戦い3
デニスのいる場所に辿り着くと、デニスは顔を引きつらせながら倒れた生徒を見ていた。
生徒の方を見れば、何とか息はしているみたいだが、大変な状態になっていた。
『やり過ぎだろ』
思わず、デニスに言う。
『手加減したつもりだったんですけど、思ったより力が強くなっていて』
顔を青くしてデニスが言う。
慌ててアリサが治療をはじめる、この感じだと話を聞き出すのは難しいだろう。
『この生徒は、何者だったんだろうか』
ポツリと私は疑問を吐く。
『私、見た事ありますよ一年生だったと思いますが』
答えが帰って来るとは思っていなかったがアリサが答えてくれた。
『て事は、今日潜り込んだというわけじゃないんだな』
アリサの治療を待っていると、教員達がやってくる。
事情を話すと魔力を封じる効果を持つ縄で生徒を縛ってくれた、これで生徒が目を覚ましても問題はないだろう。
生徒の事もあり若干警戒はしたが、特に問題もなく事は進んだ。
教員に話を聞いてみると、生徒はやはり学園の生徒であり、名前はナダルというらしい、特にこれといって問題のない平凡な生徒だという話しだ。
教員達と話をしていると、離れた学園の敷地の方から大きな音が聞こえた。
まさか、あれで終わりじゃなかったのか
『向こうにも魔物がでたんじゃ』
アリサも同じ事を思ったみたいで、音がした方を見て言った。
『その可能性は高いな、行ってみようか、アリサはもう少し治療を続けていてくれ』
『いえ、もう大体治したので大丈夫です、気がつくのは時間がかかるかもしれませんが、だから私も行きます』
『もう治したのか、大したものだな』
私は感嘆の声をあげる。
『そんな事ないですよ』
アリサが少しだけ顔を赤らめて、謙遜をする。
『たしか向こうの校舎には、今日はアニーがいたはずだ魔物がでても、余程大丈夫そうだが』
アニーが今日は足りない教員の代わりに、一年の授業の補佐に行ってるのを思いだす。
『いくらアニー先輩でも一人では危険ですよ、先輩は僕達みたいに学園長の訓練を受けたわけじゃないんだし』
デニスが心配そうに声を出した。
『そうか、デニスは知らないからなアニーの本気の力を』
『本気の力ですか......』
デニスが、不可解だと言わんばかりの顔をする。
その時、急に底冷えする様な冷気が辺りを包む。
何だ! と周りにいる人が騒めく。
『アニーだ、アニーが本気を出している』
私だけが知っている答えを皆に告げた。
『これがアニー先輩の魔法の影響だっていうんですか』
弾ける様にデニスが私に問いかける。
『そうだ』
と、一言で私は返す。
『そんなありえませんよ、少なくても2キロは離れてますよ、その距離を魔法の余波だけで届かすなんて』
デニス信じられないとばかりにいう、他の人も同意見みたいだ。
普通は皆そう思うだろう、唯の学生がこれ程の魔法が扱えると誰が思うだろうか、いや、学生にかきらずともだ。
『アニーは特別なんだよ』
驚く皆んなに、ただ一言だけ返事をする。
特別、又は天才、そういうしかない程の才能なのだ、努力とか、環境とか、訓練の内容、指導者の良し悪し、ライバルの存在、人の能力を高める要素は数あり、ただ才能がある、なしで簡単に判断できるものではないと私は思っているけど、アニーだけは別、その他全てがどうでもよく思えるほど、圧倒的な才能なのだ。
私の言葉に驚き、皆んなは声を失っている。
そして、私は皆んなとは別の意味で驚いていた。
アニーが本気を出している、それ程の相手なのか
心配がよぎる、それともう一つ心配が
『でも、デニスの言う通りだな、危険はゼロじゃない
魔物だけならいいが、ナダルって生徒の仲間が他にいるかもしれないからな』
生徒からの不意打ち、いくらアニーでも絶対に大丈夫とは言えないのではないかと不安になる。
『確かにそうですね、すいません僕がちゃんと手加減出来ていれば、聞き出せたのに』
申し訳なさそな顔をでデニスがする
『いや、いいんだよ、意識があっても直ぐに聞き出すのは難しかったろう』
それから、音のした方に全員で向かう事にした、足の早いデニスには先行して向かってもらった、




