招待状
...クリスの黒い部分が出ます。
そしてキスシーンきます。苦手な方はブラウザバックを。
――アレから私はあの場所に入っていません。
もう...アレを見るのは怖いから...
「お嬢様、お手紙でございます。」
「...?」
誰からでしょう。
正直、今はお茶会にも出たくはありません。...もしかしたら、あの女性にあってしまうかもだから...
そして、メイドから渡された手紙を開けます。
――そして...
ぽとり。
人から貰ったものを落としてしまいました。
内容に、驚いたから。
アーレン侯爵家令嬢、エリザベス・アーレン嬢。
突然の手紙、失礼します。
このたび王宮でパーティーを開くことになりましたので、招待状を送らせていただきます。
クリス・ユール。
とても簡素な手紙。だけど、差出人は、皇后両陛下を差し置いてヒエラルキーのトップに君臨するお方...
第一王子、クリス・ユール殿下。
う、嘘...今は行きたくないのに...王宮から、しかもじきじきに招待されてしまったら...行くしかない...
って、ええ?!こ、今夜?!いくらなんでも急すぎないかしら?!
「...ベル。パーティーに行くわ。準備をして頂戴。」
「はい。かしこまりました。」
私の専属メイドのベルに声をかけます。
ベルは私の性格の数少ない理解者の一人なのです。
「お嬢様、ドレスのほうが決まりましたので、こちらに。」
「ええ。」
ベルに身をゆだねます。
そうすれば、すぐ終わるから。
「お嬢様。終わりました。」
「ありがとう。」
ベルが選んだドレスは淡い碧の色に銀をちりばめたようなドレス。
...いつも思うけど、衣装負けしてるのよね。
「...ベル、行くわよ。」
そういって、王宮へ向かう。
壁の花、壁の花...
☆
がたがたと揺れる馬車が止まる。
そして、扉が開く。
「お嬢様、お手を。」
「ええ。ありがとう。」
そして、騎士の手をとった。
手をとる瞬間、騎士がびくっと震え、ある一点を見つめる。
不思議に思い、私もそっちを見る。
「―――エリザベス・アーレン嬢。」
低い、聞きなれたテノールの声が聞こえる。
この声は...
ばっと声をかけられたほうを見る。
...違う...
そこには、王太子殿下がいました。
「...お初にお目にかかりいたします。アーレン侯爵家令嬢、エリザベス・アーレン。只今参上いたしました。王太子殿下に置かれましては...」
「...エリザベス嬢。そんな堅苦しい挨拶はしなくていい。」
そういい、クリス様は片膝をつきます。
...え?
「エリザベス嬢、どうか、あなたのエスコートをすることを許してはもらえないだろうか。」
......
「え?」
「招待状をじきじきに書いたのだ。私がエスコートをしなければ失礼になってしまう...だめだろうか。」
「え?は、はい......?」
よく分からないうちに返事をしてしまいました。
「ああ、そうか、ありがとう。...じゃあ、いこうか。」
にこ、とはにかむように微笑まれます。
――スール様...?
いや、そんなわけ...
そう思っている間にパーティー会場につきます。
入場した瞬間、ザワ、と周囲がざわめきます。
「ああ、そうだ、エリザベス嬢。」
「...?」
声をかけられて上を見上げます。
「そろそろダンスが始まる時間なんだ。...お相手願えるかい?」
...?それって、ファーストダンスを踊りましょう、ということでしょうか?
家族か、婚約者しかファーストダンスは踊らない...という暗黙の了解がパーティーには存在します。
こ、これは断らなければ...
「お言葉ですが殿下...」
「ありがとう、エリザベス嬢、じゃあ、いこうか。」
「え?え?」
言葉を遮られてなんか踊る流れになってしまってます?!
え?え?なんでしょう?
「あ、あの、殿下...」
「さあ、ダンスが始まるよ。エリザベス嬢?」
曲が流れ始めてあわててステップを始めます。
踊り始めたとたん、令嬢がたの悲鳴が...
どういう意図なのか、と上を見上げると、甘くとろけるような笑みがありました。
???!!!
は...破壊力がすごいです...
顔がほてってしまうのが分かります。
ばっと顔を背けます...が。
ソレをした瞬間、ぐ、と腰を引き寄せられます。
いつの間にか私と殿下の間はゼロに。
「だめだよ、エリザベス。余所見をしちゃ。」
耳元でささやくように言われます。
そして、まさかの...え、エリザベス...って...!
見ていないから分かりませんが、今の私の顔はとても赤いことでしょう。いや、確実に赤いです。
「あ、あの...で、でん...か...?」
「...っ。...ダメだよそんなかわいい顔をしては...」
あ...ダンスが終わりました。
や、やっと逃げられ―――!
「ああ、エリザベス、疲れてしまったのかい?...休憩所はこっちだよ。」
「え?!つ、疲れてなど...」
殿下はダンスが終わってもなお、腰から手を放すそぶりはありません。
そして私を休憩所に連れて行こうとします。
「...すまない。エリザベス嬢。私が無理をさせてしまったのだ。このまま君を放って置けない。」
そういって殿下は申し訳なさそうな顔をします。
私、なんて失礼なことを...殿下はただの親切で私のことを心配してくださっていたというのに...
「えっと...では...お願いいたします。」
「うん。こちらこそ。」
☆
「さあ、ついたよ。」
「ありがとうございます...」
――ガチャリ。
え?
ドアの鍵が閉まる音が聞こえて後ろを振り向く。
そこにいたのは――オリーブの髪をもつ、私の思い人。
「スール...さま?」
「うん。エリー。私だよ。」
テノールの音は私の耳に余韻を与えます。
でも、先ほどまでいたのは殿下で、この声は殿下で、でも、スール様で?
「あ、えっと...スール様、は......もしかして、ユール様なのですか?」
「...そうだよ。エリー。やっと見つけた。俺の甘い花蜜。」
私を見つめるスール様...いえ、殿下の瞳は黒く、深く渦巻いているようです。
「で、殿下...」
「...私は、嫌われてしまったのかな...」
「え?」
「ねぇ、エリーなんで俺の前からいなくなったの?他に好きな奴でもできた?俺がいやになった?嫌いになった?もう離れたい?
...でもね、だめだよ、エリー。君は俺のものだ。」
そういって、少しずつ近づいてきて...
私の頬に手を当てて...
「エリー?お前は俺のものだよな?」
そして、顔を近づけて...
唇が重なりました。
なかなか話してくれないキス。
私...いま、スール様と...?!
びっくりして口をあけると、その隙を見計らってすばやく舌が入り込んできました。
「ん...ふ...ぁ...」
いきができないです...
苦しい...
そんな私の気持ちを読みよったのか、唇が離れていきます。
「あ...」
気持ちのいいぬくもりが急になくなってしまい、少しだけ名残惜しそうにしてしまいました。
「で...んか...」
「ねぇエリー、お前は俺を煽るのが上手だな?」
そしてもう一度重なり合う唇。
...スール様には、愛するお方がいらっしゃるのではないの?
「ふぁ...ん...殿下......だめです...」
「...はぁ、なぁエリーなんで俺の名前を呼ばないんだ?」
「...殿下だからです...それより、も...っん!?」
さっきとは違う、噛み付くようなキス。
...もう、無理...
ずるずる、と床へへたり込んでしまう私。
「でんかには...愛する方が...いらっしゃるのではないのですか...?」
「...いるよ。」
目の前が暗くなるのを感じました。