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【二十九日目】

【二十九日目】

 エディさん、マジ天才だなと思う今日この頃。

 この女性ひと、俺とは違う人種だわ。マジぱねぇ。


 エディさんは、それなりに流暢な日本語を使いました。

 先々日の俺はウザ嫌われるぐらいにエディさんを喋り倒したので、昨日は一言も喋る機会が訪れなかったんだけど、今日の朝、流暢な日本語で「今日の朝御飯、なに食べたい?」と聞かれて超・吃驚。そんな吃驚する俺を見て「なに? 文句ある?」と、すこし使いどころが間違っているけれど流暢な日本語を続けてさらに吃驚。「リクエストない、作らないから」と、接続詞が抜けていることでようやく俺は安堵の息を吐けたものだ。

 それにしてもマジぱねぇ。

 俺、それしか言えてなくね?

 マジぱないッスわ。

 俺のお喋りだけで日本語を覚えたとすればマジぱねぇ。

 エディさんの言葉を俺は「リヴァ」(肯定を意味する単語)と、「ア・リヴァ」(否定を意味する単語)しか覚えていないと言えば、その凄さが比較できるだろうか。

 文章を正確な意味で把握する理解力。

 会話と単語を正確に記憶する記憶力。

 それらを組み合わせる構想力。

 何一つとして俺が敵うものなどなかった。

 エディさん、マジぱねぇ!


 そんなエディさんの天才っぷりと、たゆまぬ努力(おそらく努力をしたはずだ、そう信じたい)のおかげで、楽しいお喋りができるようになったのだが、俺は先々日犯した失敗を繰り返さぬように気を付けて、言葉少なめにお喋りをします。

 色々なお話をした。

 どうやらエディさんは俺の直感通りに俺の知らない世界出身のようで、すこしだけファンタジー色のある中世ヨーロッパのような世界で生きていたようだ。多種多様の亜人(狼男やリザードマンなどか? 向こうの言葉なのでふんわりとしか理解できない)はいるけれども、魔法は無いファンタジー世界。話を聞いた限りだと亜人の存在を抜けばこちらの中世ヨーロッパ時代とそう変わらない世界なのかもしれない。ヨーロッパの歴史はよく知らんけど。

 そしてエディさんはそちら世界で、亜人たちの著者や言葉を翻訳する言語学者をしていたそうだ。

 ああ、なるほど、それで。

 それでエディさんがこんなにも早く日本語を解する理由に納得がいった。前々からそういう職業だったのか。――――いやだがしかし待て、それでも言語をマスターするのが速すぎる。やっぱり天才ではないか! と、再度エディさんを尊敬ぇー。

 そんな天才言語学者のエディさんは、大雨の中、トカゲ車なるもので山岳地帯を移動中、崖崩れが起きて崖下の川に落ちて溺れたそうだ。

 そして気が付いたらこの島にいたと、そう言った。


 はあはあ、なるほどそうですか。

 エディさんに一つ質問。そんな他者を威圧するようなキツイ顔付きで翻訳業も兼任しようとしたのですか?

 え? 「顔は、関係ない」、「生まれまま、は、しかたがない」、ですか?

 わかりました。では、翻訳業のお仕事の成果はどれほどのモノでしたか?

 「殺す」

 酷いですエディさん。会話のキャッチボールをしてください。


 と、なかなか有益なお喋りができた。

 有益ついでに、エディさんとの会話で、俺は一つの仮説を立てる。

この島は異世界を繋ぐ中継地点のようなものなのかな?

 前々からそう思っていたんだけど、エディさんと話してますますそう思った根拠の無い勘。

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 だがもし俺のその勘が当たっていれば、今後違う世界の道具や生物、そして人間が流れ着くのかもしれない。

 ただでさえ大変な毎日だからこれ以上の厄介事は増えないでくれよと願いつつも、心の奥底では未知なるものに興味津々の俺がいた。



 エディさんとのお喋りが楽しすぎて、いつの間にか一日が終わっていた。

 ……あれ? 最近日が短い?

 気のせいか?






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