戦い2
氷の鋭い刃が私を貫こうとしている。
その時、無表情の生徒の顔が変わる、何かに驚いた様に。
風を切る音が聞こえ、凄まじい速度の何かが私の頭上を通り過ぎ氷が砕ける。
生徒自身は何とか避けてかわしたようだ。
ザっと土を踏みしめる音が聞こえ、横に人影をたつ。
『大丈夫ですか、ロイ先輩』
視線を向けると、そこにいたのはデニスだった、心配そうにこちらを見ている。
私は顔を伏せた、情け無い泣き顔を見られたくなかった、けれど、デニスが助けにきてくれた喜びでまた涙がでそうにいる。
『大丈夫なわけはないですよね、もうすぐアニーが来てくれます、それまで頑張ってください』
私が顔を伏せていると、デニスがそう言ってくる、実際に背中の傷の痛みは酷く、意識は朦朧としている
『なぜロイ先輩を刺した』
デニスが、私を刺した生徒を睨みつけ問いただす。
相変わらず、生徒は何も答えない、ただ少しだけ不愉快そうに顔を歪めた。
その間に、サーペントがまた襲いかかってくる。
サーペントの牙がデニスに迫る、その時デニスの体がブレ、破裂音とともにサーペントの頭部が弾け飛んだ。
生徒がさらに不愉快な表情を強める、そして、生徒に変化が起きた。
プラチナブランドの髪が、暗く染まっていく、同じ様に瞳も暗く、やがて暗く深い紫色に染まり切る。
生徒が氷の魔法を構築する、先程見せた魔法より、巨大かつ鋭い、構築する速度も速い。
生徒がデニスに向け魔法を放つ。
『死ね』
初めて生徒が言葉を発した。
『避けろ』
私はデニスに向け叫けぶ、背中の傷が痛んだ。
デニスは避けようしない、避ければ私に当たるからだろう。
衝撃音が響く
後に残ったのは、砕けた氷と無傷のデニスだった。
デニスが、拳で全て叩き落としたみたいだ。
『無茶苦茶な奴だな、お前は』
私は、呆れた様に言う。
『そんな事はないですよ、それよりあいつの髪色は』
デニスが、生徒に視線を向ける。
『闇の一族か、何でこんなところに』
私は呟く様に言う。
闇の一族、強力な魔力と強靭な肉体を持つと呼ばれる一族だ、その髪と瞳は、魔力の質、量を問わず、皆等しく紫色をしている、その性格は凶暴で呪われた一族と呼ばれ、既に滅ぼされたと伝えられている一族だ。
『滅んだんじゃなかったのか』
デニスが言う。
『滅んではいない』
デニスの言葉に生徒が反応する、その顔には怒りが見て取れた。
生徒が、また氷の魔法を放ってくる。
けれど、デニスが全て叩き落としてしまう。
『ロイ先輩、遅くなりました』
後ろから声をかけられる、振り返ればアリサがそこにいた。
『今、治します』
アリサが、私の背に手を翳すと、暖かい感触とともに、痛みが和らぐ。
コトリと音がし、短剣が落ちた事に気付く、見てみれば思った通りの短剣だ、ナイフよりはやや長いくらい。
『もう、大丈夫ですよ』
もう、終わったのか、あまりの速さに驚き、恐る恐る背中に手を回せば、血で濡れてはいるが確かに傷口は塞がっていた、立ち上がってみて体を軽く動かしてみるが何も問題なかった。
『ありがとう、それにしても凄いな、こんな簡単に治すとは』
アリサの治癒魔法に驚いた、以前は時間をかけても、なかなか深い傷は直せずにいたのに、ここまで進歩していたとはな。
『はい、学園長のおかげですね、でも実際の傷を治したのは初めてなので、私もびっくりしましたよ』
そう言ってアリサは笑う。
そういえば、アリサの訓練は特殊な粘土を使っていて、実際に治したりはしてなかったな。
回復した私は立ち上がり、敵を見据える。
ゴーレムがデニスに近付き、拳を振り上げ殴りつける、デニスは簡単に避けると、懐に入り込み体を回転させ後ろ回し蹴りをゴーレムの胴体に打ち込んだ、
激しい轟音と共に巨体のゴーレムが吹き飛ぶ。
ゴーレムの吹き飛んだ影から、巨大な氷塊がデニス向かってくる、敵の生徒がタイミングを計り攻撃していたのだ。
デニスは気付くのが遅れ防御が間に合いそうもない。
私は火炎を放ち氷塊を押し止め溶かした、もちろんデニスに火炎が当たらない様調整して。
今の私は部分的に火炎を当たらない様、制御できる。
吹き飛んだゴーレムを見れば、胴体の部分に亀裂が奔っている、その亀裂に炎を潜り込ませ内側から熱すると、亀裂は全体に広がり最後にはゴーレムは砕けちった。
ゴーレムが砕けるのを見ると、生徒は舌打ちをし魔法を放ってくる。
【氷嵐】
膨大な数の氷柱が私達に降り注ぐ、生徒はそのまま私達に背を向けると走り出した。
逃げるつもりか
『逃がすか』
デニスが追いすがるが、氷柱が邪魔で上手く進めない、一つ一つの氷柱は大した事ないが、数が多くて邪魔になる。
私は、逃げる生徒に向け、単純な火炎を最大火力で放った、火炎が氷柱を突き抜け生徒にせまるが、当たる前に氷がそれを防いだ。
けれど本当の狙いは成功した。
『いけ、デニス』
私の言葉に、ハイと頷くとデニスは私が火炎で作った氷柱の隙間を、疾風の如く駆け抜けた。
遠く前方で、デニスが生徒を吹き飛ばしたのが見える。
本気で殴ってはいないだろう、生身の人間がデニスの拳をまともに受ければ、例え闇の一族とはいえ、弾け飛んでしまう。
デニスが生徒を抑え拘束している、その場所に私達も向かった。




