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昨日、本邸の客間でウィルが来るのを待っていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
それはもうぐっすりと次の日の昼まで。焦って寝衣のまま飛び出しそうになった私をラナとネルが甲斐甲斐しくお世話してくれた。
いつも以上に丁寧に、この数日間を取り戻すように磨き上げられた。本邸の侍女が持ってきてくれた金糸の刺繍が美しい水色のドレスを着ると、2人は満足そうに頷いていた。
私の支度が終わるのを見計らったようにウィルが部屋に入ってくる。
「ウィル、その服!」
「どうかな?リルはとっても似合ってるね。本当に天使みたいだ。」
私達の服は装飾がお揃いで作られていて、2人で並ぶと対になるようなデザインだった。しかも服の色はお互いが生まれ持った色。これは恥ずかしい。
いつまでも固まっている私に、ウィルは手を差し出す。
「庭に昼食を用意してもらったんだ。一緒に食べよう、リル。」
「う、うん。」
ぎこちない動きの私をウィルが優しいエスコートで外へ連れ出してくれた。
薔薇園を抜けるとそこはガゼボを囲うようにラフィールの花が広がっている。
「綺麗」
「気に入った?さあ、お腹空いたでしょ?いっぱい食べてね。」
美味しい食事を楽しんだ後、私は改めてウィルからノードル領での出来事を聞いた。
ウィルの話は想像以上に危険な状況で、私の背筋が震える。
どうしてあの時の私は安易に商談なんて言ってしまったのだろう。自分が作った物は自分が責任を持って届けに行くべきだった。深い後悔が私を襲う。
「ウィル、ごめんなさい。貴方に大変な役割を押し付けてしまったわ。私、どう償えばいいか。」
「リル。リルの薬と魔道具が命を守った瞬間に立ち会えてすごく光栄だった。だから謝らないで。笑ってお礼を言って欲しいな。」
ウィルの声が私の後悔を暖かく溶かしていく。すると、私の素直な感情がぽろぽろと口から飛び出した。
「私、誰かの役に立てて嬉しい。皆んなで作ったものが人の命を守れたなんて本当に幸せ。」
後悔が私の中から消えた訳ではないけれど、それでも今の私の気持ちをウィルに伝えたかった。
「ありがとう。ウィルがいてくれて良かった。」
私はウィルの手を祈るように握って、心を込めたお礼の言葉を紡ぐ。
「どういたしまして。」
そう言って笑ったウィルの顔を私はずっと忘れないと思う。
「ねえ、リル。僕との約束覚えてる?」
「もちろん、覚えているわ。私に出来ることならなんだってする!遠慮なく言って。」
徐に椅子から立ち上がったウィルが私の前に膝を着く。
「僕はこれからもずっとリルの側にいたいんだ。だから僕の婚約者になって欲しい。」
ウィルは懇願するように私の右手の甲を自身の額に当てる。
「私はずっとウィルといていいの?」
ああ、嬉しい。それは私の願いでもあったんだ。
リリーさんとウィルが一緒にいると胸が痛んだ。あれは嫉妬だった。
やっと私は自分がウィルに恋をしていたことに気がついた。
「私はウィルが好き。だから一緒にいたい。」
「うん。僕もリルが大好きだよ。もちろんずっと一緒だ。」
2人で笑い合うと、風がラフィールの花弁を空高く舞い上がらせた。




