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魔刃少女血風録  作者: アワユキ
四章『魔城顕現』
13/17

二幕

 島の端、桟橋の様に張り出した足場へゆっくりと着地する。ティターニアから降り改めて周囲を見回すと、城までの道……というより島全体が巨大な庭園の様になっている。本来は魔法界の女王の住処だったというだけあり、美しく整備された庭園だ。敷き詰められた白い石材がいくつもの道を作り、様々な樹木や草花がその周りを彩っている。手入れが怠られたせいか、それらは少し伸び気味の様子ではあるが。

 

「――いるな」

「いるわね、大量に」


 レーダーに頼らずとも分かる。島中から魔物の魔力を感じる。多すぎて正確な数は掴めそうもない。


「さっき言った通り、目指すは城の地下クー」

「消耗を抑える為に、なるべく戦闘は避けながら進みましょうですミン」

「そうね」

「とは言っても、大人しく通らせてくれるとは思えんがな」


 障壁に思い切り穴を開けて侵入したのだ。向こうも当然、こちらに気付いているだろう。

 兎に角、前進しないことには始まらない。弓狩達は城へ向かって伸びている大きな道を進み始めた。


「うわっ……」

「これは……」


 少し進んだ所で思わず二人が立ち止まった。視線の先には、大量の魔物がひしめき合っている。小鬼に大鬼、獣に虫と種々雑多な魔物が混じり合った集団だ。その数は数十ではきかない。少なくとも三桁はいるだろう。折角の美しい庭園の景観が台無しだ。


「分かってたけど、嫌になるくらいいるわね…」

「二人共、頑張ってくださいミン」

「クー達は避難してるクー」


 そう言うと妖精達はいそいそと少女達の懐へ潜り込んだ。

 魔物達がこちらの姿を認め、唸り声を上げながらじわじわと距離を詰めて来ている。大軍を前に、弓狩が大きく息を吸い込んだ。


「死にたくなければ道を空けろおぉぉ!!」


 びりびりと大気が震える程の大音声。一瞬、魔物達の動きが止まった。


「ぐおおぉ!」

「ガアァ!」


 勿論魔物に言葉の意味が分かる筈もない。突然の大声を威嚇と取ったのか、魔物達も雄叫びで返しながら更に速度を上げて進軍してくる。


「逆効果じゃないの!」

「止むを得ん、押し通る!」

「待ちなさい、まずは私が突破口を開くわ」


 刀を抜き、突撃しようとする弓狩をリリカが制した。


「宿れ、火精と風精! モード『サラマンダー&シルフ』!」


 ティターニアの翅が赤と緑に輝き、魔力が高まっていく。


「猛る炎よ渦巻く風よ! 行っけー! 『ファイアストーム』!!」


 砲口から、混ざり合った炎と風の魔力が一気に噴き出した。燃え盛る炎が風の力で勢いを増し、火炎の竜巻となって魔物の群れに襲い掛かる。


「ギャアアアァ!」

「ギィィ!」


 竜巻は魔物達を次々と飲み込み、焼き尽くしていく。炎が通った後、群れの中央部分に穴が空いた。


「よし、行くわよ!」

「ああ!」


 包囲の穴目掛け、二人が駆け出す。強烈な炎に竦んで動きを止めていた魔物達が気を取り直し、群れを突破しようとする二人に向かって動き出した。


「リリカは私の後ろへ付け!」

「グアァ!」


 足の速い四足獣型の魔物が群れから飛び出してくる。


「奮ッ!」

「ゴッ……」


 勢い良く突進してきたものの獣は呆気無く首を落とされ、そのまま地へ転がり息絶えた。


「オオオ!」

「ゴオオォ!」


 だが、一体を葬っても次から次へと敵が迫って来る。


「ええい、鬱陶しい!」


 棍棒を振りかぶる小鬼を縦に両断し、大鬼の剛腕を躱しその腕を斬り飛ばす。その間も足は止めない。もし止まれば物量であっという間に押し潰されそうだ。


「退けえ! 寄らば斬るぞ!!」


 そう叫んでも魔物は怯まず襲ってくる。

 しかし、弓狩には傷一つ付けられない。鎧の力で強化された速さで全ての攻撃を躱し、強化された膂力で振るわれる刃が次々と魔物を切り伏せていく。

 刃を振るう度魔物の首が飛び、四肢が落ち、紫の血煙と魔物の死の証である青白い炎が辺りを覆っていく。


「抜けたあ! けど……!」


 どうにか囲いは突破したが、まだ敵は追って来る。リリカの最初の一撃と道中の弓狩の攻撃で大分減ってはいるが、かなりの数が残っている。


「弓狩! ちょっとだけあいつら足止めして!」

「応!」


 弓狩は即座に踵を返し、追って来る相手目掛けて逆に突撃する。


「征ッ!」


 突然の反転に驚く獣人型の魔物の首を跳ね飛ばす。そのまま手当たり次第に近づいてくる魔物を斬って斬って斬りまくる。


「宿れ、水精と土精! モード『ウンディーネ&ノーム』!」


 その隙にリリカが呪文の詠唱を始める。翅の輝きが青と黄に変わり、再び大筒の内に魔力が集まっていく。


「溢れる水よ怒れる大地よ! 『グランドフラッド』!!」


 目の前の地面に向けて、膨れ上がった水と土の魔力を撃ち込んだ。膨大な水流と共に岩盤が石畳ごと捲れ上がり、土石流となって魔物達へと押し寄せる。

 魔法の発動を背中で感じ取った弓狩は後ろへ大きく跳躍してこれを飛び越えた。弓狩へ襲い掛かろうとしていた魔物達は迫る波濤と土塊に為す術なく流され、押し潰されていく。


「よし! 走って!」

「うむ!」


 群れは既に半壊状態だ。今のうちに、と二人は城へと向けて走り出した。


----------


 しばらく走ると、一際大きな広場に出た。何か式典にでも使うのだろうか、石畳が大きく円形に広がり先程までの庭園にあるよりも更に立派な樹木がその周囲を囲んでいる。


「はあ……はあ……ようやく終わりかしら?」


 広場を抜けた先には巨大な城門が見える。城はもうすぐそこだ。


「……? 敵が追って来ないぞ?」


 僅かに残った魔物が二人を追って来ていた筈だが、この広場に足を踏み入れると何故か追手の動きが止まった。何かに怯える様に、遠巻きにこちらを伺っている。


 突然、二人の頭上を巨大な影が過ぎった。


「ひゃあ!?」

「何だ!?」


 その直後、凄まじい衝撃が大地を揺らした。石畳が吹き飛び、土煙が上がる。影の主が空から地面へと降り立ったのだ。


「な……」

「こいつは……!」


 大きい。これまで遭遇したどの魔物よりも。

 その姿は島までの道中にいたワイバーンに似ているが、大きさが桁違いだ。全長二十メートルはありそうな巨大な爬虫類。燃える様な真紅の鱗に包まれた体に逞しい四肢と太い尾を備え、背には一対の大きな翼が生えている。その頭からは捩くれた四本の角が伸び、爛々と輝く黄玉の様な瞳が弓狩達を見下ろしている。


「ド、『ドラゴン』クー!」


 弓狩達は知る由も無いが、このドラゴンこそが四天王最後にして最強の一体である。追って来た魔物達は皆、ドラゴンを恐れてこの広場に近づくのを躊躇していたのだ。 


「ガアアアアァァ!!!」

「うっ……」


 物理的な圧力すら伴った巨竜の咆哮が響き渡る。凄まじく強大な魔力がドラゴンの全身から殺気となって立ち上り、少女達を圧倒する。体だけでなく、魔力も桁外れに大きい。


「……相手にとって不足なし! 参る!」


 相手の気迫に気圧されまいと、声を上げながら弓狩が突撃する。


「ちょっと、そんな考えなしに!」


 弓狩を押し潰そうと、ドラゴンが巨大な前足を振り下ろす。その巨体による攻撃はただ打ち付けるだけでも人間にとっては致命的な一撃となるだろう。

 だが、大きさ故に狙いは甘い。弓狩は横へ軽く跳び、前足の一撃を回避した。


「疾ッ!」


 地面に打ち下ろされた前足へ、刃を突き立てる。鋭い突きが巨竜の分厚い鱗を貫いた。

 しかし、如何せん大きさが違いすぎる。巨大なドラゴンにとっては刀の一刺しなど針で突かれた程度の物だろう。

 ドラゴンは声すら上げず、ぎろりと足元の弓狩を睨め付けた。


「くっ……」


 殺気を感じ、弓狩は刃を抜いて一先ず距離を取る。


「モード『ノーム』! 『ランサーショット』!」


 退避する弓狩を援護しようと、リリカが岩槍の魔法を放った。

 岩槍は巨竜の胸部に命中するも、体表を僅かに傷付ける程度でやはりほとんど効いていない。


「タミン! こいつ弱点とかは!?」

「無いですミン」

「な……」

「巨大な体に見合った圧倒的な力と強靭な生命力がドラゴンの特徴ですミン。弱点と呼べる様な物は無いですミンよ。勿論生き物なので頭や心臓を潰せば倒せる筈ですけどミン」


 岩槍の攻撃が気に障ったのか、ドラゴンがリリカの方へと注意を向けた。大きく息を吸い込み、巨竜の胸部が膨らんでいく。


「あっ……リリちゃん! 防御ですミン! ユカリンもこっちへ!」

「えっ、防御?」


 タミンに呼ばれて、弓狩がリリカの傍へと戻って来る。

 息を吸うのに合わせて、ドラゴンの魔力が徐々に高まっていく。


「何だ?」

「えっと、『グレートウォール』!」


 リリカが魔法を発動すると地中から岩の壁がせり上がり、巨竜と少女達の間を遮った。

 防御の魔法の完成とほぼ同時に、ドラゴンが大きく口を開き思い切り息を吐き出した。


「ひいぃぃ!!」

「うおっ!?」


 本物の竜の息吹(ドラゴンブレス)。リリカの炎の魔法の遥か上を行く凄まじい火炎の奔流がドラゴンの口から吐き出された。


「あ、熱っ!」


 岩の壁が二人を炎から守っているが、それでもかなりの熱が伝わってくる。


 数秒間に及ぶ火炎の放射が終わった。役目を終えたかの様に、岩壁がばらばらと崩れ去る。炎の通り道にあった石畳は黒く焼け焦げ、二人の後方にあった木々は悉く消し炭と化している。


「……こんな風に、炎を吐き出して攻撃してくる事もあるのでくれぐれも注意してくださいミン」

「ほんとにとんでもないバケモノね……」

「あの図体だ。肉迫すれば火は吹けまい。リリカ、援護頼むぞ!」


 近寄れば巨大な四肢や爪が恐ろしいが、距離を取って炎の息に晒される方が余程危険だろう。弓狩がドラゴンに向かって駆け出す。


「まあ、結局やるしかないものね……。宿れ、水精と風精! モード『ウンディーネ&シルフ』!」


 ティターニアの翅が青と緑に輝き、魔力が内に集まっていく。

 ドラゴンは接近してくる弓狩を迎え撃とうと、前足を横に大きく薙ぎ払う。

 弓狩は走る勢いのまま前方に跳躍し、足の一撃を飛び越えながら巨竜の懐へと入り込んだ。


「冷たき氷よ渦巻く風よ!」 


 砲口の前に三日月型の氷の刃が形成され、それが激しい風によって高速で回転する。


「切り裂け! 『アイスムーン』!!」


 呪文の完成と共に、回転する刃が勢い良く撃ち出された。


「グオオォ!」


 弓狩に気を取られていた巨竜の肩口に、深々と氷の刃が突き刺さる。ドラゴンが思わず苦痛の呻き声を上げ、意識が弓狩から逸れた。

 巨竜が苦痛に耐えている隙に、弓狩はその脚を伝って巨体を上へと登っていく。


「どれだけ体が頑丈だろうと、ここなら……!」


 肩から上に向かって大きく跳ぶ。狙うは――


「りゃああぁ!!!」

「ギャアアアァァ!!!」


 落下の勢いを乗せ、巨竜の眼球へと思い切り刃を突き入れた。


「うわっ!」


 流石にこれには耐えかねたか、ドラゴンが叫び声を上げながら首を振り回す。その勢いに目に刺さった刃が抜け、振り落とされてしまう。


「どうだ!?」

「効いてる! と、思うけど……」


 ドラゴンは傷を受けた肩と目から血を流しながらも、しっかりと大地に立ってこちらを睨みつけている。この程度ではまだまだその命には届かない様だ。


「グオオオオォォ!!」

「ひゃあ!?」


 巨竜の口から怒りの咆哮が上がった。そのまま翼を大きく広げドラゴンが空へと舞い上がる。


「空に逃げるなんてずるいわよ!」

「ずるいとかそういう問題か?」


 二人の頭上に滞空しながら、ドラゴンが大きく息を吸い込み始めた。


「……! まずい!」

「え!? ちょっと!」


 弓狩がリリカを肩に担ぎあげ、ドラゴンから離れようと全力疾走する。その間にも吸気と共に巨竜の魔力が高まっていく。


 射程圏内から離れようと走る弓狩の背に向かって、巨竜の口から再び炎の息吹が放出される。

 弓狩は強化された身体能力によって人間離れした速さで走るが、燃え盛る業火が怒涛の勢いで迫ってくる。ちりちりと、うなじに焦げつく様な熱を感じる。


「モ、モード『ウンディーネ』! 『タイダルウェーブ』!」


 抱えられた不安定な状態から、リリカが水流の魔法を発動する。

 炎の波と水流がぶつかり合い、激しく水蒸気を上げた。竜の炎を完全に打ち消すには程遠いが、それでも逃げるだけの猶予は稼ぐ事が出来た。


「ふう……危ないところだったな」


 仕留め損ねたと見るや、ドラゴンがこちらへ向かってゆっくりと滑空してくる。炎から逃げきっても一息つく暇も無い。


「リリカ、飛べ! このままでは狙い撃ちにされるだけだ!」

「ええ! モード『シルフ』! 『フライングソーサレス』!」


 二人を乗せて、風を纏ったティターニアが飛び上がる。


「あの炎、連射は出来ないらしいな」

「それがせめてもの救いね……」


 どうやらドラゴンが炎を吐くには数秒の溜めを要するらしい。もしも間髪入れずにあの凄まじい炎に晒されれば、防御や回避もままならなかっただろう。


「ガアアアァ!!」

「な、なんかすごい怒ってるわね」

「まあ、あれだけ手傷を負わされればな」


 空へ上がった二人を、咆哮を上げながら巨竜が追って来る。巨体とは思えない速度だ。凄まじい圧力――魔力による圧もそうだが、こちらに敵意を持った巨大な怪物に追われるというのは、生物の根源的な恐怖を掻き立てる光景だ。


「リリカ、反転してあいつの上につけてくれ」

「いいけど、くれぐれも気を付けなさいよ?」

「分かっている」


 急速に反転し、ドラゴンと向かい合う。改めて正面から対峙すると、かなりの迫力だ。互いの距離が一気に縮まっていく。

 長い首がうねり、少女達を噛み砕こうと巨大な顎が迫る。


「ひぃぃ!」


 急上昇して何とか回避し、そのまま巨竜の背中側へと抜ける。その瞬間、弓狩がティターニアから飛び降りた。

 着地と同時にドラゴンの背へと刃を突き刺し、取り付く。


「駆け抜けろ、雲間に咲く白光……魔導剣! 『雷華』!!」

「グアアアァァ!!!」


 即座に雷撃の魔導剣を発動する。刺さった刃を通して、魔力の雷を巨竜の体内に注ぎ込む。強烈な電撃が内からドラゴンの体を破壊していく。

 ドラゴンの全身からぶすぶすと煙が上がり、その巨体から力が抜けていく。

 力を失った体が失速し、落下を始めた。


「うっ……く!」


 弓狩は必死に柄にしがみつき、耐える。


「ぐっ!」


 突然落下が止まり、ドラゴンの体が再び浮力を得た。その衝撃で弓狩は背中から振り落とされてしまう。どうやらドラゴンは一時的に意識を失っただけだった様だ。今は意識を取り戻し、空中に留まっている。


「捕まりなさい! 弓狩!」


 すぐにリリカが合流し、弓狩を乗せて空へと舞い上がる。


「あれでも生きているとは……」

「大した生命力ね、全く!」


 相当な痛手を負わせた筈だが、ドラゴンは依然として健在だ。


「また来るぞ!」


 ドラゴンがまたもや炎の息吹の前兆行動を見せた。


「あーもう! あれ嫌!」


 急いで遠ざかる二人の背に向かって、燃え盛る業火が吐き出される。


 だが高速で飛び回る少女達を捉える事は出来ず、炎はただ空を赤く染め上げた。


「同じ手をもう一回……は警戒されるわよね」


 次の一手はどうするべきか、ドラゴンから逃げながら思案する。


「……なあ、久三郎。あいつの炎も魔法なのか?」

「え? まあそうクーね。呼吸と一緒に魔力を体内で練り上げて、一気に解放する魔法の一種クー」

「ふむ……以前リリカが自分の魔法で怪我した事があったな?」

「何よ急に……あの時はまだ慣れてなかったのよ!」

「なら、こういうのはどうだ?」


----------


「確かに、成功すれば流石のドラゴンでも耐えられないと思いますミン」

「でも危なすぎるクー!」

「下手に長引かせたらその方が危ないだろう。あいつの攻撃はかすめただけでも致命傷になりそうだ」

「ま、無茶なのはいつもの事よね……やるわよ!」


 急上昇をかけ上空の障壁すれすれまで上がり、ドラゴンの頭上を取る。


「後はタイミングだが……」

「逃げ回ってればそのうちチャンスも来るでしょ」


 今度は一気に急降下。更に不規則な軌道で右へ左へ飛び回り、相手を翻弄する。

 こちらの狙いを見極めようと、ドラゴンが宙で静止し二人の様子を窺う。

 それを見た弓狩達は再び急上昇して相手の直上へと移動する。

 

「来る!」


 こちらの様子を見ていたドラゴンが息を吸い込み始めた。


「頼むわよ!」

「お前もな!」


 二人は真っ直ぐドラゴンに向かって急降下していく。巨竜の体内で炎の魔力が渦巻き始める。

 弓狩だけが先に飛び出し、炎の息吹を放とうとするドラゴンの口先に取り付いた。


「宿れ、水精と火精! モード『ウンディーネ&サラマンダー』!」


 一方リリカは空中で飛行の魔法を解除し、落下しながら呪文の詠唱を始めた。ティターニアに水と火の魔力が籠められていく。


「うおおおぉぉ!!」


 弓狩がドラゴンの下顎に足を、上顎に手をかけ渾身の力で無理矢理に口を開かせる。

 弓狩に続いて巨竜の顔目掛けて落ちてきたリリカが、その開いた口にティターニアの砲口をねじ込んだ。


「固き氷よ爆ぜる炎よ! 『アイスグレネード』!!」


 奇妙な砲弾――荒れ狂う炎を氷の殻に閉じ込めた弾がドラゴンの口腔の奥に向かって撃ち込まれた。


「よし、離れろ!」

「モード『シルフ』! 『フライングソーサレス』!」


 狙いが成功した事を確認し、二人は急いでドラゴンから離れる。

 巨竜の腹まで達した砲弾の殻が内側からの圧力に耐えかねて破裂し、炎の魔力が一気に炸裂する。狭い体内で爆発した炎はドラゴン自身が内に蓄え放とうとしていた魔力までをも励起させ、更に強烈な爆炎となって巨竜の内部で暴れ回った。

 空にくぐもった爆発音が響き、一瞬ドラゴンの腹が大きく膨らむ。その口から、僅かに火炎が噴き上がった。

 口から黒煙を吐き出しながら、巨竜が落ちる。受け身も取らずに石畳に叩きつけられたその巨体が、青白い炎に包まれていく。


「終わったか」

「はあ……ひやひやしたわ……」


 やがてその全身が灰となり、塵と消えた。これまでになく巨大な敵を何とか退け、安堵の溜息を漏らす。


「さて……」

「いよいよ本丸だな」


 二人の視線の先には魔法城の巨大な城門がある。最早その道を邪魔する者は居ない。


----------


 最後の戦いの幕が上がる。果たして、魔刃は魔王に届くか否か。

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