表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Absolute Zero 4th  作者: DoubleS
第八章
PR
87/146

果報者と傍観者 10

 テストの点は許容範囲だった。不安だった苦手科目がすべて返ってきたが、スレスレではあったものの、赤点を取った科目はない。その他の科目はまだ返ってきていないが、赤点を回避したという自信はあった。今回のテストの自己評価はかなり高いものだ。

 ただ、テストの結果はよかったのだが、クラスの居心地は最悪だった。

(…はあ、あたしもターゲットの仲間入りかな……)

 一年三組で、上川晴代に対して向けられる視線は非常にとげとげしいものになっていた。直接、暴言を吐かれたり、詰問されたり、嫌がらせを受けたりしたわけではないのだが、今日は誰も話しかけてくる者はおらず、誰もが自分と距離をとっていたように思える。

(…やっぱ、昨日のアレが原因か……)

 理由は言われなくともわかっている。表面上、絶交したことになっている霧矢と学校内で普通に接触していたところをクラスメイトに見られてしまったことが原因だ。

 そんな状態の教室を避けて、一人生徒会室で昼食を食べていたが、あまり箸が進まない。

「…あの子が、西村君に本命か……」

 彼女の表情はいつもクラスで浮かべている表情とは明らかに違っていた。儚げな雰囲気を醸し出していることは変わりないが、その儚さに悲壮感がなくなっていたことだった。今日の彼女はいつもの悲壮感の代わりに、幸せを見つけたという安らぎに満ちた表情を浮かべていた。

「…シンデレラは救われた。白馬の王子様がそこにはいた」

 継母・義姉のポジションにある、田中彩の今日の表情は、晴代も正視に堪えないものだった。普段から不機嫌な表情をしているが、今日の彼女はもはや言葉では表現できないような悪鬼のような顔だった。

 彼女が時雨と西村の二人がつきあい始めたという事実をもう知っているのかどうかはわからないが、仮に知らなかったとしてもそれを知るのは時間の問題だろう。

(……きっと、ヤバくなるだろうな……)

 もし、それが原因で時雨への嫌がらせがエスカレートすれば、西村を筆頭とする彼女と親しい人間もその対象になるだろう。そして、彼女と親しい人間の一人である霧矢との関係が正常に戻ったとみなされた自分も嫌がらせの対象にならないという保証はない。

(…しかも、マリーさんの推測が正しければ……)

 万が一、時雨がクラスに対して敵意を隠し持っていたとすれば、エスカレートした嫌がらせ行為が引き金になって、何かトラブルが起こる可能性もある。しかも、マリーが予測したように、時雨が多重人格で攻撃性のある人格に切り替わったとしたら、最悪、教室で暴力沙汰の大事件になるかもしれない。

 子供向けの作品では語られないことが多いが、一部のストーリーでは、シンデレラは継母と義姉に復讐し、惨殺するという過激な結末も存在する。

 そして、自分は彼女に義姉の一人とみなされている可能性もある。

 霧矢だったらこんな想像は下らないと一蹴するに決まっているが、晴代はどうもそれを空虚な妄想と切り捨てることはできなかった。同じ女だからか、単にその手の小説の読み過ぎなのかはわからないが、そんな気分がしていた。

(少なくとも、あの子、精神病の可能性があるのは確かなんだよね……)

 霧矢と文香から集めた断片的な情報を晴代なりに総括しても、マリーの推測が否定されるどころか、どんどんそれを裏付けているようにしか思えなかった。


 シンデレラよ、義姉を見逃したまえ。


 クラス替えまであと一月ほどだが、それまで何も起こらないように願う他なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ