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ねえ、君、死ぬ前に私と将棋しようよ  作者: takemot
第4章 いなくなった死神さん
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第118話 さあ、あなたの答えを聞かせて頂戴

「えっと……」


「…………」


「……お義母さん、もう一度、言ってくれませんか?」


「あなたが死ねば、今すぐにでもあなたを死神世界に連れていってあげる」


 どうやら、先ほどの言葉は、幻聴でも僕の聞き間違えでもないようです。


「どういう……ことですか?」


「簡単よ。生きた人間をそのまま死神世界に連れていくには手続きが必要。でも、死んだ人間の魂なら話は別。そもそも、私たちの仕事は、死んだ人間の魂を回収して、死神世界に送ることなんだから」


 お義母さんは、口角を上げたままそう口にします。その姿は、まるで、アニメや漫画に出てくる悪魔のように見えました。


 お義母さんの言っていることが分からないというわけではありません。ですが、受け止めきれないのです。死神さんに会うために死ぬということが。


「……それ以外の方法はないんですか?」


「ええ。それ以外の方法で、今すぐあなたを死神世界に連れていくなんて無理よ。あなた、さっき、あの子に会うためならどんなことでもするって言ったわよね」


「それは……」


「大丈夫。魂になっても会話くらいならできるわ。だから、あの子を元気づけるために言葉をかけることもできる。まあ、自由に行動するとかは難しいけれど」


「…………」


「あの子に会いたくないの? 今すぐにでも」


 死神による死への誘い。畳み掛けるように、お義母さんの口から紡がれる言葉。その一つ一つが、僕の死を引き寄せているように感じます。そして、それはもう、僕の背後まで迫っていました。


「…………」


「帰って来られるかも分からないあの子を、待っているだけなんてつらいでしょう」


「…………」


「さあ、あなたの答えを聞かせて頂戴」


「…………」


「…………」


 お義母さんは、ジッと僕を見つめます。ここで答えを出さなくてはならない。答えを保留するなんてことは許さない。そんな、無言の訴えとともに。お義母さんの赤い瞳に、僕は完全に捕らわれてしまっていました。


「……僕は……僕は……死神さんに、今すぐ……」


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