↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
招魔の祈り ~law distorters~     作者: 平山コウ
2.~ファミグリア結成~
PR
41/71

【2】ー19  機械人形



 フロルとアミナが思わず固まってしまうなかで、レヴァンだけが特に変わった様子もなく、リンに尋ねた。


「リン、なんでこんな危なげなとこにいるんだよ。はやくこっちに帰ってこい」


 そう言うと同時にリンの顔が寂しさに彩られたが、彼女は無理と言って首を横に振った。


「なんで」

「アタシは、ここを裏切れない」

「それならせめて、俺たちの邪魔をしないでくれ。その道を通してくれないか?」

「……ゴメン、それも無理」


 リンが二本のナイフを両手でそれぞれ中段に構えた。レヴァンはくそ、と吐き捨て、顔を歪ませた。

 一触即発。

 そんな空気となり、全員が動けない。しかし緊張は少しずつ限界まで近づいていく。しばしそうやって互いを牽制していたが、やがて緊張が限界まで高まった。そのとき突然、



 その場に粉雪が、舞い始めた。



 ここは屋内だ。しかし、いつのまにか周りの気温は急激に下がっており、雪は儚くも強く降り積もりつつあった。


「な、なにこれ……」


 リンが異常事態に狼狽える。しかし、レヴァンとフロルはこの現象を見知っていた。


「…………レヴァン、フロル。先、行って」

「……いいのか?」

「…………ミグルスと一緒に足止め、しとく」


 アミナが真剣な表情で言う。


「でも……」

「しつこいぞ小僧。我がいる間、主に危険が迫ることなどない」

「ミグルス……」


 ふっとアミナの横に現れた黒い子犬がレヴァンたちを促す。それを見てまた迷ったような表情を見せた後、


「……ここは頼む」

「お願い、二人とも」


 レヴァンとフロルは先の通路へと走りだした。


「ここは通せないって――」


 その場から去ろうとするレヴァンたちに攻撃を仕掛けたリンが反射的に横っ飛びをする。すると、レヴァンたちとリンの間に、見事な氷柱が立っていた。


「獣の娘よ。相手は我らだ」

「……仕方ないか」


 レヴァンはその様子を見届けて、


「行くぞ、フロル」

「うん」


 後ろ髪引かれる思いをしながらも、その通路を抜けたのだった。









「…………思惑、失敗」

「確かに失敗かも」


 リンが悔しがる。しかしすぐに、どこか獰猛な印象を抱かせる笑みをアミナに向けた。


「でも、アミナとミグルスを倒せばすぐに追いつけ――」


 リンが言い切ろうとした時に、アミナがそれを遮った。


「…………それは無理」

「……なんだって?」


 リンはわけがわからないという顔をして、眉をひそめた。


「アミナは確かに同学年の中じゃ強いほうだと思うけど……もしかしてアタシに勝てると思ってるの?」

「…………思って、ない」


 その言葉に心底疑問そうな顔をするリン。そんなリンに、アミナはいつものような微笑を向けた。


「…………あなたから、敵意を感じ、ない」

「敵意?」

「…………そう」

「我が主の“(うち)()み”を一笑に付さないほうが身のためだ」


 ミグルスまでもが自身ありげにそう口にする。「……大げさ」と言って少し恥ずかしそうにしているアミナを見て、リンはふっと笑った。


「……そういうこと。仲間だったアタシは自分を傷つけないと思ってるんだ? ……でもそれは間違いだよ」


 瞬間、凄まじい闘気がリンからアミナに向けて吹き出す。アミナは自分の背中に冷や汗が流れるのを感じた。


「どう? 身が竦んだ?」

「…………少し」

「少し?」


 今までこれで怯ませなかった者はいない。そんな全力の圧倒を軽くいなされ、リンはアミナをよく見る。すでに真剣な顔になっていたアミナは、再び微笑でも浮かべそうな雰囲気をまとっていた。

 その目が真っ直ぐリンを捉え、優しく口を開く。


「…………それでも。リンは仲間」


 リンは突如胸に湧き上がった強い感情に流され、アミナに飛びかかった。


「ふざけないでよッ!」


 全力に近い突進に、アミナが反応する前にリンの攻撃範囲に彼女が入る。そのまま叩きこもうとした拳は、とっさに張られた氷の壁にヒビを入れた。


「おまえと戦うことになろうとは。まったく、人間とはよくわからぬ」


 そう言って、ミグルスが一吠え。リンが飛び退り、その場所は瞬く間に凍っていった。

 二者は再び離れ、睨み合った。


「アタシは、やるよ」

「…………レヴァンの邪魔、させない」


 二人の決意が正面からぶつかり、そして戦いは始まった。




 ◇◇◇




「ハンスくん、気をつけて」

「わかっている。……おまえこそ気をつけろ」


 パルメル兄妹は、現在身を潜めていた。

 正面で騒ぎを起こした後、三割ほどの敵を一掃。しかし、予想していたより敵の数が多く、一旦退却することに。身を隠す場所を求め、建物の内部へ入り込んでいた。

 慌ただしく動き、連絡を取り合う『魔の狩人』の構成員がハンスたちの潜む部屋の前を何度も通りすぎる。

 ――こりゃ、外に出られねぇな……。

 ハンスはそう判断すると、カナンに合図。静かにこの部屋の探索を行うことにした。

 部屋の探索、という表現がぴったり合うほどの広さを持つその部屋を見て、ハンスは直感的にここは重要な部屋だと結論づけた。経験に裏付けされたハンスの直感はよく当たる。

 部屋を簡単にエリア分けすると、一つは何台ものコンピュータがつながれた大機械部分。もう一つは書類やそれらが入った箱が雑多に積み上げられた部分だ。

 ハンスは、実は機械音痴のカナンに荷物の方を任せ、自分はコンピュータの方を調べることにした。

 そこからしばらく調べる。そこで、ハンスは疑問を感じた。

「これは、なんだ?」

 大機械部分の隣、物置のようになっている場所に、大きな鋼鉄の人形が置いてあった。ハンスの二倍近いその体躯は、人間の体をモチーフにしているようだが、横にも大きいその身体はまるでドラム缶のお化けだ。趣味の悪い人形である。

 ハンスがカナンへと目を向ける。しかし、特に進展はないらしい。再びその鋼鉄に目を戻した。


 すると、人形の姿勢が変わっている。


 直立不動だったはずが、片方の手を上げたように姿勢を変えていた木偶の坊。その姿はまるで獲物を撲殺しようとする狩人のようで……。

 ハンスは素早く距離を取った。それと同時にその機械人形の腕が振り下ろされる。ひどい音を立てて、床がへこんだ。


「ハンスくん!」

「敵だ! 援護しろ!」


 頷くカナンを確認して、ハンスは目の前の自動機械人形へ集中した。その身体は、見た目に反して、かなり速い。


「だが……」


 ハンスは腰から下げていた愛刀を鞘から抜き、下段に構えたまま急接近した。

 それにしっかりと追いついた動きで、敵は速度のある攻撃を加えてくる。しかし、


「……はっ!」


 ハンスは気合一閃。迫り来る腕ごと叩き斬った。


「その程度の速さなら、あの馬鹿で慣れてる」


 そう呟くと同時、手首を返して二の太刀。その攻撃は自動人形の装甲を斬った。しかし、装甲だけだ。ハンスはちっと舌打ちをした。

 ハンスが回避行動を取る前に、自動人形の腕から炎が吹き出す。火炎放射器を至近距離から放ったのだ。


「させません!」


 それをカナンの軽やかな精密射撃により腕ごとそらされ、不発に終わる。炎は天井を焼いた。そして、


「今度こそ、だ」


 再び構えたハンスが刀を上段まで振りあげ、一気に振り下ろす。鋼鉄の物体は、容易く真っ二つにされ、ゆっくりと地面に倒れた。


「……ふっ」


 呼気を吐き出し呼吸を整える。襲ってきた自動人形が動かないのを確認すると、ハンスはカナンの方を向いた。


「怪我は」

「心配無用です。それより」


 一体なんなのです? そう続くと思われた言葉は、突如鳴り響いたサイレンに阻まれた。それと同時に部屋の天井から駆動音が聞こえてくる。

 二人が見上げると、そこには焼け焦げた天井と備え付けられたスプリンクラー。


「「あ」」


 間の抜けた声を二人が出した所で、スプリンクラーが回り始めた。スプリンクラーの水は容赦なく部屋中の荷物と機械を濡らす。そして、サイレンの原因を探りに来た施設内の人間がやってきた。


「おい! 貴様らなにしてる!」


 そう声をかけられた所で、

 ブツン、という音と共に、施設中の電気が落ちた。





今年最初の更新です。しかし、次はお休みします。このあとの更新は9日になると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。