他者視点(兄)①
僕の弟は本当に、可愛くて優秀だ。
兄の贔屓目をぬいても、産まれた時から可愛い容姿。
俺だけではなく、姉上も両親もとてもかわいがった。
成長するにつれ、両親や、姉上のツボを分かってきたようで、策士なところも見られた。
そんなところも可愛いんだ。
世の中に出ていかせるのが、心配なほど可愛い。
だが、たまに見えない壁があるような気がした。
上手に甘えられないようだ。そんなノアを心配して、家族が使用人が、たくさんかまった。
そんなノアはメキメキと頭角を表した。
僕も優秀な方なのだが、それ以上だった。
トーマスが泣き言をよく言っていた。
"私では手に余るお方です"なんて言って。
それを言い出したのはノアが3歳のときだぞ?
3歳なんて、絵本を読んであげて、それを理解できるかな?って程度な勉強なはずなのに、何がそんなに手に余るのか謎だった。
何度も”もう無理です”だの、”早く教師をお呼びするか、辺境伯様ご自身がお教えください”なんて言うものだから、いい加減どうにかしないとと思った父上がノアが4歳になった今日、勉強を覗くらしい。
僕ものぞきたいので時間をつくって、ノアの勉強に付き合うことにした。
そしたら、なんだと?
テストをやったノアは、ものの数十分で終わったという。
チラっと見たノアのテストは、学園で習うような高度なテストだった。
いやいや、さすがに難しすぎるだろう、なんて思っていたんだ。
ものの数十分で終わったときは、難しすぎて分からなかったのかって思ったほどだ。
だが、父上と手分けして、正誤確認すると、ノアは満点だった。
父上も驚いたのか、トーマスに事前にテスト内容を教えてないか、確認していた。
トーマスは、怒ったように否定していたが。
そりゃ、そうだよな。
この内容は4歳でできる内容ではないのだから、わざわざ教えてまでいい点を取らせようとする意味がない。
その後の魔法の実技も驚いた。
トーマスが言うには、いつもの半分の威力だそうだ。
ノアは魔法もすごいらしい。
僕も次期当主として頑張ってきたけど、自信がなくなった。
次期当主の変更を冗談半分で言うと、断固拒否したノア。
父上の言葉に、大泣きしてしまったノア。
僕のせいでもあるから、何も言えない。
ノアの泣き声を聞いて、飛んできた母上と姉上。
うん、この二人は絶対に怒らせちゃいけないと誓った。
特に、ノアを泣かせてはいけないと。