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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第一圏 辺獄の迷宮
1/106

前域

カーブが迫る。

息を吸いながらブレーキを引き込む。

ブレーキを残しながら旋回。

出口が見えたら息を吐きながらアクセルを開け、シートに体重を預けていく。


ようやく取れた時期はずれの夏休み。

俺はツーリング旅行に来ていた。

ただし明日には、帰りのフェリーに乗らなきゃならない。

会社で待っている仕事を思うと憂鬱になる。


俺が勤める会社は、ブラックとまではいかないが残業休出が多い。

客からの無理難題で、徹夜になることも時々ある。

そういえば、あの報告書の期限は明後日じゃなかったか?


仕事に気を取られていなかったら、避けられただろうか?

いや、そんなことはあるまい。

見通しの悪いカーブの先に道路の陥没が見え--次の瞬間、俺は物凄い衝撃を受けて、あっさり気を失った。


----


うあー

身体のあちこちが痛む。だが、幸い命はあるようだ。

手足の指も動くし、どうやら骨も折れてはいないみたいだ。

だが問題がある。


ここはどこだ?


遠く上の方、とても登れそうに無い彼方に、穴が見える。

おそらくアレが、俺が落ちた道路の陥没だ。

よく無事だったものだ。

そして俺が居る場所は、時代劇にでも出てきそうな石造りの場所だった。


目の前には愛車--というか、その残骸。

とほほ。


愛車の残骸の後ろは壁。

振り返ると、何処まで続いているか判らない通路。

誰が何のために、こんな通路を地下に造ったんだ?


シートバックからスマホを引きずり出す。

見た感じ壊れてないようだが、電源すら入らない。

困った。尤も、こんな場所じゃレッカーは呼べないだろう。


ガコン!


突然、右手から大きな音がした。

振り向くと壁には穴が開き、その奥から出てきたのは--ロボット!?

しかも2体。


重そうな外見にも関わらず、そのロボット達の動きは素早く、俺を取り囲むと幅広の剣を構えた。

隙があるかどうか判らんが、凄く手馴れた感じがした。


俺?

俺は壁に張り付き、ロボットに向けて手を突っ張り『来るな、来るな』と心の中で叫ぶだけ。

声も出やしない。


「お前、日本人か?」

ロボットが言った。

え?

ええ、ええ!

日本人、日本人ですとも!


相変わらず声も出ない俺の前で、ロボットは構えを解く。

もう一方のロボットが自分の顎に手をかけ、面甲を跳ね上げた。

「自分は陸上自衛隊、第16普通化連隊、細川忠利一曹です」

陸自?

ここ、自衛隊の基地か?


あ、益田浩二です。日本人です。

ようやく声が出るようになった。

気付けば、ロボットと思ったのは西洋甲冑を着た人間だった。

なぜ自衛隊員が甲冑?


後から何人かの人々が現れた。

皆、革の鎧やローブなど、ファンタジーな衣装を纏っている。

俺の周りに集まって、目を丸くして俺を見ている。

いや、2人だけ別の方向を見ていた。


1人は細川さんじゃない方のロボット--いや甲冑を着た人。この人は辺りを警戒していた。

もう1人は革鎧に兜を被っていて--


どう見ても彼は死んでいた。

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