表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

とにかく長いです。

書きかけ半分以下の状態で、既に10万字を超えています。

まったりと読んでください。




大の字に寝転んだ。


空が青かった。





‐1‐


今日も太陽が眩しい。

朝からこの具合では今日も気温は相当上がるだろう。


 「今日も暑くなるだろうな…」


深呼吸をして大きく伸びをしてみた。

むせ返るような夏の空気が体の中を駆け巡った。


 「自分の世界に入ってんなよ。 せっかく迎えに来てやったのに、学校に遅れちまうだろ。」


確かに、いつもならもう教室に入っている時間ではある。

けど、今までとこれからは違う。

一息ついたあと、俺はこう告げた。


 「もう朝練に行く必要もないんだし、ゆっくり行こうぜ。」




俺の名前は二宮夏樹ニノミヤ ナツキ。 そして迎えにきたこいつは倉島勇太クラシマ ユータ

同じ野球部で中学から6年間やってきた。



一昨日の土曜、俺たちの3度目の夏は終わった。

本当の夏の話ではなく、野球の話だが。

別に野球名門校に通っているわけでもないし、地区予選で2度勝てれば御の字。

今までの2年間は負けという結果も楽に受け入れられた。


 「やっぱり最後の夏は今までと違ったな… 先輩達が泣いていた理由がわかったよ。」


ユータは小さな声でそう言った。


 「ああ…」


今考えると青春のほとんどは野球だった。

毎日野球に明け暮れた。 甲子園という目標に届くことはありえないだろう、けど目指す目標はあった。

土曜の試合後は虚脱感に襲われた。

目標を失ってしまったとき、人はこういう気持ちになるんだろうなんて漠然と考えていた。

久しぶりに夜更かしをした。

日曜はほぼ一日ぼーっとしていた。

でも俺はこうして月曜になれば学校に向かう。

今までと変わらない毎日。



 「でも空は今までと変わりないし、道もいつもの道だ。」


思ったことをそのまま口に出してみた。


 「似合わないこと言ってんじゃないっての。」


だよな。




しばらく2人で歩いていると後ろから肩をぽんと叩かれた。


 「今日もあんたたち一緒なの? ひょっとして付き合ってるんじゃないのぉ?」


こんな軽口を叩くのはあいつしかいない。


 「うるせぇよ。 そんなわけないだろ。」と俺。


 「こいつはどーか知らんけど俺はまともなの。」とユータ。


 「まあいいわ。 おはよ。」


こいつは同じクラスの三浦咲ミウラ サキ。 俺の幼馴染でもあり、野球部のマネージャーでもある。

典型的な腐れ縁で、陳腐な漫画やゲームなら何かドラマが生まれたりするんだろう。

どうにも「こいつ」とはそんな関係になることはあまり考えられないけど。

容姿は人並み、なんてことを言うと烈火のごとく怒られるだろうな。 かわいいとは思う。

そんなことをそれとなく考えていると、ユータは焦ったようにこう言った。


 「遅刻したくないならもう行こうぜ。」





-2-



学校に着いたのは始業10分前。 ホームルームの時間を考えるとぎりぎりセーフ。

校舎に入った瞬間、日陰だからか玄関は外と違いひんやりとしていた。


 「おし! 結構危なかったな。 もたもたしてると置いてくぞ!」


そんなことを言いながらユータは早足で教室に向かっていった。

俺とサキも取り残されないよう早足で着いていった。


教室に入った瞬間、廊下とはまた違った空気になった。

喧騒もそうだが、大勢の人いきれで外同様かそれ以上に暑い。


 「おはよー!」


 「おはようー」


 「おっせーな、お前ら。」


誰ともなく挨拶を飛ばしあう。

そして、俺たちが入って数秒後、教室に5分前の予鈴が鳴り響いた。

喧騒の中にあった教室内も、予鈴が鳴り終わるまでには徐々に静まっていった。

俺は定位置の窓側にある自席に座った。


窓越しに眺める外も、やっぱり暑そうだった。




-3-


 「でーあるからしてー」


月曜の4時限目は古文である。

ただでさえ月曜はだるいというのに、1時限目から現国・化学・数学、そして古文というコンボだ。

だいたい古文なんてなぜ学ばなければいけないのだろう。

確かに世界史や日本史は知っていてもいいのだと思う。 社会に出てから役に立つこともあるだろう。

しかし古文はどう考えても役に立ちそうにない。

「若いうちは無駄なことを率先してやれ。」なんてどこかの偉い人が言っていたと思う。

古文もその1つなのだろう、と自分を納得させるしかない。


そしてこの暑さ。 寝ようとしても直射日光のこの席ではかなり厳しい。

ここ富良野は盆地のせいもあってか、道内においても夏は暑く冬は寒いという特徴を持っている。

この時間でこれなら、一番暑くなる2時頃には30度を超えるだろう。

寝ることを諦めて、ため息をつきながら教科書を覗き込んだ。

ふと右斜め前に座っている三浦菜実ミウラ ナミが視線に入った。

ナミとサキは双子の姉妹で、ナミが姉、サキが妹だ。

彼女たちを知らない人間が見たら、間違いなく区別がつかないだろう。 それほど似ている。

俺くらい付き合いが長いと大丈夫なはずだけど、それでもたまに間違えそうになる。

ただし性格は全くの別物で、野球部のマネージャをやっている活発な妹とは対照的に、美術部に入っている姉は「普段は」物静かだ。

当然、サキと同じく俺の幼馴染だった。


 「ここの訳は『人というものは〜』」


ダメだ… やっぱり授業なんて聞いていられない…

眠りの中に落ちていった。




-4-


 「ナツキ、飯行こう。」


聞き覚えのある太い声で起こされた。


 「今起きる。」


体全体が水場になったような、汗まみれの体を起こす。

時計を見るともう12時半少し前だった。

授業が終わってからも5分以上寝続けていたらしい。


 「さっさと食いに行かないと定食がなくなっちまう。」


こいつは金沢吉継カナザワ ヨシツグ。 俺やユータと同じ野球部兼クラスメートだ。

わがままな投手気質の俺や、いつも豪快な4番気質のユータと違い、ヨシツグは謙虚な2番セカンド気質な男だ。

口は悪いが、こうして俺が起きるのを待っていてくれるところがヨシツグらしい。


 「ユータはもう学食に行ったのか?」


いつもは一緒に学食に行くはずなのに、あたりを見ても見当たらない。


 「いや、あいつは今日から弁当だとさ。 屋上で食ってるからお前らも食い終わったら来ればいいってさ。」


 「そうか。 朝練がなくなったから作ってもらえるようになったのか。 羨ましいな。」


朝練があると弁当は7時前にはできていなければいけないわけで、さすがに母親に毎朝作ってもらうのも悪い。


 「羨ましがってる前に学食に行こうぜ。」


 「わかった。」




別段美味しいわけでもない定食を腹に入れ、屋上へと向かった。

屋上へと続く錆びた扉を開けると、そこには太陽が燦燦と輝いた空間が広がっていた。

とはいえ、そこは過ごしやすい場所のわけがなかった。

影がある裏へ行くと、そこにユータはいた。



 「これから何をすればいいんだろうな。」


他愛もない話を続けていると、ふいにヨシツグが言い出した。


 「何をするも何も、とりあえず野球以外の何かだな。」とユータ。


 「やっぱり勉強?」とヨシツグ。


考えてみた。

確かに、自分が何をしたいのか、なんて今までは考えてこなかった。

高校に入ってからは、「すること」の一番に野球を置いていた。

逆にいうと、それ以外は勉強も、遊びも、何もかもが自分の中では薄っぺらい。

これからはしばらく野球が無くなるんだもんな。 さてどうしよう…


 「なにぼーっとしてんだよ。 お前も考えろって。」


ユータの一言で現実に引き戻された。


 「わかってるよ。 今考えてんだろ。」


そう、考えている。


 「俺たちってこんなに無趣味だったんかなぁ。」とヨシツグは頭を抱えている。



しばらく3人で唸っていると、ユータがこう言った。


 「やりたいことなんてそう簡単には見つからないな。」


その通りだと思う。

野球に夢中だったおとといまでは考えたこともなかったが、やりたいことがあるというのは本当に幸せだと思う。



予鈴が鳴った。 結局、建設的な話はされることもなく、5時限目への参加を促されてしまった。

よっと立ち上がって俺は言った。


 「これから見つけていこうぜ。 みんなで。」


一瞬間をおいた後、ユータは言った。


 「かっこよくねーよ。」





-5-


5時間目は日本史で、6時間目は選択授業だった。

俺は美術を選んでしまったことを後悔していた。

小学校の頃まではそこそこ絵が上手だという認識が自分に対してあったが、中学の頃そして今もあの頃と大して変り映えの無い絵しか描けない。


これはダメだ。 自分で描いていても何の絵だか理解しづらい。

いっそのこと抽象画でも描こうかと思い、スケッチブックのページを破り捨てた。


ユータやヨシツグは音楽を受けている。 自分もそっちにすればよかったなと思う。

絵心の無い人間が美術の選択授業なんて受けるもんじゃないな、と改めて認識した。

3年のこの時期になってからでは遅いけど。



 「ナツキ君。」


いきなり呼ばれて少し驚いたが、声の主が誰かはわかっていた。


 「どうした? ナミ。」


首だけを横に向けてこう答えた。


 「あのさ、投球フォームを見せてくれない?」


 「は?」


あまりに唐突だったので驚いた。


 「なんで?」


 「モチーフにして描きたいの。 動きのある絵。」


動きのある絵、ねぇ。


 「それはわかったけど、ここで?」


 「うん。 できればスローモーションで。」


いつもは控えめだけど、絵のこととなると途端にナミは強引になる。

これまでも何度となくモチーフにさせられた。

とはいえ、普段は試合中や練習中の姿を勝手に書かれるだけなので、恥ずかしさはほとんど無い。

ただ、中学の時にあいつの絵がなんとかって北海道主催のコンクールに出展されたことがある。

その時のモチーフは俺。 タイトルは「青春の輝き」

さすがにあの時は恥ずかしかった。


しかし、他のクラスの生徒もいる美術室の中でピッチングフォームを披露?

さすがにそれはきつい。


 「ここでやるのは普通イヤだろう。 廊下とかならまだしも」


 「でも見ている瞬間からラフを描きたいの。 ダメ?」


こうなったらナミは引かない。


 「わかったよ。 やるけどスローはやらないぞ。」


 「ありがとう。 さっそくお願い。」


はぁ…と一回ため息をついたのち、立ち上がってスペースを確かめた後にボールを投げるふりをした。


 「ほれ、一回でいいだろ。 はい、参考になりましたなりました。」


そう言って座ろうとすると、ナミはうーんと唸りつつ俺を制止させてこう言った。


 「お願い。 投げた瞬間の状態で1分くらい止まっていてくれない?」


顔の前で手を合わせてこう言った。


 「お前なぁ、こういうときだけは自己主張が激しいよな。」


 「幼馴染の仲じゃない。 お願い。」


 「はいはい…」


わかりましたよ。 やればいいんでしょ。

仕方がないので、ボールをリリースし終わった瞬間と思しきポーズで止まった。

ナミの姿は見えないが、「うん」という声は聞こえた。


しかし一分は長い。 固まっているこの状況では時計など見ることもできない。

ナミは描くことにハマると何時間でも絵を描いている、とサキが言っていたのを思い出す。

段々と体が痛くなるのを誤魔化すために、ナミに話しかけてみた。


 「かっこよく描けよな!」


言ってみた。


 「本物通りにしか描けないよ。」


つれない答え。


 「だったら大丈夫だろう。」


攻め込んでみる。


 「うんうん。 そうねー そうかもねー」


流された。


 「ていうか、まだかよ。」


 「まだ30秒くらいだし、描き終わってない。」


マジかよ…


仕方が無いので右肩越しに校庭を眺めてみた。

ふと、2人の人影が学校に向かっているのが見えた。

様子を見るに、母親と生徒といった感じだろうか。 遠いのと無理な姿勢なのとであまりはっきりとは見えない。


 「はい、いいよ。」


ようやく解放された。

肩とひじ、そして腰と足も痛む。


 「お前なぁ、絶対1分以上やらせてただろ。」


ナミはニコッと微笑んでこう言った。


 「ありがとう。」


こっちが何を言ってもすんなり受け流す。

こういう奴だよな。


席に戻るとき、ふと気づいて校庭をもう一度見てみた。

もう人影は見えなかった。





-6-


ホームルームも終わり、教室には朝のような喧騒が戻ってきた。

4時近くになり少し涼しくなってきた教室だが、にぎやかになるとやはり少し温度が上がっている気がする。

いつもならここで部活の用意を始めるところだが、俺たちにはもう部活はない。

一瞬寂しさを感じたが、意外にもあまり気にならなくなっていた。

俺はユータに声をかけた。


 「これからどうするよ?」


 「どうすっかね。」


大して考えている風ではないので、たぶんこちらからの提案を待っているのだろう。


 「とりあえず家に帰ってからどっか行くか?」


 「そうすっかぁ。」


 「ヨシツグにも聞いてみよう。」


ヨシツグはまだ自席にいたので近寄っていった。


 「ヨシツグー 部活もないし、ぱーっと遊びに行かないか?」


少しオーバーアクション気味に腕を大きく開いて「ぱーっと」を表現してみる。


 「ああ、それでもいいけど…」


歯切れが悪い。


 「ん?」


 「図書室にでも行こうかなって。」


 「ああ、図書室涼しいもんな。 でも本でも読むのか?」


図書室は冷房が入っているだけに涼しい。 この学校で冷房が入っているのは図書室と職員室と保健室だけだ。

職員室には行きたくないし、保健室に行ってもやることはない。

だから図書室なのか。



 「いや、勉強するよ。」


 「…」


あまりに意外な答えが返ってきたので驚いた。

確かに期末試験ももうすぐだ。

そりゃ勉強もしなきゃいけない。

とはいえ…


 「今日くらい遊んだって神様はバチを当てたりしないと思うぜ?」とユータ。


 「確かにそうだけど、もう今から始めたって遅いくらいなんだからさ、」とヨシツグ。


 「受験… か。」


期末試験どうこうだけではなく、俺たちはもう世間一般で言う受験生なんだよな。

まあ3人ともに成績は校内で中の上以上は維持できているし、国公立は無理にしても札幌の私大ならどうとでもなるだろう。

でも、それでいいのかなとは俺も思っているし、たぶんこいつらも思っているだろう。

ほんの少し、現実を思い知らされた気分だった。



 「あんたたち、掃除の邪魔だからさっさとどいてよ!」


サキはモップでヨシツグの机をトントン叩きながらこう言った。


 「わかったよ。 どけるからちょっと待ってろって。」



やっぱり勉強しなきゃいけないよな…

まぐれでもいいから国公立の大学に行きたいし。

仕方が無い。


 「図書室で勉強するか…」


 「そうすっか…」


遊びに行くことを話したときのトーンとは明らかに別人のようなユータの声のトーンが、俺たち3人の気持ちを表していた。





-7-


 「くはー 疲れた。」


 「まだやり始めてから20分も経ってねーじゃねーか。」


 「そういうナツキだって新聞を読んでるだけだろ?」


 「あんたらうるさい。 集中できない。」


 「ユータ、涼しいからって寝るなよ。」


全体的に静かな図書室だったが、俺たちがいるこの一角だけは騒がしい。

まだ来てから20分も経っていないのに、既に一度、名前も知らない図書係の後輩に怒られてしまった。


3人で来ていたはずだったが、いつの間にかサキも合流して騒いでいる。


 「なんでお前まで図書室に来て勉強してるんだよ?」


当たり前の疑問を投げかけてみた。


 「あんたに関係ないでしょ。 図書室で勉強しちゃ悪いの?」とサキ。


 「らしくないから聞いてみただけだろ。」


 「ナツキにそれを言われたらおしまいだね!」


その通り、である。


 「落ち着いて勉強しようぜ。 もう図書係に怒られたくないだろ。」とヨシツグが言う。


そりゃ俺だってしょーもない理由で怒られたくない。


 「だから、俺は新聞読んでから始めるからいいって。」


 「あんたらが静かにしてくれれば、あたしは大人しく勉強するの!」


俺とサキはそう主張した。


 「とりあえず、だ。」


3人は一方を同時に見た。


 「ユータを叩き起こそう。 いびきがうるさい。」



結局30分も過ぎた頃には図書室を追い出されていた。

高校3年生にもなって、図書室から追い出されるってのもどうなんだろう…

まあ、明日からは静かに勉強してればいいか。


 「それでー 誰の家で続きをするのよ?」


サキは図書室を追い出されたのが不服なのか、不機嫌な様子で俺たちに聞いてきた。


 「別に一緒じゃなくてもいいだろ。 落ち着いて勉強するなら家に帰ってやればっ…」


ヨシツグが話している途中、サキが平手で背中を叩いた。


 「なにするんだよ?」


軽く怒った様子のヨシツグ。


 「あんたね、期末の範囲を一人で勉強してて自己完結できるの?」


 「…」


残念ながら、この中で一番成績が下なのがヨシツグだ。 俺とユータはそれより少し上。

更に残念なのは、この中で一番成績が良いのはサキだということだ。


 「そーいえばぁ、ヨシツグの部屋ってエアコンついてるよね?」


玄関前まで来たときに、品定めをするような目をしながらサキが言った。


 「な、なんで来たこともないのに知ってんだよ!」


そりゃ焦るわな。


 「悪い、俺がこいつに言った。」


と伝えた。


 「じゃあ帰宅後すぐにヨシツグ宅へ集合ねー 急げ急げ。」


さっきまで不機嫌だったのもなんの、急に元気になったサキを尻目に。


 「部屋を片付けなきゃな… めんどくせぇ…」


これからこいつの部屋に訪れる危機を考えると、さすがに同情する。

俺とユータが行っただけでも散々に汚れてしまうのに、今日はサキまで来るわけだ。

今日だけはあまり散らかさないように気を使ってやろうと思った。



ふと横を見ると、見慣れない制服を着た女の子とその母親らしき人とうちのクラス担任が来客用玄関のところで話していた。

あの制服は市内の高校ではないな。 さっき校庭を歩いていた2人だろうか?


 「ほーら、行くよ!」


少し気になったが、あれこれ考えている暇はなかった。



玄関から一歩外に出ると、朝と同じむせ返るような夏の空気を感じた。

少し傾きかけた太陽を尻目に、4人は歩き出した。





-8-


 「朝のホームルームを始めるぞー」


朝の教室に、いつもと同じ担任の声が響いた。


 「その前にと。 今日はお前らに紹介しなきゃいけない転校生がいる。」


クラスの空気が一瞬止まった。 その後微妙なざわめき。


 「瀬戸、入って来ていいぞ。」


担任が一度閉めたドアがガラッという音とともにもう一度開いた。

そこには、昨日職員玄関にいるのを見かけた女の子が立っていた。


 「それではみんなに自己紹介をしてくれないか。」


微妙なざわめきがピタッと止まった。



 「瀬戸春奈セト ハルナです。」


ペコっとお辞儀をする。


 「札幌の高校から編入してきました。」


少し声が緊張しているように聞こえた。


 「趣味は音楽鑑賞と映画鑑賞です。」


目は一点を見つめていた。


 「こんな時期の編入ですが、よろしくお願いします。」


もう一度ペコっとお辞儀をした。


教室内では拍手。


 「それじゃ席は一番後ろの窓際だから、そこに座ってくれ。」


俺の後ろの席だ。



俺は横を通る彼女から目を離して窓の外を眺めた。





今日も空は青かった。


このPrologueは「導入部分のための導入部分」のような位置づけです。

物語は始まっていないけれども、何かがこれから始まるという予感は持ってもらえると思います。

ゲームなんかだと、ここでオープニングムービーでもある感じですかね。


読んでいただいてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ