【三十日目】
【三十日目】
今日も晴れ。雲は多いけれど、鮮やかな青色は陰りそうもない常夏日和。
収穫できる山菜・果物も種類が変化してきた。
この島に流れ着いた当初は秋が旬の食べ物を美味しく頂けたのだが、秋旬の食材は徐々に減って味が落ちて、今は夏の食材が収穫の時期に入り始めた。
夏山菜の枝葉が大きくなり、夏果物の花が咲く。
う~む。季節感が狂いそうだけど、ここはそういう場所だと割り切ろう。
夏に収穫できる食材として今俺が一番期待を寄せているのはバナナだ。世界の各地で愛食されているバナナ。地域によっては主食としても親しまれているバナナ。一度にとれる量も多く、栄養価も高いバナナ。
そのバナナの花が咲いて、一部の房はすでに実り始めている。最終的にどれだけの量が収穫できるのか分からんが、なかなか素敵そうな未来が待っていた。
――――って、おいおい。俺この島に馴染み過ぎじゃね? そろそろ遭難していることを忘れかけてないかな? もしかして危惧していた『愉快期』に足を踏み入れている? やばいぞこれは、このままだと俺はファンタジーな島で一生を過ごしてしまいそうだ!
あぶない、あぶない。
俺はまだ冷静だ。いつか日本に帰る日が来ることを忘れていない。
その目標を早く達成するためにも、一日でも早く旅立てるだけの準備をしなければ!
食料集めに保存食作りはもちろんのこと、頑丈なロープや登山用のピッケルに軽量な寝袋があると旅路も随分と楽になるので欲しいところだ。無い物ねだりだけどー。まあ、鉈があるだけで充分か。本格的な登山をするわけじゃないし。もし目の前に切り立った崖がそびえ立つなら迂回すればいい。
やっぱり問題はエディさんか。
彼女をどうするのかが、目下最大の悩みだろう。
置いてはいけないよなぁ、俺と同じく漂流者みたいだし。サバイバルなんてしたこともないインドア派の人みたいだし。試しに一度、一緒に果物狩りをしに山の中に入ったんだけど、エディさんはものの二十分で生まれたばかりの小鹿のように足をぷるぷると震わせてギブアップ。踏破距離は、平均して五度の登り勾配の坂道を六百メートルほど。いくら獣道とはいえ、インドア派にもほどがあり過ぎる。雀の涙ほどにしか体力がない!
最低限、果物がなる場所まで歩く体力がなければ、置いて行くにしても着いて来てもらうにしても安心できない。
ここはエディさんの体力作りが最優先か。
この島で生きていく以上、致しがたない。
エディさん。貴女は体力が無さすぎる。そんな貧弱もやしっ子では過酷な世界では生きていけないんだ。俺だってこんなことはしたくない。だがこれは貴女の為なんだ。今日から俺は心に鬼を宿す。いくら貴女に罵られ、蔑まれ、草葉の陰で泣くことになろうと、俺は決して貴女を甘やかさない。洞窟に引き籠る生活は今日で終わりだ。これからはなるべく一緒に外に出てもらおう!
時間を置いて、それなりに体力を回復させたエディさんをもう一度果物狩りに付き合ってもらったが、前途多難だ。




