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Absolute Zero 4th  作者: DoubleS
第八章
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果報者と傍観者 8

 何やら、今日は甘味責めだった。当分はこれ以上血糖値を上げる必要が生じることはまずないだろうし、甘味を口に入れるつもりもない。

 そんなことを考えながら、霧矢は塩気を含んだ味噌汁と漬物を、非常に感動的な気分で口に含んだ。いつもの数倍、美味しく感じる。

「……しかし、こんなに甘いものを多く食った日は、生まれて初めてじゃないか?」

「霧君は結構な収穫があったようで」

「……本命をもらえても、僕はあんまり嬉しくは感じないんだけどな……」

「……それは残念、がっかり」

 まるで自分のことのように残念そうな顔をしながら、霜華はぼそりとつぶやいた。霧矢は何も考えることなく、箸を動かしていく。そんな霧矢を風華と理津子は呆れたような視線で見ていたが、霧矢はまったく気にすることもなかった。

「…そうそう、本命と言えば、西村が中里から本命をもらったみたいだな」

「……へえ、やっぱりくっつく気配があるって言ってたけど、結局くっついたんだ……それはまた…おめでたいことだね……」

「それと、少し気になることを聞いたんだ」

 霧矢はコップの水を飲むと、箸をこたつの上に置いた。

「少し前に、晴代が帰り道で、マリー・ハーシェルという火の魔族のハーフに出会ったらしいんだ。お前たち、この近くで、他の魔族に出会ったことってあるか?」

「……私は、この近くじゃ有島さんとかセイスくらいにしか、会ったことはないけど」

 風華も霜華と同様にうなずいた。霧矢は腕組みすると、天井を見上げる。

「…どうも、思い出せないんだ。どこかで聞いたような名前なんだが、誰だったのか……」

「まあ、魔族といっても、それほど珍しいものでもないよ。この町はゲートからも近いし、内戦状態のむこうから、私たちみたいに逃げてくる人だっているかもしれない」

 確かに霜華の言う通りなのだが、それでも、霧矢はどうも釈然としなかった。

「……でも、私、その名前聞いたことがある……」

 風華がぼそりとつぶやく。霧矢と霜華は視線を向けた。

「……正確には覚えてないけど、セイスがそんな名前を口に出していた気がする。気を付けないといけないって」

「セイスが?」

 意外な人物との接点に霧矢は首を傾げた。セイスがマリーについて口にしていたということは、その契約主である西村とも何らかの関係があるのかもしれない。

「…セイス、西村、マリー………」

 霧矢は天井の蛍光灯を眺めてしばらく首を回していたが、想起する限りの関連性のあるワードをつぶやいているうちに、電撃が走った。

「思い出した!」

 大声を上げたため、霜華と風華と理津子はびっくりして体を後ろに反らせた。

 どうしてこんなに時間が経つまで思い出せなかったのだろうか。危険人物であるとあれだけ警戒していたはずなのに、忘れてしまっていたとは間抜けにも程がある。

「…晴代もとんでもないやつに、いろいろなことをしゃべってくれたものだ……」

 よりによって、西村とセイスの二人を襲撃した救世の理のエージェントと接触してしまっていた。それだけでなく、晴代は、学校での出来事を彼女に話してもいた。当然、西村のことを話したはずだし、時雨についての情報も提供したはずだ。

(…それを利用されることは……)

 セイスを狙っていた以上、西村も重要なファクターになっていることは容易に予想できた。そして、その西村にとって、時雨の存在は非常に重要なものとなってしまった。

 時雨を利用することで、間接的にセイスを狙うことも可能になる。ただ、よく考えてみても、その可能性はあまり高いとは思えなかった。

 時雨を誘拐して、西村をおびき出すのが一番オーソドックスなやり方だろうが、晴代が彼女と接触して以来、ここしばらくの間、何も起きなかったことを考えると、もう彼女はやる気がないと考えるのが妥当と思われる。

「……大丈夫か……」

 不安に思わないこともなかったが、これ以上問題を大きくしたくなかったのも事実だった。面倒事はお断りである霧矢は、再び箸を持ち上げた。



 あっさりといったものね。私としては、微妙な感覚だけど「私」は、もう浮かれすぎているわ。そんなに浮かれていると、足を踏み外すわよ。


 私はもう死んでもいいくらい幸せ。もう決めた。人生は太く短くって。


 いつもの鬱はどこへやら。「私」はいつから、躁病になったのかしら。そんなに浮き沈みが激しいと、そのうち体力を使い果たして死んでしまうわ。

 まあ、それでも、私としては当初の計画通りになってしまうのだけれど。


 まあ、私も明日になれば、少しは落ち着く。でも、はっきりと彼を会わせて、はなむけを贈らないと。


 何も考えていない彼にそんなことをしたら、きっと冷めるわよ。もう一人ならともかく、そんなことをあえてする必要があるのかしらね。


 そんなことはない。きっと、彼はずっと私を好きでいてくれる。

 だから、私は彼を好きになった。

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