?!
「じゃあ修学旅行みたいなものも……?」
「あるわけないよ、神なんだから」
「何…だと……」
俺は驚いた顔で神様を見た。
小学校の頃の山に行く遠足前日の『カブトムシとかクワガタいるかな〜』や、高校の修学旅行の京都行き前日の『京都アニ○ーションはどんなところかな〜』などその他諸々の胸を躍らせるイベントを経験していないだと…。
「神様……」
俺は急に不憫に思えてきた神様の肩に手を置き、
「人生、いや神生。生きていれば良いことが」
「あ、でも一週間に一度日曜日だけだけど、休みの日だからみんなで下界バカンスとかしてたよ」
「………ばかんす?」
「主神って創造神のことだけどね、創造神は一週間で創る予定が六日間で世界創っちゃったの。だから最後の一日は休まれたの。それが日曜日。その慣習で天界では、日曜日は一日オフなんだ。だから、みんなで下界にバカンスしに行くの」
「……………へぇ」
「君の世界の"地球"? あそこは良いところだよね、特にハワイ! あそこにバカンスしに行くって言われた時はウキウキしたな〜。そうか、これを遠足というんだね!?」
「…………」
俺は何も言わず何の反応も見せず無表情で、はしゃぐ神様の肩においていた手をどけ、今度は頭の上に置いた。
「ん、どうしたの? 僕の頭に何かついてた?」
頭に手を置いてきた―――いや、頭を掴んできた俺に神様は言った。
「…ええ、神様の頭の中に異常があると思いましてね!」
俺は神様の頭を掴む手に力を込める。
さらに、設定『スキル―握力アップ』発動! この瞬間、俺の握力は神をも超える!
「くらえや駄神いぃぃぃ!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!」
「痛くて当たり前だ! 痛くしてるんだからな!だいたい下界遠足でハワイ? ふざけんな、そんなの遠足でもなんでもねえ!」
「いたいいたいいたいいたいいたい!!」
「くらいな……これは俺の、俺達人類の怨みだ!」
そう言って俺は神様を握る手に最大限の力を込める。
次の瞬間、
「ぎゃあああうぼげッ?!」
神様の頭からバキッ! と嫌な音が響く。奇声を上げた神様はそのままどさっと力無く倒れ込む。
「……またつまらぬものを握り潰してしまった………」
変死体と化してしまった神様に背を向け俺は呟く。
「あんたの犠牲は、無駄にはしない…」
そうだ、神様の死が今の俺を支えているんだ。神様がいたからこそ、今此処に俺は存在するんだ。
「神様のことは忘れないぜ」
俺は空にサンサンと輝く太陽を仰ぎ見る。
「俺の旅は、まだまだ始まったばかりだ!」
――――――――――完。
「なわけねええぇっ!!」
ちっ、死んでなかったか。
「あ、神様おはようございます。復活早いですね。というか神様と遊んでいたらローウルフの足跡見失っちゃったじゃないですか」
「そんなことよりまず謝ろうよ君?! 僕が神だったから良かったもの、常人だったら確実に死んでたよ!?」
「すいません紙様」
「そうだよそうやって素直に謝れば……あれ? なんか今違くなかった?」
「そんなことないですよーはやくローウルフみつけましょーよーー」
「激しく棒読み!やっぱり謝る気0だ!」
「あ、ローウルフ見つけた」
「え、うそうそ何処?!」
「うそです紙様」
「…………」
「すいませんホントです。ほらあそこ」
俺が指差すと、そこには二十匹程度のローウルフが群れを作っていた。
「……まあいいや、とっとと調教しちょってよカイト」
「了解っす!」
俺は設定『無口な少年』に後付け設定『調教師』を書き加える。すると、俺の手に銀色にきらめくムチが出現する。
設定を書き加えたことによって、俺に対する皆の認識が"無口で調教が上手い少年"(考えてみるとキモいな)になっているだろうが、後でこの後付け設定だけを村に戻るまでに消せば問題無いだろう。
「というわけで行ってきまーす!」
「はいはいいってらっしゃい」
俺はどうでもよさそうな神様の声援を背に、スキップでローウルフの群れに行く。
「ガウッ! ガルル……」
くふふ…、俺に気付いたか。
不敵な笑みををこぼす俺に、ローウルフの群れは怯える様子を見せる。
「ガウー………」
「ククク、俺に見つかったが百年目。俺の良き奴隷になってくれよ?」
銀色のムチを振り回して言う俺に、ローウルフ達は逃げようとするが、
「逃がすかよ!」
「ギャンッ?!」
いち早く群れの中から逃げようとしたローウルフをムチで叩く。ローウルフはその細いムチからでは想像出来ないほどの力を受け、吹き飛び木にたたき付けられる。
俺は、その様を見て恐怖しているローウルフに向かって言った。
「今日がお前達の命日、そして俺の忠実な犬として生まれ変わる誕生日だ!」
それから一時間、森の中でローウルフの悲鳴(?)が響き渡った。