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召喚棟を見渡せるところから二人の男女が戦いの様子をずっとうかがっていた。
「いやあ、しっかり魅せてもらったよ」
学院長である。
「何なんですか、あのふざけた技は?」
そう言ったのはエーデリカだ。
「開演・剣王の玉座のことかい? いやあ、一年前は神拳だったのに、いつの間にかパワーアップしていて驚いたよ」
「その話じゃありません!」
「あの技は剣で劇場を作り、起の玉座の決闘、承の刃向かう者、転の斬りかかる叛逆者、結の撃退する超神拳にて構成される演劇さ。これを喰らった者は死ぬほど痛い思いをする!」
そう語る学院長はやけに楽しそうだ。
「……ひょっとして学院長が考えたんですか?」
「かもしれないねぇ」
学院長ははっはっはと朗らかに笑う。
「ですが、グルンナイン・オオカザキ君は本当に無事なんですか?」
「すでに急患の手配はできている。まあ、大丈夫じゃないかな。もっとも顔を完全に修復するのは難しいかもね」
顎を粉々に砕いたうえに、顔面から竜の固い鱗に高所から落ちたのだ。完全に、というのは難しいかもしれない。
「鋼鉄精霊の召喚だけでなく技量の必要とされる技まで使いこなすなんて、ジルトニス・オービュラスとは何者なんですか?」
「……それを僕の口から答えるわけにはいかないな。君なら、わかってくれるよね」
「5年前。西部征伐で大国の首都を王族および関係者だけでなく、街の住民を一人残らず殺し尽くしたという記録がありますよね。しかも、それは複数の手によるものではなく、たった一人の帝国兵の手によるものだと」
「そんな話もあったね」
――たしか、その人物はこう呼ばれたはずだ。
『鋼鉄剣聖使』。




