第135話 ゴゴゴゴゴ
日曜日。六畳一間。アパートの一室。
「このお饅頭美味しいね」
パクパクとお饅頭を食べる死神さん。
「あらあら。気に入ってくれてよかったわ。お土産に持ってきたかいがあったわね」
ニコニコと死神さんを見つめるお義母さん。
「…………」
正座のまま恐怖で体を震わせる僕。
そして……。
「…………ゴホン」
わざとらしい咳ばらいをしながら、僕を睨む男性。
真っ黒なローブの上からでも分かる筋肉質の体。腕組みをしてこちらを睨むその姿は、頑固おやじと表現しても差し支えないでしょう。口の周りから顎にかけて生えている黒ひげが、より一層その迫力を際立たせています。
そう。その男性とは、死神さんのお義父さん。
僕と死神さんは、死神さんのご両親とテーブルを挟んで向かい合っていました。普通なら、緊張してもおかしくないような場面ですが、約二名、緊張感に欠けている人たちがいます。そのせいで、肝心の話題に踏み込むことができません。
気のせいでしょうか。お義父さんの背後から、ゴゴゴゴゴという音が聞こえます。僕の恐怖はもう限界に達していました。
「えっと……」
僕は、チラリとお義母さんの方を見ました。この状況を何とかしてほしいと願いながら。
お義母さんは、僕の視線に気が付くと、フッと優しい笑みを浮かべました。よし。これで、何とかなりそうです。
「ねえ」
「どうしたの? マ……お母さん」
「どうやら、彼はお父さんと大事な話があるそうよ。だから……」
僕の願い通り、お義母さんは場を整えてくれるようです。問題は、この後、どうやって話を進めていくかですね。ここで変に失敗してしまうと、僕がお義父さんに殺されてしまう可能性も……。まあ、死神さんとお義母さんがいる手前、そんな物騒なことにはならないでしょうが。
「私たちは席を外しましょうね。彼とお父さんだけにしてあげましょう」
…………へ?




