迷宮探索
現在俺達は【獣性探知】を使用出来るオボロを筆頭に、俺、ヒサヒデ、ラプラプ王の順に並びながら遺跡内を警戒しながら進んでいた。
外からでは分からなかったが、遺跡内は思ったよりも広大であり、先に進むにつれて道が枝分かれし始めていた。
時間短縮を考えると、メンバーは分散した方が良いのかもしれないが、分断されればそれだけ弱ったヒサヒデや一番レベルが低い俺が敵に襲われるリスクがある……。
そう判断したラプラプ王は、自身の“固有転技”で生み出した部下の兵士達を、俺達が行かない方の道へと向かわせるつもりのようだった。
「我が招き寄せた戦士たちの残影は、12体。我等が向かう先の道が正しいわけではないだろうが、これで何か重要なものが見つかったときに気づける確率は高くなり、そのために行動する時間も一気に短縮できるようになるはずだ……!!」
そんなラプラプ王の発言と頼もしい能力を前に、オォ……ッ!!と小声かつ音が出ないように、パチパチと手を叩いてラプラプ王を称賛する俺達。
そんな喜ぶ俺達に対して、「だが」とラプラプ王は告げる。
「“固有転技”で生み出したとはいえ、我の兵士達は我と感覚を共有しているわけではない。そのため、オボロの【獣性探知】で魔物の居場所が分かる我と違って、部下達は魔物と接触する可能性がどうしても高くなってしまうかもしれない」
確かに俺達がラプラプ王と初めて遭遇して戦闘になったとき、ラプラプ王は部下達に自分で指示を出していたもんな。
バツが悪そうに「……それでも、最大限に警戒はさせるつもりではあるが……」と口にするラプラプ王に、オボロがなんもない事のように答える。
「流石に、アタシの【獣性探知】もここら辺一帯を網羅するほどじゃないから、流石にラプラプ王の部下皆に知らせることは出来ないと思う……。そういう意味では、ラプラプ王のおかげで大分助かってるし、大丈夫だよ!」
「そうそう!それに、最初にこの遺跡に入る前の門番をオボロが倒してから時間も経ってるし、倒された奴等の仲間にも情報が行きわたっていたとしてもおかしくない。これまでは何とか行けたけど、ここからはヒサヒデの事もあることだし、魔物との遭遇は完全に避けられない、くらいの判断で俺は良いと思う」
犬神 秋人を救出する前に、乱戦で消耗するようなことは確かに避けたいが、エルフや獣人のような異種族を相手に本領を発揮するヒサヒデが、肝心な時にダウンしていては本末転倒に違いない。
そう考えれば、ここまで無傷で済んできただけ幸運という事で、そろそろヒサヒデを弱らせているような“ヴァイブス・ハウンド”を見つけ次第倒すくらいの認識で、魔物達と戦闘をする事も覚悟すべきなのかもしれない。
言葉にせずとも、そんな俺達の気迫を感じ取ったのかヒサヒデも「……ピ、ピ、ピ~ス……!!」と意気込みながらラプラプ王へと答える。
そんな俺達に、ラプラプ王も笑みを浮かべながら答える。
「ウム、お前達の心意気はよく分かった!……それでは、我の部下達共々、我等でこの遺跡内をくまなく探索するとしよう!」
そうして俺達は、そこから少し話し合いをした結果、
・俺達山賊団もラプラプ王が生み出した部下達も、敵との戦闘は極力避けつつも、“ヴァイブス・ハウンド”は見つけ次第出来る限り倒すようにする。
・ラプラプ王の部下達には動きやすさを優先してもらうため、とてつもなく珍しそうなもの以外は、アイテムなどを見つけたとしても拾わないように指示する。
・『敵の攻撃などで消滅させられるかもしれない』といった場合なども考慮して、レアアイテムを入手していたとしても構わないので、その場から離脱して俺達山賊団に合流する事を優先させる。(その部下が向かった先が、犬神 秋人が囚われている“正解”のルートである可能性があるため)
ラプラプ王は生み出した十二の兵士達に、これらの事を伝えてから、俺達とは違うルートへと彼らを派遣した。
彼らがラプラプ王の指示のもと、それぞれに去っていくのを見送ってから、俺達もいよいよ先へ進むことにした。
「うん、今のところ【獣性探知】も反応していないみたいだし、この先には魔物も何もいないみたい!……それじゃあ、行っくよ~~~!!」
「あいよー」
「ウム!その心意気や良し!!」
「ピ、ピ、ピ~~~ッス♡」
オボロの声に、それぞれの返事で答える俺達。
そうして、オボロが元気よく一歩を踏み出した――そのときだった。
突如、彼女の足元からカチッという音がする。
ギ、ギ、ギ……という音がしそうな感じでこちらに振り返ったオボロに対して、俺達はなんともいえない表情で全員首を横に振る。
さっきまでの勢いはどこへやら、早くもこの場は沈痛ともいえる沈黙が支配しきっていた……。




