立ちはだかる障害
行くべき道が定まった俺達は、目的の場所に向かって一気に駆け出していく。
「どうやら、本当にこの先には敵が待ち構えているみたいだな……!!」
俺が見つめる先、そこには兵士の話に出ていた6体ほどの“セクサロイド”達だけではなく、その背後に通路を塞ぐように立ちはだかる巨躯の“スパンキング・ゴーレム”というモンスターが存在していた。
セクサロイドは高レベルなだけあり、こけしオートマタよりも精巧かつ上質なメタリック美女の姿をした女性型のモンスターだった。
瞳を発光させるという人間とは思えないビジュアルだが、それでも口元に怪しげな笑みを浮かべながら、しなを作ってこちらを誘惑してくる――!!
「ッ!?クッ……機械的な存在のくせに、なんという色っぽさなんだ!!」
「ピ、ピ、ピ~~~ッス!!」
奴等のそんな誘惑姿を目にした瞬間、疾走状態から急停止して慌ててセクサロイド達の姿を直視しないように自身の両手で視界を塞ぐ俺とヒサヒデ。
その妖艶さは、機械系に対して抵抗感のあるヒサヒデですら反応するほどであり、俺に関しても、もしもセクサロイド達がこれよりももっと下品かつ直情的にガニ股ヘコヘコ媚売りダンスで俺達を誘惑してきていたら、目にした瞬間に堕とされていたとしても不思議ではなかった。
互いに相性がハマらなかった事で、セクサロイド達による所見殺しの誘惑を防ぐことが出来たが、この体制のままでは奴等をマトモに攻撃する事が出来ない。
『こんなところで膠着状態に陥るのか……!!』と、絶望的な気持ちになりかけていたそのときだった。
「アンタ等、本当に何してんの!!……もう良いから、さっさと全員地面に伏せてて!!」
その声を聞いた瞬間、意図を察知した俺達は全員は慌てて言われた通り、今度は頭部を覆いながら地面へと伏せる。
それと同時に、ビュン!と【野衾・極】を用いたらしいオボロが勢いよく飛び立ち、衝撃音とともに次々とセクサロイド達を一掃していく……。
「もう、アイツ遺跡の保護とかお構いなしだな……!!」
「ピ、ピ、ピ~ス……」
「……ウム、まぁこれも仕方なかろう……それに遺跡の破壊ぶりで言えば、あの“淫蕩を打ち砕く者”とやらの方が被害はデカかったのだからな……」
確かにそこらへんはラプラプ王の言う通りかもしれない。
そうこう言っているうちにセクサロイド達を始末したオボロはそのままの勢いで、“スパンキングゴーレム”という巨躯のモンスターの胴体へと勢いよく、激突していく――!!
「コイツで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
そう力強く叫ぶオボロ。
だが、敵は50レベルかつ見かけ通り防御力は結構高かったらしく、オボロの最強スキルともいえる【野衾・極】を受けたにも関わらず、胴体をへこませながらもまだ体力が残っていた。
「いった~~~!!コイツ、マジで硬すぎ!」
ぶつかってすぐに、頭を押さえながら何とか地面に着地するオボロ。
俺達が心配して駆け寄ろうとした――その瞬間である!!
突如、スパンキング・ゴーレムはその鈍重そうな外見とは裏腹に、俊敏な動きでオボロの胴体を左手で掴んだかと思うと、すぐさま右手を天高く掲げていく。
その姿を見て、顔面蒼白になるオボロ。
それは、オボロ同様にそれを目にした俺達も同様だった。
――もしも、あんな極大の腕で殴りつけられでもしたら、一撃で全てが終わる……!!
そんな思考と光景が脳裏に思い描かれた俺は、駆け出しながら叫びだしていた。
「ッ!?――オボロォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
自身のもとに駆け寄ってきた俺の姿を見ながら、オボロが泣きそうな表情で俺へと答える。
「リューキッ!!――ヤダ、ヤダッ!!……アタシ、こんなところで終わりたくなんてないッ……!!」
そんなオボロの姿を見て、俺の奥底から熱い感情が込みあがってくるのを実感する。
これによって、“BE-POP”が急速に回復し始めていくが、自身を身体強化するための【凌辱に見せかけた純愛劇】を使うにはまだ足りず、応急処置ともいえる自分自身への"パリピ発勁"をするには、眼前の危機に対して圧倒的に時間が間に合わない。
あのとき、“淫蕩を打ち砕く者”戦でここまで消耗し過ぎなければ……!!
そう考えたところで、今となっては全てが後の祭りに過ぎない。
背後でラプラプ王やヒサヒデが――いや、オボロが何かを叫んでいるが、それすらも耳に入らない。
今の俺の意識は、ただひたすら、眼前でオボロへと勢いよく振り下ろされた魔物の右手のみに向けられていた。
“スパンキング・ゴーレム”の右手が、超速でオボロへと迫る――!!
「……ッ!?オボロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
――通路内に、俺の叫びが響き渡っていく。




