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金目の召喚術師 ~猫狂いは二塔に挑む~  作者: 鼻血魔人
猫狂いは召喚術師への道を歩む
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10/50

「猫狂いは修行を重ねる」

 「僕は…猫がっ…すきだああああ!………ふああ、今日も良い朝だなぁ。」


 奇声としか言えないものをあげつつ、一日の目覚めを迎えるアルマーオ。


 「うーん、はあ。いつになったら猫に会えるのかなぁ。…いや、焦るな僕。実際に触ることが出来なかった前と違って、こっちでは努力すれば出会えるんだ。今、僕がやるべきは努力!修行!猫!!うぉぉおぉ猫ぉぉおお!ってあいたああっ」


 「アルマーオ……うるさいよ?」


 ベッドの上に立ち上がり絶叫する息子に、容赦なくシーガの塊をぶつける父親。笑顔でありつつプレッシャーを感じるのは相変わらずである。


 「うぅ…お父様ごめんなさい。…けど、三歳児にひどいのでは?」


 「ん?…朝の四時に大声で騒ぐ三歳児に、容赦する必要はあるのかな?」


 「ごめんなさい。」


 即座に頭を下げるアルマーオ。常識をわきまえてはいるのである。守れないときが多いだけで。


 「で、どうしてこんなに早く起きたんだい?」


 「はい!お父様は、シーガの扱いには体力が必要と言いましたよね?シーガの修行はお母様との約束で、お父様がいるときしか出来ないので、ランニングでもしようと思ったのです!」


 「んーむ。どこを走るんだい?」


 「まだ家の外には出ちゃいけないので、庭を走ろうかなって思ってます。」


 「どうして、そこまで努力をしようと思えるんだい?」


 「はい、私は、一刻でも早く、召喚魔法を会得し、コネカットと出会いたいのです。いえ、必ず!出会うのです。」


 一つ一つをはっきりと発音しながら、自らの意志をのせていく。それは、彼にとって至上命題。自らがこの世界に生まれた意味。彼は何もしていないが自然とシーガが渦巻いていく。強い意志にシーガが勝手に反応しているのである。


 「………そうか。…分かったよ。私もコネカット家当主として、最大限の支援をしよう。『我が意志に誓う』。アルマーオ、共に高みを目指そう。」


 「おとうさまっ!ありがとうございますっ!!」


 「おっとっと…。まずは、顔を洗おうか。」


 喜びのあまり、父親に飛び込んでいくアルマーオ。抱きとめたケンソーも笑顔になりつつ、息子に呼びかける。


 「はい!その後はシーガのしゅぎょーしましょうね!」


 「分かったよ。これからは朝の時間を使って鍛え上げていくから、覚悟してね。」


 「うぐっ…。もちろん!覚悟の上です!」



 これより親子は、早朝の修行を重ねることになる。そして、2年の月日が流れた。





 「よし、アルマーオ。次は球体を3つ同時に出すよ。三秒以内。用意、はい。3、2…。」


 「えぇ!?昨日ようやく1つをって数えちゃだめですよ!…ぬおおおぉお!おりゃあ!」


 まだ、早朝の靄がかかる庭に、二つの影。1つは年齢を感じさせない顔立ちの父親、ケンソーである。もう1つは、やや背が高くなり顔つきも大人びてきたような気がするが、まだまだ可愛らしい吊目ガチの男の子、アルマーオである。相変わらず胸にはコネカット家のメダルをかけているが、ローブを留める腰紐にも家紋のコネカットをアップリケにして付けている。母親のアイクウに学び、この2年で成長した裁縫の技術を、無駄に活かした結果である。


 「ぐぬぬぅ、で、できたあ!出来ましたよお父様!!」


 「はい、一秒超えたね。防がないと痛いよー、それ。」


 出来た喜びに顔を輝かせた息子に、容赦なくシーガの塊を三つ打ち出す父親。相変わらずスパルタである。


 「ひぃっ!? と、とりゃあああ!! って曲げるのはひきょ…あいたぁっ!」


 父親の三つの塊を、自分の三つの塊で打ち落とそうとする。2個は撃墜に成功するが、最後の1つは、大きく軌道を曲げて彼の額を直撃する。


 「…ふぅ。どうして額の堅力を『強化』しないんだい?もしくは、シーガの膜を展開するとかね。判断と行動が遅いよアルマーオ。」


 「うぅ。あの一瞬でどうやってそんな判断をするんですかぁ。」


 「普段からの準備が大切だね。とっさの防御法をいくつも用意しておくこと、無意識で最善を選べるように反復練習を繰り返すこと。それをしていれば出来る。たとえシーガの扱いを出来ずとも、頭の中でイメージをすることは出来るはずじゃないかな?」


 「…うぅぅ。」


 完膚なきまでの正論をぶつけられて、崩れ落ちるアルマーオ。まだまだ5歳児の感情に引きずられているようで、悔し涙を我慢することは出来ていない。


 (まあ、今のは判断が出来る理由をあまり説明はしてないんだけどね。気づかないとは、まだまだ頭の回転が鈍いかな?)


 「さあ、泣いている暇は無いよ。次は『変質』だ。赤に色を変えてみようか。」


 「うぐぅ…。はい、やってみます。…ふぅ。………いきますっ。ぬ…ぐぬぬぬぬうぅぅうぅ!」


 明らかに気乗りしない様子で返事をしたアルマーオ。なぜならまだ一度も『変質』を成功させたことがないからだ。ローブと腰紐とアップリケを揺らすほどのシーガが集まっているが、一向に手のひらのシーガは色を変える気配が無い。


 「『変質』は、色を変える想像をするんだ。透明な水に赤い絵の具を混ぜるように、無色のシーガに、炎の意志を混ぜ込んでいくんだ。」


 「ぬぅぅ!…ぬぅぅう!!…もえろぉ!もえろぉぉぉぉ!!」


 どれだけ力もうとも、手のひらのシーガの色は全く変わらない。その様子を、ただただ冷静に観察する父親。その目線は厳しく細められている。


 「……うん。アルマーオ、そこまでで良いよ。」


 「ぬぅ!…はぁはぁ。い、いいんですか?」


 「3歳の時はまだ可能性もあったんだけどね。ここまで修行を重ねて変化が見られないということは、アルマーオ、君には『変質』が向いていないということだよ。これに時間をかけるよりは『操作』と『強化』を鍛えていくほうが、君の才能を伸ばすことが出来るよ。」


 「で、でも!『変質』ができないと、召喚魔法を使えないんじゃあ…。」


 「ん?言ってなかったっけ?召喚魔法に用いるのは『操作』だけだよ。」


 「あ、じゃあいいです。『操作』の練習をしましょうお父様!」


 猫に出会えるか出会えないか、それだけが判断基準のアルマーオ。ぶれない男の子である。


 「今日からは『操作』で集めたシーガを更に『操作』することを目指すよ。シーガを集めた後に『固定』させないと魔法陣は作れない。まずは、さっきのように塊を作った後、それを引っ張って線にしてみよう。」


 シーガはに、『操作』によって一定量を集めると、状態が変化しやすくなるという特徴がある。水のような液体だったり、ゴムのよう弾力を持ったり、石のように固まったり、意志が強ければこういった変化を生み出すことができる。だが、それを為すには大抵ある程度の年月が必要であり、最低でも10歳以上にならないと不可能だといわれている。


 「んーと、こうかな?お父様できましたー!」


 「………。」


 そんな修行を、あっさりとクリアする息子に、父親は珍しく、驚きの表情のまま固まってしまった。


 「………本当に君は『操作』の才能があるね。よろしい、では修行を続けよう。今、アルマーオが成功したものは、『操作』の第二段階。『固定』と呼ばれるものなんだ。その『固定』を用いて回路を構築するのが、魔方陣系の術なんだよ。」


 「変質は才能0なんですけどね。固めるのは、赤ちゃんのころからやっていたからですかねぇ。陣を作るかー。んーと、こんな感じですかね?」


 シーガを集めながら、『固定』を重ねて、シーガの円を描いていくアルマーオ。


 「っ!? はぁっ!!」


 「う、うわぁ!?」


 アルマーオの行動を目撃したケンソーは、瞬間的に手を振りぬく。その動きに合わせて、シーガの槍が形成され、アルマーオの円を打ち砕く。


 「ふぅ…。ァアルマァァオォ!!」


 「ご、ごめんなさいお父さ  ぶびゃぁぁあああ!」


 いつもの笑顔を取り去り、いつも以上につりあがった目をしたケンソー。怒り狂っている。これまでに見たこともないくらいに怒っている。アッパー気味にシーガの塊が放たれ、アルマーオのあごが跳ね上げられる。


 「回路には様々な意味があるといったね。君が今適当に作った回路に、致死性の法則があったら、どうするつもりだったのかな?アルマーオ。」


 「ご、ごめんなさ ぎゃあああ!」


 倒れ伏したアルマーオに容赦なく折檻を加えるケンソー。厳しいように思えるが、回路の危険性を認識させる必要があるのだ。天性の才能を持つアルマーオは、普通に召喚魔法を学んでいく段階をすっ飛ばしている。

 普通は、シーガの『操作』を練習しながら、『回路』の意味を学び覚えていく。回路の意味を学び終えた後に、シーガの『操作』を覚えて『固定』へと入っていく。アルマーオはその全てを飛ばして、『回路』の意味もしらないままに作ることが出来てしまう。

 危険性は限りなく高い。こよなく子供を愛するケンソーは、たとえ子供から憎まれようと、命を失う危険性があることを許すつもりは無かった。


 「骨身に刻みなさいアルマーオ。シーガは薬でもあるが、毒にもなりえるんだ。有効性と危険性を認識した上で剣と為すんだ。扱い方を知らねば、その剣は、敵ではなく自分を貫くことになる。強く戒めなさい、己が不用意な行いが、近くにいるものを傷つけることになる。召喚魔法を身につけ、活かそうと思うのならば、『全てを自分の下におけ』、この父祖の言葉を忘れてはいけないよ。」


 「……はい、お父様。全てを把握した上で、使いこなす術を身に付けていこうと思います。」


 父の言葉のトーンに、自然と正座をするアルマーオ。語られたのは、召喚術師の父祖が残した心構えでありつつも、シーガを戦いに用いるものたちに共通する考えとなった言葉である。


 「…よし、じゃあまずは今日中に『回路』を5個は作れるようになろうか。」


 「…お父様、それって結構無茶なんじゃ?」


 「本気なら出来るよ。」


 「うぅ。…わかりましたぁ。」


 朝の日差しの中に、師弟でもある親子の姿が輝いている。アルマーオが、ただの猫好きから、真の召喚術師へと成長していく第一歩となるこの日を、天も祝福しているようである。




 「もうっ!また二人だけの世界作ってる!…いいなあ、私も一緒に入りたいなぁ。…がまんがまんっと。今日も美味しいって言わせるんだから!覚悟してなさい!」


 窓から二人の様子を見ていた母親のアイクウは、悔しげにほほを膨らませると、熱意を燃やして台所へと移動していった。鼻歌とスキップつきの上機嫌な様子で。



 こうして猫狂いは修行を重ねる、猫好きとしてではなく、召喚術師として猫と出会うために――。

ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークもありがとうございます。楽しんでももらえるよう、努力していきます。



悪天候のせいで、逆に投稿するじかんがとれました…。なぜだ。


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