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Artificial Island 人工のユートピア  作者: 花火研究員
11/11

11 贈り物

贈り物


翌日、僕が朝から黙々とチップの配線作業をしていると、AOIが雑談のように「今日のお昼はどこかのレストランか食事処を予約しておいたほうがいいよ~。」と言ってくる。

AOIは料理の技術向上とかには全くリソォスを分配しないくせに、こういう無意味なことには平気で多大な計算コストを支払って予測を行う。そして、それがどれほど正確かの説明をしてくる。

「そういった情報はとりあえずいらないんで、チップから情報の抽出をお願いします。」

・・・「ルートくんはつまんないね、優秀な頭脳をもっと楽しいことに使いなよ。はい、できたよ。」

そう言って、階層ごとに分類した複数のフォルダを提示してくる。

シウトは新しいインフォグラスの表面を削って、万珠さんのメガネから削り出した表面を象嵌して、新しい模様を作っていた。

まだまだ作業は続きそうだったので適当なところで切り上げて、昼ごはんを食べにネストに帰る。


泉樹さん家族の2日目はカヤック釣りとしじみ貝集めで、それを昼ごはんにする予定だったが、僕たちが昼ごはんに帰ってきたときは、AOIが予測していたとおりカヤック釣りはボウズだった。

顔がひきつっている旦那さんを慰めて、みんなでレストランに食べに行く。貝はレストランに持ち込みだ。


シウトが調べてくれていたレストランは、サピエンスが経営しているが料理はディモスが作っていた。

僕たちとみるくには丁度いい味付けだったけど、泉樹さん夫婦にはそのままではちょっと物足りないらしい。

この料理にはサピエンスの経営者が収集している珍しいスパイスと調味料がついていて、これを追加すると大きく味が変わるという仕組みで、量を調節すると僕たちも色々な味の変化を楽しむことができて、とても面白かった。

ここのディモスに名前を聞いたが、変なジェスチャアで「虹の料理人」と名乗って本名は答えてくれなかった。変人だ。

シウトとみるくは「かっけぇ!」「すっご~い」と目を丸くしていた。


全ての料理を食べ終えた後、腹一杯になって空を仰いでいる僕たちを見て、「虹の料理人」が、「そうそう、その顔が見たかったのだ。」といって満足して奥に戻っていった。

彼の報酬はこれらしい。

店の支払いはボウズだった旦那さんが行ってくれた。泉樹さんとみるくは再度温泉に行ってから町を冒険するそうだ。旦那さんは、リベンジするため湖へ戻っていった。今夜もこの店のお世話になりそうだ。

シウトは味に感動したらしく、この店に飾る額を作るため、あと1週間ほど残るそうだ。僕のサプレットを使って、その額を目印に記録を残すそうだ。えらく気に入っているなあ。



午後からは回収した記録の整理と壊れて断片化したファイルの再構築を行い、新品のインフォグラスに移植していく。ここからの作業は全て無線通信で行えるので、シウトが行っている表面の加工と並行して行うことができる。

そのファイルの中に泉樹さん家族の名前がつけられたファイルがあって、ちょっと躊躇したけどその一つを開いてみる。万珠さんが自分のインフォグラスを外して、自分を写しながら、それぞれに贈る言葉を記録したものだった。

シウトが僕の肩をたたいて、「これはみんなに見せてあげてからにしよう。」と言うので、「そうだね、素敵なプレゼントだ。」と言って、そのまま閉じた。


完成したメガネは、元の黒い部分を蔓のように残して削り、そこに深い赤と金の花模様がうまくつながるように配置し、擦れて消えかかっていた金は再度きれいに塗り直されていた。泉樹さんが使っている若葉の意匠はグラスの表面に細い線で描いているらしく、目の側からは見えないが、外側から光をあてるとホログラムのように薄く虹色に見えるようになっている。グラスの表面は傷防止のためのDL被覆がされているが、その層を深さを揃えてミクロン単位で溝を作っているらしい。


夜になってみんなでレストランに向かう。新しいインフォグラスは食事の後に渡すことにした。

お昼に持ち込んだしじみが料理に出てきて、みるくが随分と喜んでいた。

泉樹さんたちは明日の昼に帰るとのことだが、みるくはまだ遊びたいらしく、シウトがあと1週間くらい残ると言うと「私も一緒に残って遊ぶ!」といって結構ゴネた。基礎学習プログラムの子供たちには頻繁に合同学習があって集まらなければならないので、やっぱり帰らなければならない。

シウトが「みるく、帰らないとすごいものを見逃がすことになるぞぉ」とうまく注意をそらす。

「すごいものってえ?」

「うん、見逃せないサプライズ第一弾!」といって、泉樹さんの新しいインフォグラスを取り出す。

見た目が深い赤なので「直ったの!」と驚く泉樹さんだが、

「いや、残念ながら中身は新品だけどね、でもフレイムの装飾は残して新しく組み直してる。」

「すごい、綺麗・・・」「おお、すごいな」「見せて見せて!」3人は新しいメガネのデザインにそれぞれ感想を漏らす。

「ああ、万珠おばあちゃんの深紅と金の薔薇だ。」

「キレイだねえ~」私も欲しい!と言うみるくに「あなたが大人になったらね。」と返す。

横から見ていた旦那さんがレンズの色に気づいて、指差す。泉樹さんの目が潤んでいる。

泉樹さんは何度もお礼を言ってくれて、素敵な夜だったと喜んでくれた。


ネストに帰ってから、僕が「もう一つあるよ。」と、泉樹さんに引き継がれたインフォグラスにアクセスして、万珠さんからの伝言をコンソォルに表示する。

「なにこれ・・」泉樹さんは知らなかったらしい。

「インフォグラスに残ってた記録をルウトが修復したんだよ。万珠から何か聞いてなかった?」

「ううん、はじめて見た。」

「再生していい?」とりあえず泉樹さんに了解を得る。

「うん、お願い。」



再生された万珠さんからのメッセェジを観た泉樹さんは、ただただ涙を流していた。

僕は気付いたときには泉樹さんの頭をなぜていた。

旦那さんは肩を抱いている。みるくも一緒に「おばあちゃんだね!」といって僕と一緒に泉樹さんの頭をなぜている。

どうして頭をなぜたのかわからないけど、師匠やリブが言っていたことが、僕が理解したつもりだったことよりもっと深いように感じて、それにちょっと触れられた気がした。


この旅は、いい旅だった。



後日談

S-TALはドックで綺麗(何となく色がケバケバしい感じ?)に塗り直されただけで、シウトの仕様にしては何だかおかしいなと思っていたが、日光に当たって徐々に表面の色が薄くなっていることに気づき、何かの手違いか?とみんながいぶかしがっていた。

AOIに問い合わせたら、シウトからのメモがあるといって、それには「雨が降るまで待て」と書かれていた。みんなで「?」みたいな顔をしていたので、「シウトのことだから、雨を待ったほうがいいと思いますよ。」と伝える。

でうっさんがそう言うなら、と納得してくれて、雨を待つことにした。

それから数日して久しぶりの雨が降ると、表面の劣化したテカテカしたコォティングが流れ落ち、その下から新しいデザインが現れた。

町の名前は若葉を意識した若葉色のフォントになっていて、そこに赤と黄色のバラの模様が添えられていた。


コンソォルごしに「サァ~プラァ~イズ!」とサピエンス風に語尾を伸ばしながら大喜びするシウト、再度目に涙を貯める泉樹さんと感動する空港職員たち。


後日談の後日

雨で流れた塗料が駐機場の路面標示を白く塗りつぶしてしまい、シウトが空港のベンダ・マトンに怒られる。

風道さんの家の前にベンダ・マトンが腕組みをした状態で待っていて、シウトが温泉の町から帰ってきたところを連行されていった。

シウトが帰ってきたら、町を離れる予定だったが、僕もシウトに付き合って空港の掃除をすることになった。駐機場だけでなくロビィや仕分けフロアまで掃除したので、結局1週間くらいかかってしまった。

なんとも締まらないことだ。


僕たちは完璧には程遠いらしい。

未来のAI像は、多分、攻殻機動隊(地上波放送)のタチコマの影響が強いです。


誤字脱字、物語の矛盾などがあれば、修正がんばりますので教えてください。

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