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"キター"なんて思っている内心は上手に隠して、子供らしく答えることにする。
「はい。そうなんです。」
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「結果は、とても良かったそうで。」
と、ニコニコしてる宰相。
うわー胡散臭い。
???と首をかしげ、わからない、というふうをとり、父上に助けてっとアイコンタクトを取る。
まぁ、5歳児らしくってことで。
「そうですね、お陰様で。」
と僕の代わりに、父上が返事をする。
「ノア様は、その能力をどうするおつもりなのですか?」
と、父上が答えたのに、また僕に向かって聞いてくる。
言質がとれれば、親から引き離し、王宮で暮らさせようって魂胆?
王宮なら、だれも彼もが、喜ぶとでも思ってるのか?
「の、うりょく?」
「ノア様には、まだ難しいですね。洗礼式でのステータスが良かったのは、聞いていますよね?」
「あ・・・はい。」
「ノア様の、そのステータスなら、王宮で、いや国で一番可愛がられて、大切にされるのです。どうですか?私と一緒に王宮へ行きませんか?」
「父上と、母上と、兄上、姉上と、トーマスも一緒ですか?」
「そうですね・・・トーマスさんとお母上は、お願いすれば一緒に王都へきてくれるかもしれません。ただ、同じ場所に住むことはできません。」
「そうですか。では、さいしょうさまと一緒にはいけません。僕はかぞくが大好きなので、離れ離れになるのはいやです。」
「そうですか・・・フフッ。リートルテ辺境伯家は、家族愛が素晴らしいようで。それだけでない、騎士や領民にも慕われているようですね。」
いきなり笑いだした宰相に付いてけず、本気で首をかしげる。
「おい、ゼン。そこまでにしといてくれないか?」
と、父上が苦笑している。
え?どういうこと?と兄上や、姉上を見ても、僕と同じように混乱しているようだった。