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学院には本校舎に保健室がある。基本的に怪我をしたときなどにお世話になる施設であるが、時に学院で馴染めず爪弾かれた者たちが集う場所でもあった。
「シャイルよりオオカザキのほうが重症だなんて、ジルトニス・オービュラスはやりすぎよ」
シャイルは怪我をしたものの全治一週間だった。
それに対してグルンナインは、顎を粉々に砕かれた上に、鼻の骨もひん曲がり、召喚獣の火竜は浄化されてしまった。そのおかげで召喚操士としての功績はすべて帳消しになり、棒はすべて返還された。
整った顔立ちはもう元通りになることはないと言われ、火竜もいなくなった。学院内で彼の権威が復興することはもう二度とありえないだろう。
これは彼の将来にも大きな影を落とすに違いない。
「すみません、お嬢。これも私のほとばしる熱情を抑えきれなかった結果なのです。彼がお嬢にあそこまでしなければ、私はもっと穏便にすませていたはずです」
「顔についてはジルトニスに感謝をすべきだと思うわ。ようやく醜い心に釣り合う顔をもらえたんだから」
「姫様は辛辣ですね」
これにはシャイルも苦笑いを浮かべるしかない。
「あいつについてはこうも言いたくなるってものよ」
レイディはフンと鼻を鳴らす。
「それでお二人はどうして保健室に? お見舞いというわけではないんでしょう?」
シャイルはまだ本調子でないために保健室で寝かせてもらっていたら、この二人がやってきて、三人で会話をはじめたというわけだ。
「私とジルトニスはだいたいここにいるわよ」
「お嬢は友だちがいないので、食事もここでとります。休憩時間もしゃべる友だちがいないので、ここにいます。ペアを組む授業は組んでくれる友だちがいないので、授業をサボってくるのがここなんですよ」
「わ、私だって友だちくらいいるわよ!」
レイディは顔を真っ赤にして怒り出す。その声はうわずっているが何とも物悲しい。
「ですので、お譲に出会いたければ保健室へどうぞ」
ジルトニスはにっこりと笑みを浮かべて、「お譲とは仲良くしてください」と言った。
後にこの三人は保健室トリニティなどと呼ばれるようになるのだが、それはまた別の機会で語られる物語である。




