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2-55

「あの人早く帰って来ないかしら。アルト子爵家にも挨拶に行かなくちゃね。婚約式はいつにしましょ。これから楽しみだわ。」


中庭から手を繋いで戻ってきた私達をアンネ夫人はそれはそれは嬉しそうにサロンへ引き摺り込んだ。


「母上、落ち着いてください。まずは父上に話をしないと。」


「そうね。もう!どうしてまだ連絡が来ないのかしら。あんなに手紙を送っているのに。ウィルもう一回行って、ベルムを連れ帰って来なさい。」


「はあ、正気ですか、母上。」



私はただ大人しく2人の会話を聞いていた。

侍女達は相変わらず、2人の遣り取りを静観している。




「奥様、旦那様からお手紙でございます。」

執事が持って来た手紙には一輪の花が添えられていた。先程の興奮状態から一転、落ち着きを払った夫人は愛しむようにその花に触れていた。


「2日後に帰って来るんですって。騎士のお客様も連れて来るそうよ。」


「リル、ルード卿が来るみたいだよ。大丈夫?」


「もちろんよ。」

2日後、私はルード卿と対面することになる。その交渉は私がお父様に任された仕事。必ずやり遂げないと。


「アンネ夫人、明日から薬草園に行ってきてもいいですか?」


「あらやだ。お義母様って呼んでもいいのよ?」


「母上。」

ウィルの夫人への対応が段々雑になってきている気がする。


「もちろんいいわよ。マリード家の権限は今凍結しているから大丈夫。薬草園に行っても顔を合わせることはないから安心して。我が家のごたごたに巻き込んじゃってごめんなさいね。」



マリード所長達は今、薬草園の近くにある村で軟禁されている。子爵が戻り次第、処分が下されるそうだ。私も随分煽ってしまったので、あまり重い処分にならない事を願った。





「デル、完成だね。おめでとう!すごい頑張ったんだね。」

デルの回復薬は綺麗に魔力が巡っている。効力も十分だった。あれだけ苦戦していた魔力の調整も流れるようにスムーズで、デルの努力が伝わってきた。


「あれだけ材料があったからな。練習用の材料には困らなかったぞ。これであの人との交渉に挑むんだろ?とうとう明日か。」


「うん。デルは大丈夫?もし会いたくないなら私が代わりに交渉するよ?」


「いや、このまま逃げてるわけにもいかないからな。それに女の子の後ろに隠れてるなんて格好悪すぎだろ。」

デルは笑いながら私の頭に手を置いた。その顔に不安は見られない。

私はデルを信じて明日を迎えることにした。



「リルメリアさん。ちょっといいかな?」


「はい、リーン先生。」

明日に備えて早めに本邸へ帰る支度をしていると、リーン先生に呼び止められた。


「この薬のことなんだが。確か錠剤だったかな?効力は間違いなく魔法薬と言っていいものだった。この浄化薬なんて動物だけじゃなく植物にまで効果があった。」


私が籠城中に妖精と作った薬をリーン先生に調べてもらっていた。


「まだ調べ始めたばかりだから正確な結論ではないけど、これは私達では誰も作れないと思う。今はここだけに留めておいた方がいい。」


「そうですか。リーン先生ありがとうございます。一度父に相談してみます。」


あの薬は今は無闇に出さない方が良さそうだ。帰ったらお父様に上手く活用してもらおう。

私はこれから挑む難壁に集中することにした。







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