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トーノブユース  作者: 富士都


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48/58

第十四話

学年末試験、最終日。

「……終わった……」

答案を回収される音を聞きながら、

机に突っ伏した。

一気に力が抜ける。

「はー……」

教室のあちこちから、同じような声。

分かる。

みんな同じ気持ち。

「明日香ー」

後ろから声。

「……無理……」

振り返らずに答える。

「生きてる?」

「ギリ」

そう言うと、綾香が笑った。

「おつかれ」

「綾香もね」

やっと顔を上げる。

「どうだった?」

「まあまあ」

肩をすくめる。

「……ほんと?」

「たぶん」

「それ一番信用できないやつ」

二人で少し笑う。

教室の空気が、試験前と全然違う。

解放感。

それと――

「……もう終わりかあ」

ぽつりと呟く。

「ん?」

綾香が首をかしげる。

「一年」

窓の外を見る。

冬の終わりみたいな光。

「……あー」

綾香も少しだけ外を見る。

「早かったね」

「ね」

うなずく。

入学して、

生徒会入って、

綾香と仲良くなって、

メモリコの話して、

文化祭やって、

――ちとが、サウズだって知って。

いろんなことがあった。

「……濃すぎた」

思わず言う。

「それは分かる」

綾香が笑う。

「普通の一年じゃないよね」

「だよね」

苦笑する。

普通じゃない。

でも。

嫌じゃない。

「……もうすぐ二年か」

綾香がぽつりと言う。

「うん」

なんか、不思議な感じ。

まだ一年生な気がするのに。

「クラス替えあるよね」

「あるね」

「どうなるんだろ」

「一緒だといいね」

「ほんとそれ」

綾香が即答する。

「離れたら普通に無理」

「大げさ」

「大げさじゃない」

ちょっとだけ笑う。

でも。

正直、同じ気持ち。

「……あとさ」

綾香が少しだけ声を落とす。

「高野くんも気になる」

「あー……」

なるほど、そっち。

「同じクラスがいいってこと?」

「そりゃそうでしょ」

真顔。

思わず笑う。

「分かりやすすぎ」

「いいじゃん別に」

ちょっとだけ照れてる。

「……最近どうなの?」

小声で聞く。

「……まあまあ」

同じ返し。

「なにそれ」

「ちょっとずつ話してる」

「おお」

普通にすごい。

「でもまだ全然」

肩をすくめる。

「それでいいんだよ」

うなずく。

「急がなくていいし」

「……うん」

綾香が、少しだけ優しく笑う。

そのとき。

「ねえねえ!」

クラスの子たちが騒ぎながら入ってくる。

「春休みどうするー?」

一気に、教室がにぎやかになる。

「……あー」

綾香が苦笑する。

「始まった」

「だね」

春休み。

二年生。

新しいクラス。

いろんなことが変わる。

「……」

ふと、スマホのことを思い出す。

ちと。

最近、少しだけ連絡は減ったけど、

ちゃんと続いてる。

会う約束も、ちゃんとしてる。

……この先はどうなるんだろう。

「明日香?」

「……ん?」

呼ばれて顔を上げる。

「ぼーっとしてた」

「ちょっとね」

笑ってごまかす。

でも。

「……大丈夫だよ」

なぜか、そんな言葉が頭に浮かんだ。

根拠はないけど。

それでも、そう思えた。

「帰る?」

綾香が聞く。

「うん」

うなずく。

カバンを持つ。

立ち上がる。

教室を出る。

廊下を歩きながら、

もう一度思う。

――もうすぐ、二年生。

この先も、

きっといろんなことがある。

でも。

それでも、

ちゃんと進んでいくしかない。

「……楽しみ?」

綾香がふと聞く。

「……うん」

少しだけ考えてから、

ちゃんと答える。

「ちょっとだけ」

不安もあるけど、

それ以上に。

「……私も」

綾香が笑う。

その横顔を見ながら、

私も少しだけ笑った。

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