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39  解呪

 次代の聖女が見つかったので、約一ヶ月後のお披露目式に再び会う事を約束してリュカ達はマグナシルヴァに戻った。勿論馬車ではなく、来た時と同様の本来王族しか使えない筈の転移門でだ。

 彩夏はそれまでに神殿でこれから暮らしていくルーチェアットの事を学び、今回のように魔力がいきなり暴発するような事のないように、力の制御も学ぶのだとか。

 それでもパワフルで、面倒見の良い今代の聖女がいれば大丈夫だろうと思った。

 面白い事にこちらでは五十年もの差があるのに、彼女がいた時代はリュカ達と二十年ほどしか変わらないらしい。結構知っているものが多くて情報交換もした。

 彩夏も知っているものの話が出来て嬉しそうだったし、なによりも今代の大聖女マリコ様が楽しそうだった。具合があまり良くないと聞いていたのに、とてもそうは思えないほどパワフルで、人を惹きつける力を持っている人だった。

 きっと、彩夏もそんな大聖女になるだろう。リュカはそう思った。




 無事にマグナシルヴァに戻ってきて、フィリウスはそのまま国王との謁見。リュカは最初の日に通されたコンコルディア家の応接室にガスパルや護衛達と一緒に向かい、コンコルディア家からの迎えが来るまではそこで待つ事になる。


「リュカ様のお陰で無事に聖女様が見つかって良かったです。それに今回の事で特別に願いを申し出る事が出来ました。全てリュカ様のお陰です」


 そう言って床に片膝をつき、深く頭を下げる副宰相のガスパルにリュカは「皆様が直接ルーチェアットに行かれるように手を尽くしてくださったからです」と言った。

 そうなのだ。以前フィリウスが言っていたように召喚国は新しい聖女に願いを申し出る事が出来る。ほとんどの召喚国は慣例のように国の豊穣や安寧を願っていただくらしいが、マグナシルヴァの国王はフィリウスの解呪を願うと決めていたらしく、フィリウス自身もそれを受け入れた。

 けれど今回次代の聖女が無事に戻ってきた事でフィリウス自身が聖女に願いを申し出る事が出来る事になった。


「私、沢山勉強して、大聖女になったら必ずお兄さんの旦那様の呪いを解いて見せますから!」


 彩夏と一緒に今代の大聖女マリコも頷いていた。

 再召喚のために殺されてしまうかもしれないという危機だったけれど、終わってみれば彩夏の力だけでなく、マリコの力も借りる事が出来そうな形になった。


「…………良かった」

「はい。本当にありがとうございました。閣下を信じていただいてありがとうございました」

「…………フィルが必ず守るって言ってくれたから、大丈夫って思ったんですよ」



 

 まずは大聖女の交代式があって、その後に新しい大聖女のお披露目の式。さらにその後、彼女は王家に嫁ぐのだ。ちなみに門をくぐる時に次代の国王となる人も挨拶に来た。

 二十八歳の精悍な顔立ちの青年だった。

 彩夏もまんざらではない表情だったからうまくいくといいなと思った。


  -◇-◇-◇-


 そうして再びルーチェアットに行く準備と、フィリウスとリュカ自身の結婚式の準備をしていると時間はあっという間に過ぎていく。

 リュカ達は普通であればルーチェアットの者達しか参列出来ない交代式に招かれていた。

 三日後のお披露目式の時には召喚国の国王が願いを申し出る事になったので、その前に次代の大聖女を救ったお礼という事で特別に個人の願いを受けるという事になったからだ。それも内密にだ。

 交代式自体には出席を出来なかったけれど、式が終わった後、大聖女になった彩夏と大聖女の任を終えたマリコが揃ってフィリウスとリュカが待つ部屋にやってきた。


「無事に引継ぎが出来ました。良い世界であるように私も頑張ります。でもまずは解呪ですね」

「アヤカ様、それはこの者から願い出る事ですよ」

「あ、そうでした。すみません」


 相変わらずの彩夏にリュカは小さく笑った。一緒にこの世界に来たのが彼女で良かったと思う。


「では、マグナシルヴァ宰相、フィリウス・エヴァン・コンコルディア様、汝の願いを申されよ」

「ありがとうごじゃいます。わたくちはごねんまえおうじょうにもちこまれたじゅぐでときもどしののりょいをかけられまちた。なんとかおさえこみはちたもにょの、このようなかりゃだになりまちた。どうぞだいせいじょさまのいのりで、わたくちののりょいをといていただきたく、おねがいもうちあげましゅ」


 フィリウスの言葉に彩夏が頷いた。その後ろでマリコも頷いた。


「がんばります!」


 大きくそう言って彼女は手にしていた杖を高く振り、何か不思議な調べを口にしはじめた。大聖女に伝わる魔法なのかもしれないなと思っていると調べはやがてキラキラと輝く光の糸になって、フィリウスの身体を包み込んでいく。


(すごい……綺麗……)


 調べは続き、光は輝く日の光から、やがてうっすらと黒い筋を滲ませると、一気にそれを飲み込んで、ひときわ輝き、眩しい光がおさまった後、そこには新月の夜に会った人が立っていた。





だいぶ進んでまいりました。


あともう少しです。

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