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覚醒 16~18

(16)

 こうしていつも通りの日常が過ぎていくよ。僕はふと思う。どん

な嫌なコトでも慣れてしまえば、それは日常になってしまうんだ。

日常とは当たり前のコト。あたり前に異論をはさむ者は無いってコ

ト。逆に異論をはさむ者は、日常に慣れ親しんだ者にしてみたら、

破壊者、テロリストなんだってコト。


 そう、そうなんだよ。いつだったかな。図書館で昔の歴史の本を

見つけて読んだコトがある。その中に『戦争』という章があったん

だけどさ。これが本当かどうかはこの僕だって半信半疑だけれど、

昔は人間同士が殺し合いをしていたコトがあるんだって。同じ種の

生き物が、互いにその命を奪い合う。ちょっと考えると有りそうも

無い話だけど、その本によるとそういうコトがあったんだって。


 でね、僕は思ったんだ。その異常とも言える状況であってもね、

それが日常になっていたのなら、それはそれであり得ない話じゃな

いなってね。

 人間の一番の長所であり、かつ短所であるのが『慣れ』だもの。

きっと戦争という状況であっても、人は食事をし、眠り、時には愛

を語り合いもしたんだろう。戦争下という日常の中でさ。


 かくして僕にとってのいつも通りの時間って奴がいつも通りに流

れて行き、給食の時間になった。

 僕はこの給食っていう奴が大っ嫌いだ。そりゃ、授業中だって、

僅か十分の休み時間にだって嫌なコトはいっぱいあるよ。でも、そ

れよりも、僕にはこの給食の時間が切ないんだ。


「おい、今日のメニューはスパゲッティ・ミートソース、デザート

にプリンがつくんだよな?」

「そうそう、オレなんかさ、メニューをもらった時から楽しみで、

楽しみで」

 教室のあちらこちらから、楽しそうなみんなの声が聞こえる。


(17)

 僕らの学校では、月の終わりに、次の月の給食メニューが一覧表

データになってメールされる。みんなはそれを見て、あ、あの日は

あれが出るから楽しみだな。ああ、あの日はあれだからちょっと嫌

だな、なんて会話を手楽しむんだよ。中でも人気のメニューが今日

のスパゲッティ・ミートソースとプリンだから、みんなが喜ぶのも

無理はないんだな。


 僕らの給食システムでは、給食当番が給食配膳室から給食を運ん

できて、みんなはそれを一列に並んで、順番にもらってく。ほら、

セルフサーヴィスって奴だね。生徒達の為にもオートメーションで

の配膳は行わず、出来るコトは自分達で! ってのが教育委員会か

らの指示らしい。


 この給食当番ってのは、各班が一週間ずつ交代で担当するんだ。

今週の当番は僕の班なんだけど、僕は蚊帳の外。理由は単純。僕が

デクだからだ。


 いにしえからの伝統によって、クローンで用意された桜の花が美

しさを周りに誇示し、またそれ故の報いを受け始めようとする四月

初め、僕らは色んなコトを決めた。学級委員を決めたり、クラスの

係りを決めたりってコトなんかをね。他にも細々としたコトも決め

たんだけど、今問題なのはそんなコトなんかじゃないんだ。問題は、

この僕がみんなと違うように決められちゃったコトなんだよ。


 つまりさ、

「先生、給食当番の件なんですけど、デクは当番から外した方がい

いと思います。その代わりと言っては何ですが、トイレ掃除をずっ

とやってもらえばいいと思います!」

 エー君の言葉に

「さんせーい! 異議なーし!」

「決定! 決定!」

 他のみんなも一斉に賛同した。先生も教室をぐるりと見回しなが

「ん? みんながそう言うならな。でも一応、デクの意見って奴も

聞いてみないとな。ほら、みんな、民主主義って大切だろう?少数

意見っていう奴も考慮に入れなくちゃ」

うつむき加減にそう言った。


(18)

 僕は薄笑いを浮かべるだけで何も言えなかったので、

「先生、デクだってそっちの方が嬉しいんじゃないですか?なあ、

デク?」

 エー君のこの言葉にただうなずくだけが精一杯だったんだ。

で、僕は給食当番を免除されたって訳。僕がデクで汚らしいから、

食事関係に近づかせたくないっていうみんなの気持ちもよく分るけ

どさ、それに当番をやらなくて得じゃんって考える人もいると思う

けど、それでも僕は悲しかったな。


 でも、僕が給食の時間が嫌いなのはこれだけが理由って訳じゃな

い。そりゃ、みんなと違うってのは悲しいけど、よく考えりゃ、そ

んなのはどこにでも転がってる話だからね。


 そもそも、まったく平等だなんてコトが不思議なんだよね、本当

はさ。教育上の建前で一番矛盾してるのが『みんな平等』って奴だ

ろう。だって一人一人能力が違うし、姿かたちも家庭環境も違って

るのに、みんな平等だなんて、そんなコトある訳ないじゃないか。


 第一、一般社会においてもまったく平等なんて事実は当然ない。

それが当たり前。それどころか、精神面に重きを置く宗教界にだっ

て、本当の平等はないじゃないか。

 ほら、神様に仕える人にだって階級があるし、愛を説く宗教にだ

って自分以外の宗教を弾劾する姿勢、つまりは異教徒に対しては平

等じゃないのが当たり前になってる。平等とは存在しない、ただの

概念に考えに過ぎないんだよ。


 そうだな、『永遠』ってのと似てるかも知れないな。永遠ってみ

んなよく口にするけど、よーく考えてごらんよ? 永遠っていった

い何なのさ?  長い時間のコト? ずーっと続くってコト? そ

んなものはないんだよ。始まりがあるってのは終わりがあるってコ

トだからね。

 永遠とは、始まりも終わりも無いコトなんだ。だから実際にはた

だの概念、考えに過ぎないのさ。ね? 永遠も平等も、考えてみれ

ば似てるだろ?


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