表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねえ、君、死ぬ前に私と将棋しようよ  作者: takemot
第4章 いなくなった死神さん
106/142

第106話 PS

 急にこんなことになってごめんね。本当は、私の口から言わなきゃいけないんだろうけど、たぶん、泣いちゃってちゃんと伝えられないだろうから。


 実は、一週間前、急に上司から言われたんだ。「異動になった」って。「今までやってきた魂を回収する仕事じゃなくて、別の仕事をやってもらう」って。その仕事っていうのは、死神世界に運ばれてきた魂を天国や地獄に送ること。何となく想像はつくかな?


 まあ、仕事が変わるだけならよかったんだけどね。でも、問題は、その仕事をする死神が、人間世界に干渉する権利を持たないってこと。つまり、私の仕事が変わった時点で、人間世界で生活することも、人間世界に行くこともできなくなるの。


 もちろん、上司にはたくさん抗議したよ。賄賂も渡そうとした。それでも、無理だった。一週間、ずっとずっと頑張ったけど、無理だったんだ。「何回もお前の我儘に付き合えるほど暇じゃない」って言われ続けてさ。


 君にこのことを言おうとも思ったけど、結局、最後まで言えなかったよ。言えば、君が悲しんじゃうから。それに、上司を説得できた後、君に「こんなことがあったんだけど頑張ったよ」って伝えて、褒めてもらいたかったんだ。


 でも、どうせ結果が変わらないのなら、君にちゃんと伝えておいた方がよかったのかな。その方が、君の心の整理もついたのかな。


 ……さっきから、涙が止まらなくて。文字がたくさん滲んじゃってるけど、読めないことはないと思うから。って、急にこんなこと書いちゃうと、話がまとまらないね。要領悪くてごめん。


 まあ、とにかく、私はもうここにはいられないんだ。次に人間世界に行けるのはいつになるかな。一年後か、二年後か、十年後か。私の仕事を代わってくれる人が出てこないと、一生行けないかもしれない。


 覚えてる? 君の大切な人になるために、「君の前からいなくなったりしない」って言ったこと。約束、守れなくてごめん。


 ……何だか「ごめん」ばっかり書いてるね。ちゃんとした語彙力が欲しいよ。って、また脱線しちゃった。ごめん。







 もっと君と一緒に暮らしたかった。もっと君と一緒にご飯を食べたかった。もっと君と一緒にお話ししたかった。もっともっと君と一緒に将棋したかった。


 でも、これは、一生叶わないかもしれない私の我儘。だから、君に、私の我儘を二つだけ叶えてほしい。


 一つ目は、先輩ちゃんのこと。「リベンジ戦できなくてごめん」って伝えておいて。先輩ちゃんにも悪いことしちゃったね。自分が嫌になるよ。


 二つ目は、君のこと。欲張りすぎかもしれないけど、君には、私のことを忘れないでほしいんだ。君が私のことを覚えてくれているって思うだけで、私、いろいろ頑張れる気がするから。


 今まで、迷惑ばかりかけちゃってごめん。本当にごめん。


 大好き。







 PS あのキスは、私のファーストキスだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ