1-50 ファームの人々
間もなく合流した二人と一緒に、ファームで例の鴨と遊んでいた美美達。
「もうすぐ各ファームの代表達が集まってきますから。
それまでゆっくりしてください」
いかにもファームっぽい感じの広場っぽい場所で、細い丸木の骨組で出来たベンチに座り、のんびりしていた。
「しかし、やられたわねー。
さすがのあたしもインターホンとは思いつかなかったわ。
あれは力づくじゃ絶対に開かないしねえ」
「あちこちで絵になったドアを見たけど、インターホンなんてついていたかしら。
記憶にないわー」
二人とも唸っていた。
今回のケースは、自分達が間抜けだっただけで運営は特に関係ないし。
強いて言うなら、絵になったインターホンが厭らしいくらいのものか。
「ねー、ユーラ。
この子だけ、なんでここにいるの?」
美美は抱っこして、鴨をもふもふしながら尋ねる。
「さあ。
それに、あの妙な出入り口は何なんでしょうね」
「あれ? ここの人にもわかんないんだ」
「わかりません」
「ユーラ、他の人が着き始めたから、こっち通してもいい?」
「いいよ。
入り口で椅子を渡してあげてね」
お客さんにキャンピングチェアみたいな椅子を渡して好きなところに陣取ってもらうらしい。
いかにも農場らしくフリーダムな感じだ。
適当に座っておいて、大勢来たら詰めるのだろう。
「おう、久し振りだね、ユーラ」
「やあ、マルタ」
そして、こそっと美美が訊いた。
「マルタさんとは」
「ああ、紹介しよう。
このC地区最大の農場を運営しているクラン、青空農場のクラン・マスターだ。
そっちでいえば、勇者レッドアントに相当する人だよ。
マルタ、この人はA地区から来た食料関係の担当者だ。
向こうじゃ自治会を作っているらしい。
こっちへ来る際に狩場を開放してきてくれた。
野牛や羊の御土産もあるよ」
「おお、そいつは素敵なお話だね。
お恥ずかしい話だが、本来このような状況で食糧生産を担うべき我々が困窮している有様なのだ。
是非、ご助力願いたい」
「こんにちは。
A地区自治会の食料調達委員会の委員長で作手美美です。
ミミって呼んでください。
プレイヤー五万人の胃袋というのがちょっと厳しいのですが、各種お肉と野草やキノコだけで生き延びるのなら、ギリギリいけそうです。
ここでは、その先を狙いたいですが」
「それは心強い。
うちなんかは、元々農業協同組合的な感じに役が決まっておりましてな。
それが今では自治会みたいなもんでしょうか」
「うちは雑多なジョブが全部集合していて、また冒険者なども多いですし、とりあえず混乱を避ける目的で勇者がまとめる形でなんとか」
「それは賢明な事だ。
勇者は運営が人格を認めた者なのだからな。
彼らに任せておけば安心だ。
こちらへの被害も最小限で済むだろう」
「A地区絡みで何かあったら言ってください。
別働で、冒険者ギルドのナンバーワンとツーのクランも動けますから」
「まあ、こんな情勢なんだ。
何もないでは済むまいよ。
うちも、当分は今の警戒態勢を続けさせていただこうと思っておるよ」
「そうしてください。
復活した農場で何かあったらプレイヤーが全員が困りますので」
「復活? 何か当てでもあるのかね」
「それを今からお話させていただきたいと思ってるんです」
「なるほど。
集まるのに、もう少しかかりそうだ。
何せ、このC地区ときたら、このオーディの中でも一際のんびりした連中が多くてな」
「そうみたいですねえ。
まったりしていていいです。
あたしも本職は料理人なんですけど、今は御覧の通りですわ」
美美は、その見事なまでのガンスリンガーぶりを披露して気がついた。
今から大勢の人の前で話をする格好ではない。
美美の容姿から、必ずしも威圧的とは言い難い格好ではあったのだが、さすがに戦闘職の格好のままではなんだった。
美美は一瞬にして、普段着に換装した。
今日は空色ワンピに白のカーディガン、そして鍔付きのお嬢様帽子であった。
そして、それから二十分ほどくらいしてユーラから指示があった。
「まだ八割くらいの集まりだと思うけど、全部待っていたら日が暮れちゃうし、来るといいつつ来ないかもしれない連中だから」
「うわあ、緩いですねー。
じゃあ始めますか」
そして、広場のプチステージに用意された簡易な壇上に立った美美は、情報吸い上げのための集会に臨むのであった。




