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Artificial Island 人工のユートピア  作者: 花火研究員
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9 温泉旅行(泉樹家族)

温泉旅行(泉樹家族)


私のインフォグラスの修理はできないらしいけど、新調するにしても最適化情報を読み出さなければならないらしく、そのためには支調房の工作室での作業が必要とのことだ。詳しくわからないけど、この町の工作室には必要な装置がないらしく、別の大きな町に行かなければならないとのことだ。

一番近い街は大きな汽水湖の近くにあるけど、シュートさんの目的はそこにある温泉だ。

有名なところで、湖に面した温泉があって、夕日が圧巻なんだそうだ。


シュートさんが「泉樹さんも来るか?」と誘ってきたが、でうっさんほど身軽に動けるわけはないので、「遠慮します」と答えた。

ところが、みるくが目をキラキラさせながらこっちを見ている。「おでかけ、できないの?」これは行く流れか?

「ちょっ、ちょっと、急にはムリだよ!」とりあえずお父さんの仕事の都合があわないと・・・

「もうすぐ収穫期やけど、苗の準備も済んどるし2~3日なら行っても、なんも困らんぞ」「豆の種まきは来週でええしの」

お父さん(風道さん)が調子を合わせる。またお酒を飲みに行くつもりだろう。


「ご飯はどうするの!」

「ルートさんがようけ稼いでくれとる。はよ食べんと腐るやろ、願喜さんとこで使うてもろて、お惣菜分けてもらう。」

それは願喜さんのお店でお酒を飲むということだ。うーん、どうしよう。甘やかしてはだめな気がする。

けど、色々忙しくて、最近はみるくにかまってあげられなかったから、悩んでしまう。

「S-TALで行ったらすぐだろ。」「向こうでどのくらい泊まるんや?」夫も行くつもりだ。マジかー。

なぜかシュートさんがS-TALに食いついて、必ずS-TALで来いと言う。何かを察したらしい夫も親指を立てている。


ルートさんの話では、「シウトのことだから泉樹さんのインフォグラスについても何か考えがあるんだろう。」

ここはシュートさんを信じて温泉に向かうのが正解とのことだ。


こうして急遽、温泉のある町に遊びに行くことになってしまった。


シュートさんたちはランドセルだけを背負って、その日のうちに出発してしまった。ほとんど荷物を持っていないのに全く躊躇がない。途中でいくらでも食べるものはあるし、たった60kmなら寄り道しても2日とかからない、「本気で走れば明日の朝には着くぜ!走らんけど。」とのことだ。

サバイバル訓練が不要なわけだ。

私たちは準備があるので1日遅れてS-TALで向かうことにした。今はちょうど端境期なのでS-TALが空いていて私のシミュレーター訓練もこの時期中にするつもりだったのだ。できれば来月までには終わらせたかったのに、インフォグラスの修理で家族旅行になった。



私たちが町の空港に着いたとき、シュートさんたちが出迎えてくれたが、変な旗を振って衆目を集めている。

何やってんだ、あいつら!周りでは有名人か?みたいな顔で作業の手を休めて私たちが降りてくるところを見ている。

娘は大喜びだが、私は顔が真っ赤になっているのがわかった。既に温泉三昧だったらしく、髪や毛がツヤツヤしている

ところも腹立たしい。


ひとしきり怒りをぶつけてから、空港を出る。

なぜかシュートさんは私たちのS-TALを整備ドックに誘導して、点検と洗浄をAOIのコンソールから依頼していた。ルートさんは私のインフォグラスを持って工作室に向かってしまった。夕方まで作業らしい。

作業指示が終わったシュートさんの案内でネストに向かい、荷物をおろす。

今夜の宿は、シュートさんが湖に隣接した大きめのネストを借りてくれていて、私たちの分の寝具も運んでくれていた。大きめの布団(エアーで膨らませるマットレスが入った小判型の寝袋のような形状)がひとつと、小さいのが一つ。

いらん気を利かせていやがる。

シュートさんはおばあちゃんの友達で、私たちの間では有名な芸術家ですごい人なのに、こういうところがあるから「こいつ」ってなってしまう。悪い弟みたいにしか思えない。


シュートさんは今日2回目の温泉を堪能てから、早めにルートさんを迎えに行った。

温泉は本当に最高だった。景色はだんだんと赤く染まってきて、開放的な大きな湯船はのびのびとして、日常を忘れられた。来てよかった。


ネストに帰って、冷蔵庫にあった野菜と肉でBBQをはじめる。シュートさんたちは暗くなってから帰ってきて、BBQに加わった。早めに迎えに行ったのに結構遅くなっていた。インフォグラスのデータ回収が結構大変らしい。

昨日採ったらしい知らない野草とシカ肉を水屋から取り出してきて、網に載せたタジン鍋で蒸し焼きにしている。球根のところはホクホクして、少しシャキシャキした葉っぱの部分に独特の匂いと旨味があって美味しかった。

それにしてもでうっさんは薄味が好きらしく、少しの塩コショウ、酢をあわせたドレッシングで食べている。

夫は自宅から持ってきたビールを飲んでいて、シュートさんに勧めていたがひと口でダメそうだった。日本酒の酒粕をレモン水で薄めて飲んでいる。これならみるくでも飲めるくらいだ。おいしそうだったのでビール1本飲んでからは、私もこっちを飲むことにした。


ルートさんの話では、インフォグラスのデータ回収にはもう1~2日かかるらしい。明後日までなら私たちも滞在するつもりなので、特にすることがないであろうシュートさんは一緒に観光しないかと誘ったが、シュートさんもルートさんの作業を手伝うとのことだった。


シュートさんって、芸術家じゃなかったっけ?

未来のAI像は、多分、攻殻機動隊(地上波放送)のタチコマの影響が強いです。


誤字脱字、物語の矛盾などがあれば、修正がんばりますので教えてください。

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