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Absolute Zero 4th  作者: DoubleS
第四章
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重視すべきもの 7

 下校時間となり、暗い夜道を霧矢は体を引きずるようにして歩いていた。一人では歩けないため、晴代と文香が霧矢の体重を支えている。それを先導するように雨野がすまなさそうな顔をして歩いていた。

「すまなかったわね、三条。有無を言わさずに殴りかかって」

「僕でなかったら死んでますね。まあ、氷点下の外で長時間待たされたら僕も怒りますけど」

 くたびれた声で答える霧矢に対して、雨野は少なくともいきなり攻撃したことについては反省しているようだった。霧矢も遅れたことに負い目はあるので仕方ないとは思っていた。


 霧矢が急いで待ち合わせの場所に急行するや否や、雨野は全力の奇襲攻撃を仕掛けてきた。霧矢は奇襲を予期していたので辛うじて回避できたが、雨野の方が一枚上手だった。最初の奇襲は囮で、霧矢がよけきったと油断した瞬間、腰骨に全力でミドルキックを打ち込んだのだ。

 無論、霧矢はその瞬間腰を痛めて行動不能になった。雨野はさらに追撃を加えようとしたが、一緒についてきた晴代が事情を説明したため、雨野は攻撃を中止して事なきを得た。

 訓練は取りやめになり、今日の放課後は文香を交えて化学教室で時雨について今後の行動の方針を話し合う会となっていたが、結局のところ名案は何も出なかった。


 雨野も雨野で困り果てていた。少なくとも、今雨野が何かできることは特になく、成り行きを見守る以外に術はなかった。それが余計雨野を苛立たせていた。

「…まあ、晴代ちゃんが迫害されるようなことになっても、私をはじめとして、生徒会メンバーは絶対に見捨てたりはしないから安心しなさい」

「まあ、来年度の生徒会選挙で旧一年三組の票は期待できないだろうさ。連中の影響力がどれくらいかはわかりませんけど、運が悪ければ、一年のメンバー総入れ替えとかはあるかもですね。僕と西村が役員に立候補したとして…したくないですけど、落選する可能性があります」

「私としては、来年度は西村会長、三条・上川副会長の三役が望ましいと思ってたけど」

 霧矢はやめてくださいとつぶやく。晴代も苦笑いして「できればお断りです」とつぶやいた。雨野は残念そうに首を振ると、文香を見た。

「木村さん、来年度役員選挙出てみない?」

「私を支持する人間がいたらお目にかかりたいものだ。それに私は物事を主導するのは苦手だ。サポートに徹するタイプだから、仮に役員をするのであれば、会計や書記の方がよい」

 霧矢や晴代と違って、文香は立派な理由を挙げて断った。

「しっかし、ここまで会長や副会長は人気がないのかしら。三人とも断るなんて」

 雨野は呆れたようにぼやいた。霧矢と晴代は嫌そうな顔で首を横に振った。

「人の上に立つと、変な恨みを買いかねない。僕は人から好かれなくてもいいから、嫌われたくはない。だから、トップに立とうとは思いません」

 霧矢の消極的な発言に雨野は顔を曇らせた。理解できなくもないし、三条霧矢はこういう人間だということも十分知っていたが、あまり快くは思えなかった。

「僕は嫌ですけど、西村は人の上に立つってことが結構好きみたいですね」

「私もそう思うわね。自信家で野心家、性格は別に悪い人間ではないけどね」

「僕は性格の悪い人とは付き合いたくありません。西村がそんななら、友達の縁を切ってる」

 霧矢が強い口調で言い放つと、雨野は苦笑いをした。


 雨野は思う。

 西村はやや自信過剰で強がりな面があるが、根はいい人間だ。困っている人間を捨て置くことができず、特にそれが女の子なら全力で助けようとする。ただ、西村は霧矢と違って物事をあまり深く考えようとしない。物事の表層だけを見て直情的に解決しようとすることがある。それが彼のウリである迅速な行動につながっているのも確かなのだが、時々、雨野は先輩として、その危うさを感じることもあった。

 逆に、霧矢は物事を冷めた目かつ第三者視点で見ていることが多く、一方に徹底的に味方するということは少ない。おそらく、片方に徹底的に入れ込むと万が一失敗したときに自身に及ぶ損失が大きいという利己的判断が根底にはあるのだろう。最近その傾向に変化の兆しがあるとはいえ、大筋でまだ変わりは見られない。また、物事を客観的に判断できるのはよいのだが、判断に時間をかけ、行動が少し遅れがちになることがあるという短所もある。

 二人がお互いの短所を補い合うと非常に強力なコンビになるのだろうが、どちらか単独だけではあまり円滑に問題解決ができない気が雨野にはしていた。少なくとも、今回のケースでは二人の協力が不可欠になるだろうと。

「三条、この問題は西村との連携がカギになるわよ。覚えておきなさい」

「…西村との連携ですか…性格的に中里の問題はあいつが主役になりそうな気がしますけど」

 霧矢はあまり納得のいかなさそうな声で答えた。雨野は続ける。

「主役がどっちかなんて問題じゃないの。片方だけに任せたきりにしてはダメということ。あんたたち二人は、お互いを補い合ってこそ一人前なんだから」

 霧矢は気に入らなさそうな声を上げた。自分が不完全であることは百も承知だが、西村に補われてこそというのは納得できなかった。できることならば、他の人間に補われることで一人前になりたかったというのが霧矢の本音である。

「まあ、そうしておきます。面倒事の解決がそれで近づくなら、僕としても異存はないです」

 薄暗い雪道の上で霧矢はつぶやいた。



 寒波が過ぎて、除雪も終わった。明日から学校。私は楽しみだなあ。


 私はどうでもいいわ。でも、「私」が少しでも苦しまずにするなら、それはそれで喜ぶべきことかもしれないけどね。


 そんなことを言うけれど「私」だって少しは興味があるんでしょう。でなかったら、「私」もそんなに明るい気分になれないよ。


 認めざるを得ないわね。でも、私が興味があるのは「私」とはまた違った方面よ。二人のうちの一人はとても私に似た思考をしてる。それが興味深いし好感が持てる。


 私はどちらかというともう片方が好きだな。「私」とは少し違うかもね。明るくて物事に積極的な感じがする。

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