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男子高校の生物部員はコスプレイヤーの夢を見るのか?2 はい、見ています!  作者: 高城 剣


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10/10

第10話 予行撮影と法難と

例の合宿のあとも、事あるごとに幸次を連れ込んでいたので、ボク一人で過ごす健全な週末は久々な気がする。

バイトもないし、掃除洗濯でもするかと重い腰を上げると、見計らったかのようにLIME着信。

写真集の衣装合わせと打ち合わせ、ね。なんかアイドルにでもなったかのような予定が来た。

部屋を見回し、惨状であることは確認。

なので、楽しいことを優先。

すぐ行くねと返信!

幸次も来るみたいだし。



「女子の部屋に行くなんてドキドキしちゃうよな」

「うん、ユウさんはそんな初心(うぶ)じゃないことは良く知ってる」

「失礼だな謙一。おいらをなんだと思ってる」

「他人に言えない歴史を積み重ねてる男」

「なら良し」

「いいのかよ」

これからムリョウさん宅に向かう、おれ、謙一、ユウさん。

写真集には無関係の崇は、先に行ってるらしい。必要ないのに。

とりあえず、今日はユウさんの紹介を含めて、女子たちと打ち合わせ。で、来週は撮影という強行スケジュール。

本当は今日は予定になかったけど、宝珠さんやムリョウさんがユウさんを値踏みしたいらしく、急遽集まることになった次第。

この中で、ムリョウさん宅に行ったことがあるのは謙一だけなので、案内は任せてある。

「ほら、ここが心行院女子」

絶対関係ない寄り道してるな。成美は心行院無関係だし、ユウさんはもっと関係ないし。

「なぁ、ここに寄るの必要か?」

「え?普段、麻琴の学校なんて、あまり見れないじゃん」

うん、関係ない寄り道だった。

「謙一っておいらの時間を無駄にするのが趣味なのか?」

「え?余談が好きなだけだよ」

「じゃあ、早く行こうね、うん」

「押すなよ、ユウさん。そこは痛い、痛い所、所謂痛点だってば」

仲良し小好しだと思うことにして、おれは二人をスルーする。



「未来は部屋に男を引っ張り込みまくるとか、家族に言われないの?」

「望、そういう語弊しかない言い方は止めなさい」

まったく、ウィッグ用に髪をまとめてあげてる最中にいらんことを。

「和尚でしょ、ケンチでしょ、今日はさらにコージにユウさんとやらでしょ」

「いい加減にしないと、望、出禁にするよ」

「え、それはいや、ゴメン」

「謙一そっくり」

「……麻琴、急に何?」

「え?ボケだかツッコミだかわからない自爆セリフを言って痛い目を見るところ、だよ」

「だよ、じゃない!」

リリーナの髪をまとめるのに一心不乱かと思ったら、ツッコむ余裕はあるようだ。さすがツップリ。

「リリーナさんもそう思うよね」

「うん。ノゾミはケンイチ」

「その言い方は、ちょっと」

麻琴がイヤな顔してる。

「私なら謙一よりも麻琴をよろこばせること出来るけどね」

「喜怒哀楽の方か悦楽の方かが微妙よね」

「後者含む」

「含むなぁ!」

と、いつものツップリイチャが始まった。そういうのが嫌がられるとわからないかな、望は。

するとチャイムが鳴った。

インターホンのモニターを見ると、男3人+成美さんだった。

「下で男を拾ったよ。入れて」

などと、家族含め、他の住人に聞かせたくないようなことを言うので

「はいはい、さっさと入って」

とオートロックを解除。

「望、あんたのは終わったから、麻琴の髪、お願い」

「はいはい、忙しなくなったねぇ」

ほどなくして、ドアチャイムが鳴ったので開けると成美さんが

「やっほー!美少女の巣窟に潜入しに来たよ」

「成美、やめて差し上げろ。ムリョウさんが凄く微妙な表情をしている」

「ふふ、美少女の微妙な表情」

「コージくん、成美さんの異常テンションは何故?」

「なんか、面倒な家事を放り出して、ここに逃避しに来たって感じっぽい」

「他の3人にダイブしないように押さえてね」

「努力する」

「おぉ、こちらが崇の彼女さん?写真で見るより美人だね」

「ユウさん、紹介前に軽くジャブ入れるのやめて」

「お?わかってんじゃん、謙一」

「はあ、ケンチ、とりあえず、奥につれてって」

「はい」

キョウジとはまた違った軽さに目眩が……



「マコト、ケンイチが来た途端、ご機嫌」

「リリーナ。ツップリーズが揃っちゃったんだからしょうがないよ」

「そっか」

望さんとリリーナさんが失礼な会話をしている。

そして謙一が来ると思ったら、成美さんが飛び込んできた。

「びしょうじょー」

もうバーサーカー状態だ。

ヤバい、髪をいじられてる最中で抵抗や逃亡が出来ない。

「成美、ストップ!」

とコージさんが成美さんの停止スイッチを……押すことも出来ずに腕を取られている。

「はいはい、ユウさんをみんなに紹介するから、そのままで聞いて」

うん、謙一が鬼。でも、わたしの安全は守られた。

一緒になってバーサーカーに挑まなかったのは偉いと思う。

なんて考えてたら、背後の望さんからため息が聞こえた。


「さぁ、今回の写真集のスペシャルなカメラマンを紹介するぜ!」

「おいらは多美川雄慈(たみかわゆうじ)。人はおいらをユウさんと呼ぶ。鳳凰院で生徒会の庶務を、さらには写真部の部長を務めている。よろしく」

すると謙一が拍手を始めたので、皆が仕方がない感じで追従。コージさんと成美さんは戦闘中なのでしてないけど。

「そしたらユウさんにみんなを紹介……じゃあ、奥でこそこそしてる女子!名乗れ!」

「やかましい!」

来るなり女装させられて一言も口を利かなかった和尚。いじられるよね、そりゃ。未来さんも鬼だよね。

「はじめまして、崇子(たかしこ)ちゃん。おいらのことはユウさまって呼べ」

名付けられた上に上から目線の脅迫。やっぱり謙一の周りにはおかしい人しかいない。

「そんじゃあ、真面目にやろう。まずは成美さん」

「え?ボクから?」

「年齢順」

「仕方ないなぁ」

とコージさんを解放。ぐったりしてるけど、息はしてる。大丈夫。

「ボクは本庄成美。村上幸次、最愛の人。21歳!コスネームはニャルミン!よろしくね」

「と、年上、でしたか……属性てんこ盛りな」

「ユウさん、その人、システマ使いだから注意ね」

「さらに属性足すなよ」

「仕方がないんだ。その人は」

「言い方にトゲがない?謙一くん?」

「ないです。そんじゃムリョウさん」

軽く流された成美さんが悲しそう。

「あたしは古川未来。金平崇こと崇子の彼女やってます。心行院の3年です。コスネームはムリョウ。今回の衣装制作担当でもあるので、よろしく」

「はーい、よろしく」

和尚、崇子がデフォ扱いに。まぁいいか、和尚だし。

「んじゃ、宝珠」

「はい、麻琴、出来たよ。それじゃ、私は松本望。今はいない黒沢幾美の彼女。心行院2年。コスネームは宝珠。以上」

「お、おぅ。クールですな」

「この娘、中身はケンチと一緒だから」

「未来!」

「毒舌自爆系?」

「そう、それ」

「「それじゃない!」」

ここで謙一と望さんの声が揃うのが、うー。なんかモヤる。

「はいはい、次はリリーナさん」

「ハイ!リリーナ・スズハラ、ナンブキョウのフィアンセやってます。心行院2年でコスネームは、えっと」

「リム、でしょ」

相方?のニャルミン=成美さんのヘルプ。

「そう、それ」

「恭の、フィアンセ?」

「イエス!」

「多分、二人の中で話が進んだんだよ。うん」

「そうそう」

謙一の適当なフォローに適当に返すリリーナさん。

「そんじゃ、最後はボクの最愛の人」

「ふぇ?」

「ほら、謙一くん、そういう言い方すると固まっちゃうから」

「そっか。麻琴、どうぞ」

「あ、は、はい、えっと、わたしは栗原麻琴、です。あの、進藤謙一、さんと、お付き合いさせてもらってます。心行院1年でコスネームは真理愛、です」

「謙一がことあるごとに自慢するから知ってる、うん」

「うー」

と謙一を睨むもVサインしてくる始末。

「そんで、雄慈くん、でいいよね。彼女持ち?」

「初対面で最初に聞くことか、成美」

「いいじゃない。どうせみんな気になってるんだし」

わたしも含め、女子全員頷く。

「ははは、いるぜ。もちろん」

「3次元?」

未来さん、聞き方を……

「え?実在するよ、うん」

「写真、見せて」

「リリーナさん、遠慮ないよね」

「海外仕様だから、仕方がないんだよ、きっと」

「マコト、ケンイチ、アタクシの悪口言ってるのは判るからね」

「悪口じゃないよ、率直な感想ってやつ」

「じゃあ、いい」

真面目なのかボケなのか、わからないよ、リリーナさん。

「そういや、おれたちもユウさんの彼女、知らないよな」

「うん、知らんな」

「うぉっ、急に後ろに出現すんなよ崇……子」

「無理に子を付けんな!」

「じゃあ、脱げよ、それ。ムリョウさんも何のために女装させてんの?」

「え?サプライズ的な」

「可哀想な崇。異次元レベルの法難よな」

「無理に和尚ネタに持ってくんなと、いつもいつも」

「あ、なるほど。観音菩薩的な存在に相成られたのか!」

「あ、それいいね」

「謙一、やかましい。未来も乗っかるな」

なんで、この人たち、仏教に妙に詳しいんだろ。わたしはよくわからないのに。

「ねぇ、ユウ、ジ?写真、見せて」

「いや、その」

リリーナさんもブレないな。

「こら、謙一、軌道修正しなさい」

「はい」

ちょっと叱らないと終わらないから。

「ほら、暴走はそこまでだ!本来の話題に行くぞ!」

みんなの「おまえが言うな」な視線が可哀想だけど、仕方がない。



とりあえず女子は隣の部屋に移動して衣装チェンジする事にした。

「それじゃ、順番にメイクやっちゃおう。本番じゃないから、ちょい簡易でね。望、来て」

「はいはーい」

「各自の色は夏コミエと同じだから、メイク待ちの間に着ちゃってね」

5人でゴソゴソと着替え開始。

「成美さん、下着はつけてね」

「あのね、いつも着けないわけじゃないよ」

「いつも着けてください」

「アンドロイドレティの時は、作り上、仕方がないっていうか、うん。それで、あの後、壊れちゃったし」

もちろん、全員が「やったな、やっぱり」とは口に出さないだけで察している。

「はい、望は完了。ウィッグは自分で出来るよね?」

「もち」

「そんじゃ、麻琴、おいで」

「うん」

「未来、ちょっと、このブラパッドの入れ方、やばくない?」

相変わらず、脱ぐのも着るのも速いな望は。

「うん、ちょっと下からの支えを強化して、前方に突き出るような感じにした」

「なに?和尚の入れ知恵?」

「入れ知恵っていうか女装のノウハウの応用っていうか、男子受けを考えてみた」

「すっかり汚れちゃって」

「汚れてない!あ、成美さんは無理だから逆に抑えるような感じで、谷間重視で」

「ボク的に抵抗はないけど、男子みんな彼氏的にどうなのかな」

「うん、そこはやっぱり売れないのも悲しいし、未成年として可能な限りのサービス精神?」

「世知辛い発想するなぁ、未来ちゃんは」

「散々苦労して売れないと辛いのは、この前の夏コミエの男子たち見てると、何となく分かるし」

「平気なふりをしている男の子って可愛いじゃない?」

「成美さんの性癖を言われても」

「性癖言うな」

「はい、麻琴終わり。成美さん、いいから停止スイッチを放り出してないで、早く着て。停止スイッチに落書きメイクするよ」

「はいはい」

「リリーナ、おいで。ちなみに麻琴とリリーナは尊いチッパイ派だから、動きに対しての補強だけしてある」

「チッパイ言うな」

「チッパイ?」

「リリーナさん、おっぱいが小さいのをチッパイっていうの」

「OKミキ、次は法定で会うことになる」

「あ、先週のジャッジちゃんのセリフ」

麻琴が目を輝かせて言った。

「うん、キョウと観て覚えた」

「いいオタクっぷりだね、リリーナちゃん」

あなたは感心してないで早く着てください、成美さん。

「オタクな勉強は大事」

なんか自慢げなリリーナさん、可愛い。

「ふむ。麻琴、きつくない?」

「なんで、わたしにだけ、その質問を?」

「ん?最近ますます色っぽくなってきたから」

「え?へ?」

「はぁ、みんなそうでしょ?未来だってかなり変わったよ」

「あはは、恋する女子にとって、彼氏は最高のエステだから」

「成美さんが言うとエッチぃ」

「なんでよ。まあ、実際そういう意味だけどさ」



などという女子の会話が、引き戸の向こうから丸聞こえなわけで。

僕たち男子はどうすべきなのか?

「おまえら、どんだけ、お盛んなの?」

「ユウさん、それを聞くのは野暮でしょ?」

「ま、そうだわな。おいらも他人の事言えねえし」

「ユウさんの彼女、やっぱ気になるわ」

「おわ!崇、メイクだけ落としてこっち見んじゃねえ。気持ち悪い」

「さすがにひどくないか、それ」

「いや、鏡を見ろ」

「……すまなかった。着替える」

なんで、ウィッグ着けたまま、メイクだけ落とすかね、崇子ちゃん。

逆にムリョウさんのメイク能力が凄いのもわかる。女装はしたくないけど。



「リリーナ、ウィッグも整えたげる」

「うん」

リリーナさん、なんだかブラッシングされてる子猫みたい。

「てぇてぇよね、こういうの」

「成美さん、百合目線やめて」

未来さん、うんざり口調。

「実際、奇跡だよ、この美少女軍団」

「5人で軍団も何も無いでしょうに」

「望ちゃんは優しいね。ボクも頭数に入れてくれるんだ」

「見た目はトップクラスでしょうが」

「えへへ……あれ?ボクは中身をディスられてる?ん?」

「いいから、早く着なさい!メイクが出来ん!」

未来さんに本気で叱られる成美さん。

「ごめんなさい。すぐ着ます」



「幸次、おまえの彼女って」

「ユウさん、何も言わないでくれ」



あれ?これって?

「未来さん、なんかわたしのコス、胸の間に穴が」

「うん。そこで動きに余裕を持たせてみた」

「持たせてみたじゃなくて、谷間が恥ずかしいんだけど……」

「大丈夫だよ。ちょっと肌が見えるだけで、そこからはみ出したりはしないから」

「はみ出さないのは当たりま、にゃっ!」

唐突に望さんに両肩を掴まれて振り向かされた。

「うーん、未来、これは麻琴には、まだ早いかな。この穴、粗めのメッシュ生地で鎖帷子風なやつ、貼れない?」

あれ?望さんがマトモだ。

「ふむ、望がそう言うなら、本番までには直しとく。リリーナは完成ね」

はぁ、今日はこのまま……とうなだれていると、リリーナさんがちょこちょこと成美さんの前に移動した。

「アタクシもベイビー出来たら、これくらいになるかな?」

と、成美さんの停止スイッチを指さしながら、なんか怖い事、言い出した。

「あはは、ボクは子供、いないからわかんないな」

「キョウって、大きいの好きなんだよね」

「あー、彼氏の気を引くためにベイビーは作っちゃダメだぞ、リリーナちゃん」

キョージが最初に望さんに惹かれてたのも、多分それだし、ホント男子って。



「お待たせしましたー」

とムリョウさんを先頭に女子が出てきた。

「すげぇ」

ユウさん、マジ感動してるし。拝み始めたし。

「拝むなら拝観料取るよ」

という宝珠のツッコミに拝観即停止するユウさん。

こっちは夏コミエでも見てるし……あれ?

「麻琴!そのイヤらしい穴は何!」

「言い方!」

結構強めに叩かれた。

「ほら未来。ケンチが(さか)るから早めに直して」

「うん、ケンチが盛るね」

「その内、麻琴もね」

「そうだね、成美さんになっちゃうね」

「二人して何を言ってやがる」

「今日はボクはさり気なくディスられる日なの?」

「お前たち、毎回、こんな調子なのか?」

「ユウさん、おれの苦労、判るだろ?」

「ああ、判る」

「成美さん、幸次が他人事にしてる。やってくれ」

「その頼み、承る」

「成美!承るな」

あ、ユウさんが僕を睨んでる。

「さ、さて、皆、カメラテストの時間だよ。ユウさん、ご指示を」

「……まずはムリョウさん、君から始める」

「あ、うん、わかった」

この中でもマトモ寄りのムリョウさん、さすがにユウさんの醸し出す空気を読んだ。

「じゃあ、その仕切り戸の前で、普段の感じでポーズを」

「了解」

で、ビシッと空気が変わるのは流石。

美人のお姉さんは凄い。

「そんじゃ、写真集を意識したポーズで」

「うん」

何か瞳のウルウル度が増して、色気も増した。

「未来さん、スゴイね」

麻琴が感心しつつ頬を赤らめてる。

「うん」

NTR事案を警戒しつつ、頷くしかない僕。

何枚かシャッターを切って

「ムリョウさん、こんな感じだけど」

と、ユウさんがカメラの液晶画面をムリョウさんに見せる。

「へえ、専属のカメコにならない?」

「このノリにずっと付き合うのは、おいらには無理だから、ま、スポットでなら考えなくもない」

「ユウさん、下手なこと言うと、言質取られて痛い目に遭うぞ」

「ケンチ、いらん事言わないで」

ムリョウさんに叱られた。言質取る気だったな、絶対。


「ムリョウさんがそこまで企む腕前。ユウさん、見せて」

「ほいよ」

「おぉ、レイヤーの本気を見た」

僕が感心していると

「凄いでしょ?でしょ?」

「崇ぃ、おまえの彼女がウザい」

「ウザ……成美さん、ケンチの顎外して」

「うん」

楽しそうにうなずく成美さん。

「うんじゃねぇ!なんてこと企みやがる!」

「え?生意気なんだもん」

「崇ぃ、その人、奥につれてって。そんじゃ、宝珠、撮影行ってみようか」

崇がムリョウさんをお姫様抱っこして連れて行ってくれた。なんかジタバタしてたけど、絶対満更でもないはずだ。

「私、ケンチのそのメンタルが怖いんだけど」

「このメンバーに出会わなければ、こんなメンタルは獲得できなかった」

「あぁ、麻琴のエッチな衣装で脳みそ焼かれたんだ?うん、わかった」

「当たり前だ!」

「謙一も望さんも何言ってるの!」

麻琴に叱られた。今日は叱られが多発する日だ。

で、僕はユウさんの空気も読むので

「宝珠、スタンバイ!」

「はいはい」


「OK。そんじゃ、いつものイベント撮影モードで」

「はーい」

いつも胸を故意に強調したりしてカメコを惑わす宝珠だが、今日のコスは一段と誇張されてる。恐ろしい。

「はい、じゃあ、写真集モードで」

そもそもそんなモードあるのか?という疑問があるけど、実際、ムリョウさんも宝珠も色気の出し方が違うのが凄い。

「はい、OK」

「そんじゃ、見せて?」

とユウさんに寄る宝珠。胸が当たるか当たらないかギリの位置を狙って近づいていることくらいは、僕でも判るようになった。

間違って触れてしまったら、おそらく専属契約させられるんだろう。

「ケンチ、うるさい」

「口に出してないだろ!」

「はいはい、どうぞ」

ユウさん、グッタリしつつ、宝珠に画面を見せた。

「へえ、マジで上手いんだ」

「写真部なんで」

「そういう返し、ケンチたちの友達なんだなって実感する」

まったく褒めていないことは判る。

「ケンチ、うるさい」

「だから口に出してないだろ!」


「次はニャルミンさん、行きましょうか?」

「あ、うん、はいはい。コスネームで呼ばれるの、なんかくすぐったいね」

「はい、じゃあ、ちゃっちゃかお願いしまーす」

「ねぇ?ボクの扱い雑じゃない?」

「雑じゃないです。はい、じゃあ、イベントモードから」

成美さん、何も言い返せず。

こうかな?とか悩みつつ応じてる。

「OK、じゃあ、写真集モード行こう」

「ちょっとタンマ。ねぇ、写真集モードって、どうしたらいいの?」

「ん?コージを軟禁してる時の夜を思い出せばいいんじゃない?」

と宝珠のトンデモアドバイスに

「あ、そっか」

と納得してる。

「幸次、ヤバいよ」

「そうだな、色んな意味でヤバいが仕方がない」

彼は強い男だ。僕はそう思った。


「えっと、そんじゃリムさん」

「……あ、アタクシか。呼ばれ慣れないからリリーナでいいよ」

「了解。んじゃリリーナさん、イベントモードで」

「Yeah」

たまにしか出ない英語はハーフ設定を守ろうと無理してるキャラにしか見えないんだが。

出会った頃よりテンプレちゃん化が進んでいるんだな。言わないけど。

「はい、写真集モード、行こうか」

「Okay、キョウとの夜の感じでいいんだよね」

「返答しづらいな。別にいいけど」

宝珠のせいでおかしな展開になりつつあるのが不安だ。しかも、リリーナさんも細いのに、謎に色気がある。

恭ちゃんのおかげ?


「はい、最後は真理愛さん、よろしく」

「ひゃ、はい」

うん、僕の最愛の天使は可愛いなぁ。

一生懸命なところも可愛いなぁ。

「謙一、腕組みして頷きながら見守るのやめて」

「え?じゃあ、どうしろと?」

「もういい。謙一だもんね」

「ケンチ、麻琴がアンタの愛が重いって」

「あはは、宝珠、愛に重さはないよ、大きさだけさ」

「謙一くん、望ちゃんに言い負けなくなってきたよね」

「……赤い爺さん、憑けてやろうかな」

「や・め・ろ」

最終兵器だろ、アレは、もう。

「はい、それじゃ謙一との夜モードお願いします」

「写真集モードって言って」

「それで」

「うー」

結果的にイベントモードよりも羞恥心的な部分が多く垣間見え、逆に色っぽいという結果になった、麻琴であったのさ。

夜モード、いいね。

あとでユウさんからデータもらおう。



「みんなの撮られ方の癖はだいたいわかった。コンセプトは謙一と幸次のに乗っかるから、それ以外はおいらに任せてもらってOK」

「頼もしい。ユウさんを頼ってよかったよ」

「こんだけの綺麗所を一気に撮れる、しかも無料なんて、まず機会がないからな」

「えへへ、照れる」

褒められ弱いな成美さんは。

「宝珠さん、ロケ地のことで確認したいんだけど」

「OK、じゃあ、ちょっと隅っこで話そ」



「謙一、もう撮影終わり?」

「うん。ユウさんが納得したんで終了」

「それじゃ着替えちゃうね」

「えー、もっと見たいのに」

「やだ、恥ずかしいから」

わたしにだけ過剰反応するのは、悪い気がしないけど、それと恥ずかしさは別。

「しょうがない。着替えておいで」

「うん」

しょうがないことはないと思うけど。



「それで、確認事項は?」

「結構古くて大きい木が多いよね?」

「そうね」

「太めの枝とかにロープ掛けて、ブランコを簡易的に付けたりするのはNG?」

「たまにロープ掛けてぶら下がっちゃう人はいるみたいだから、強度には問題ないと思うけど」

「……当日、そんな人がいたりしないよね?」

「事前にサーチしとくから大丈夫。のはず」

「確約はないんだ」

「何事もそうでしょ?」

「まぁ、そうだね。うん」

「あなた、運だけは強いみたいだから、大丈夫よ、きっと」

「へぇ、わかるんだ」

「あなたが知っちゃうと、それまでの類だから、詳細は教えないけど」

「優しいね、宝珠さんは」

「あはは、初対面でそう言ってくれる人、初めてかも」

「おいらに口説かれてみる?」

「あはは、死ぬ気?」

「あはは、それはイヤかな」



宝珠とユウさんが楽しそうに笑ってる。

仲良くやってくれるなら、なによりだ。

すると

「人間に戻ったよ」

と、奥から麻琴が出てきた。

「よし、人間でも可愛いな」

「喜んでいいの?」

「褒めてるよ」

「そっか」

と僕の横にちょこんと座る麻琴。

「それじゃ、ボクたちも着替えよっ」

と成美さんの一声でリリーナさん、宝珠が続く。

ムリョウさんは?と見ると、なんだか上気した顔で無言でやってきて、部屋に入っていった。

陰で崇がありがたい説法を聞かせたに違いない。抗いがたい接吻かもしれないけど。真相は藪の中。問いただすほど野暮じゃない。

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