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第二十二話

見覚えが少しだけある場所まで、戻ってきた。

「ここだ」

そう言って、フーガは一つのドアの前で止まった。

片開きの扉。装飾もささやかなドアで、大きさも普通だった。


コンコン


夜の静かな廊下に、ドアノックの音が響く。


「クラウさんですか?」

「フーガです。アキネさんをお連れしました」


中から、かなの声が聞こえ、ついでに走ってくる音も聞こえた。

ドアの前で足音は一度止まり、鍵を外すような音が聞こえる。


バンッ


勢い良く扉が開き、廊下に音が反響する。

「あきちゃん!!」

かなは私の名前を大きな声で叫んで、抱きついてきた。

泣いているようじゃないので、少しだけ背中を撫でた後で、かなと話がしやすい距離に体を離す。

「かな?どうしたの?」

「ごめんね、ごめんね。あきちゃん」

かなの様子に私は困惑した。かなが『心配したんだから』と怒ったりするのなら、解る気がするが、かなは『ごめんね』と謝罪を口にしている。謝るのなら、私の方なのに。

「かな、私の方こそごめんね。心配かけて」

そう言った私の言葉に、かなはぶんぶんと首を振る。何か、かなが思っていたことと違ったようだ。

「私、あきちゃんを気遣ってあげられなくて・・・。あきちゃんに一人で寂しい思いを・・・」

「違うよ、かな。私が一人になりたかったの。かなは何も悪くないんだから謝らないで。謝られると、困るよ」

冗談めかしに笑いながら言ったのだが、『困る』という言葉にかなは敏感に反応した。

あー・・・言葉間違えちゃったかな・・・。

「私の方こそ、かなを一人にさせてごめんね。心配もかけちゃったみたいだし」

「ううん」


少しだけ、沈黙が流れた。

なんだか、気まずい。かなは何も悪くないのに。どんな言葉をかければいいか・・・。

「・・・あきちゃん、おかえりなさい」 

かなの言った言葉に、私は止まった。

かなの言った『おかえりなさい』その言葉が、頭の中で反芻される。

なんだか、嬉しい。

「ただいま、かな。遅くなってごめんね」

嬉しさからか、笑みがこぼれた。かなも、嬉しそうに笑ってくれた。

・・・やっぱり、かなはすごいな。



私たちが部屋にも入らずに廊下で話しているのを、私の後ろでフーガはただ黙って見ていた。

私はフーガの方に向き直って、礼言った。

「フーガさん、今日は本当に色々ありがとうございました」

私を探しに来てくれたことや不器用な気遣いなど色々な感謝の思いを乗せ礼を述べ、フーガに頭を下げた。

顔を上げると、ゆっくりを首を振るフーガがいた。

「ゆっくり休むといい」

そう言って、フーガは後ろを向き部屋を去ろうとしてた。

「ああ。鍵はちゃんとかけるんだぞ」

フーガは一度思い出したように振り返って、施錠を促し背中を向け歩き出した。

ついその背中に向かって。

「おやすみなさい」

と言ってしまいました。いや、ほら、タイミング的に言わないといけない気がしない?

そう思って言ったのに、フーガは振り向き、目を大きく開いて驚いたような感じでこっちを見た。

「おやすみなさい、フーガさん」

かなも一緒に言ってくれました。それで、折れたのかフーガも返してくれました。

「おやすみ」

どうも、彼は私から『おやすみなさい』と声をかけられると思っていなかったらしい。

彼は短く返事をすると、今度こそ部屋の前から去りました。



部屋は朝起きた部屋と同じ場所だった。見覚えがあるはずだ。

今朝自分が寝ていたベッドに横になる前に、上着を脱ぐ。これのおかげで、思ったよりも夜だけど寒さは感じなかった。

「あきちゃん、はい、これ」

そう言ってかなが差し出したのは、洋服だった。広げてみるとネグリジェのような感じの薄手の洋服だった。これに着替えて寝なさいってことか。

「これね、サティさんが用意してくれたの。色違いだけど、おそろいなんだよ」

嬉しそうに教えてくれる、かな。

その様子が、なんだか心が温かくなるようで自然と笑っていた。


うん、もう大丈夫。


「そういえば、どうしてクラウさんだと思ったの?」

ドアをノックした時、中から聞こえてきかなの声は『誰ですか?』ではなく『クラウさんですか?』だったことに、気になったので聞いてみた。

「ああ、それね。食事終わった後、クラウさんがあきちゃんを探してきてくれるって。だから、部屋で待っていて下さいって言われたから」

「え・・・?フーガさんからの連絡は届いてないの?」

フーガは私を探しに来てくれた後で、一度かなたちに連絡をするため近くの連絡所に出向いたはずなんだけど。そこから、夜ご飯なるものも貰って持って帰ってきてくれたんだけど。

「私が広間に居る間には連絡は来てないみたいだったけど・・・?」

メイドさんたちが仕事をさぼるなんて思えないし(勝手な先入観だけど、お城で働けるってすごいことなんじゃないかと思うし)。

どこかで連絡が行き違ったのかな?

「おかしいなぁ・・・?・・・まあ、いいか?」

「うん、そうだね」


「あ。私・・・クラウさんとの約束、破っちゃった・・・」

かなと私が着替え始めて、かなは思い出したように呟いた。というか言った。

「約束・・・?どんな?」

着替えながら聞いてみる。

「誰が来ても、絶対に中からドアを開けるなって・・・。トイレとかは続きの部屋にあるから、部屋からは絶対に出ないでって言われてたんだけど・・・」

「そうなんだ・・・?」

何か、出られたら不都合でも・・・ってか、何で誰も護衛しなきゃいけないのに近くにいないんだろうか・・・?部屋に何か仕掛けでもしてるんだろうか?

明日にでも聞いてみるかな?



着替えが終わる頃、ドアをノックする音が聞こえた。

「カナエ様、クラウです」

「あ、今開けま」

「いえ、どうぞそのままで。部屋には結界が張ってありますから、朝になってサティが来るまで誰も入れないで下さい」

かなはドアに駆け寄り、鍵を外そうと手を動かしていた。それを、クラウの声が静止した。

「え?でも・・・」

ドアの前でかなは困惑していた。それを、ドアの向こうで感じ取ったのかクラウの声が聞こえる。

「ドアを開けなくて大丈夫です。そちらにアキネさんはお戻りだとお聞きしました。連絡が遅くなり申し訳ありません」

「いえ、そんな。フーガさんがあきちゃんを送って来てくれました。クラウさんもありがとうございます」

なんだか、ドア越しの二人の会話を聞いていると騎士と姫様みたいだ。

実際クラウにとってかなとの関係は、そんな感じの関係なのかもしれない。

もっとも、私は二人の会話に参加せず、ただその様子をじっと観察してたりします。

「いえ、自分は何も。確認をしに来ただけですから・・・」

「クラウさん、色々ありがとうございました。おやすみなさい」

「いえ、こちらこそ。カナエ様、この世界に来てくださってありがとうございます。おやすみなさいませ、また明日」

ドア越しだから気づかない。

『この世界に来てくださって』と、それ聞いたかなの表情を。

ドア越しのクラウは気づかない。

でも、私は、同じ部屋に居る私は気づいた。


かなの、今にも泣き出しそうな表情を。

かなちゃん登場ー。思ったよりもだらだらと長くなってる。かなちゃんは明るく、表情もころころと変わる可愛い子のつもりです。

表現できてるといいんだけど・・・。


少々更新が遅れました。次もちょっと色々と遅れそうで、遅れないように頑張っていきたいです。だらだらしすぎて、話が進んでない気がしないでもない。

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